表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【恋愛系集約】VS ~ 代償 ~  作者: 邑 紫貴
恋愛Sim★comp

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/75

真似て……

使えない担当、嶋関しまぜきが喫茶店に到着。

「遅い。30秒、オーバー。」

机の横に、息を切らせた嶋関を立たせたままコーヒーを飲む。

普段、そんな偉そうなことをするわけではない。

ただ、怒りを持っていたのは事実で八つ当たりもあった。が、目的は今回の契約を勧めることだ。

俺の話が現実的で、彼女を追い詰める雰囲気を作り出すのだ。くふふ……

「あの、座って……」

彼女の台詞を遮る。

「君は、黙ってて。嶋関さん、彼女に話の展開を協力してもらうことにしたから。」

擬似恋愛の話を、手短に伝えた。

使えない担当のくせに、この時ばかりは正論だった。

「あの……大事なことが抜けてますよ?」

この台詞に、俺と彼女は不思議そうな顔で嶋関を見つめた。

「恋愛は、“好き”がないと現実的ではない。」




ヒナキside。


喫茶店で、連絡先の交換をした直後に携帯が鳴った。

「友達のこと、忘れてた!じゃ……幾久、また明日ここで!」

おかしなことに巻き込まれた。

簡単な契約書を作成される。

普段の私なら、絶対にしなかっただろう。

けど、幾久……別の才能があるんじゃ?何だろ……詐欺師とか?

あぁ!騙された感が、今更ふつふつと!!


「コト!!ここ!!」

さっきの本屋の横のケーキ屋の前に、二人が手を振って私を呼んでいる。

当然、幾久のことを訊かれた。

絡まれると面倒なので、適当に交わす。

「また、振ったの?」

今後、デートが見つかると面倒だ。

「付き合うことにした。お試し期間、一年だ。」

嘘じゃない。本当でもないが……。

「「えぇえ~~?!」」

友人2人の叫び声が、店内に響く。

私も叫びたい。擬似恋愛?何だ、それは??恋愛を、体験してみよう?

彼氏のいる二人に、参考で訊いてみる。

「二人は彼氏と、どんなことをするの?」

私の質問に、何故か二人が視線を逸らして赤面。

何故だ?!とりあえず、メモる。女は、謎だ……と。

「いやぁあ~~ん。エッチ♪」

何が?!

文一は、気持ち悪いぐらいクネクネと体を揺らす。

「ウザイ。キモイ!!」

落ち込んだ文一を無視して、柊規……シュウに目を向けた。

「……ふぃ~~。ふう~~」

吹けもしない口笛を吹くまねが、何だか可愛いが……

「誤魔化さないで、吐け!一切合切!!」

私に睨まれ、涙目で口を開く。

「別に、普通だよ~~。そうだね、最初はいっぱい話をしたよ?お互いに、知らないこと多いし。私は、電話♪メールって、伝わらないからね……」

頬を染め、今までと違う女の子の表情。

私が、ドキドキする。これが、女心か!

(後日、幾久に言ったら否定された。ちょっと、違うと……)

「やっと、コトと恋話が出来るんだ♪いっぱい、聞かせてくれると約束するなら……くふ……教えてあ・げ・る♪」と、復活した文一が立ち上がる。

「座って!恥ずかしいから。私の情報は高いわよ?」と、ニヤリ。



次の日。昨日と同じ喫茶店に入る。

「「ココア。」」

注文を言った声が、重なる。

視線を向けると、制服姿の男が店員に注文をしていた。

「……。」

この制服、二駅向こうの進学校じゃん!!

「幾久、あんた……頭……良いんだ?」

意外そうな私に、苦笑い。

あ、気がつかなかったけど……ジャニ系?かな??

店員は、顔を赤らめ……何度かチラチラ見ている。

私じゃなくても、いっぱい女の子はいるんじゃ??

「……ね、聴いてる?」

いきなり、顔が近づいて驚く。

「うわぁ!ち、近い!!ビックリする!」

驚いた私の反応をメモに取りながら、笑いをこらえている。

「なぁ、それ……止めないか?せめて、帰ってからまとめろよ。」

「ね、その話し方は癖なの?」

会話がかみ合っていない。

「「……。」」

不安が見えた。

シュウの意見を取り入れ、お互いの話をした。

「恋愛って、嶋関が言うように“好き”がないと面倒だな。」

「私は仕事だと思えば少し楽♪」と、ココアを飲む。

「ココア、好きなの?」

「え?別に。」

私は、嘘をついたつもりはない。思った通りの答えだった。

「昨日も、ココアだったよ?」

何故、理由にこだわるのか??

「コーヒーや紅茶の気分じゃないから?」

こんな答えで良いのか、ニッコリ微笑んだ。

【ドキッ……】

この時、胸に違和感があったが黙っていた。

言っては、いけない言葉だと思ったから。

そう……この言葉は、決して言ってはいけないだろう感情。

私は、気づかない振りをした。

「もし、私に好きな人が出来たらどうする?」

「契約は、守ってね?一年は、データがいるんだ。」

「幾久に彼女が……」

「出来ない。作るつもりは、今のところない。一年は、この関係を保つから。」

真剣な眼が、私をとらえる。

「小説に、違和感が出るだろ?」

ですよね?これは、仕事!擬似恋愛。

彼が欲しいのは、データ。小説を仕上げること。

嶋関さんは、私のことを上に報告すると言った。

幾久の才能は、多分……本物。

彼が、本当の恋愛をしたら……いや、まずは擬似恋愛?






土曜日。俺の学校は、午前中授業があった。

「よ♪金、持ってんだろ?何か、恵んでくれ。」

俺が無言で見るのは、一応?友達?の十代田とよだ とらだ。

「……。」

何かを感じたようだが、ヘラッと笑う。

流石、進学校だ……変に頭がいいらしい。

「ね、失礼なこと……口に出てるよ?」

「あぁ、わざとだ。」

無言で見つめ「「へへへへ……」」笑う。

生徒の中では、トラだけが俺の仕事を知っている。

学校側は、当然知って協力的。

内容が純愛文学で、ヒットしているから?いつでも宣伝OKで待ち構えている。

俺は、公には出ないつもりだ。

近々、ドラマ化や映画化の話が出ている。そうなったら、覚悟して欲しいと言われた。

勘弁してくれ……。そうなったら、書くつもりはない。どう考えても恥だ!

「ん?女の匂いがする。」

トラの嗅覚に、焦る。

「はぁ?何を言って……」

て!人の携帯を何、チェックしてんだ?!いつの間に、俺の鞄から??

油断も隙も無い!トラの頭を叩いて、携帯を取り戻す。

「誰だ?そのヒナキちゃんは。紹介しろ!!」

「俺の彼女だ。」

嘘じゃない。本当でもないが……。

「当ててやろうか?金で買ったな?」

「汚い言い方をするな!」

「否定できるのか?」

ぐっ……否定は出来ない。

金で、釣ったんだ。鴨を!違う……

「うるさい。一年は、女の子がいるんだよ!羨ましいだろ?」

トラは、俺に冷たい視線。

くそう……さっきの仕返しか?根に持ちやがって!

俺は、小説のネタのためだと言い訳した。

「で、綺麗な子なんだろ?そのカモネギちゃんは?」

俺は、視線を逸らして「普通だよ?」

可愛く答えてみた。

「キモイ!」

当然の反応だ。

「好きになってるんじゃないのか?相手は、どうだ?好きになってくれそうか?」

それが分かれば、こんな擬似恋愛なんかしない。

けど、なんとなく……片想いの気持ちが分かるようになった。

どう思われてるのかな?俺のこと、どう見てる?

ドキドキする。小説の世界が、俺に現実を教え現実の世界に色が付く。

「幾久……現実は、辛いかもしれないぞ?その覚悟はしておけ。」


この言葉を、もっと真剣に考えていたら……。

俺たちは、何かが変わっていたかな?

君を苦しめるのは、俺だ。そして、俺自身をも。

切り刻まれるような痛みを知る。

俺たちは、普通の恋愛を赦されなかった。

君に触れることさえ、言葉を交わすことさえ赦されず……別れの時が来る。切ない……



「幾久くん!来ちゃった♪」

……。

校門に、大勢の男に囲まれた三人組の女の子。

その中に、ヒナキが手を合わせて謝る姿。あぁ、友達なんだ。

これも、一つの体験だ。俺とトラのおまけが付いた5人でファミレスに入る。

「どうも、はじめまして♪」

聞いていた女の子だと、すぐに分かった。

この明るいよく話す子に「文一ちゃんだね?」と話しかける。

物凄く嬉しそうに目を輝かせ、テンションが上がる。

うん、間違いない。

「ヒナキ、私のこと話したの?」

「うん。うるさいのが文一で、静かなのがシュウだって♪」

それを聴いて、テンションがた落ち。

聞いていた通りの反応に、おかしくて笑った。

「安心したよ。ヒナキちゃん?俺、トラ。十代田とよだ とらで、こいつの唯一の友達♪よろしくね。」

“唯一”に、3人が笑った。

「いや、こいつ癖があるから!俺以外に、友達いないの。警戒心が強すぎて、気を許せない?許さない?だっけ?」

トラは、この場を盛り上げるのが上手で助かった。

世界が広がる。現実の世界。部屋にいては見えない世界。限界の無い経験。

小説は、順調だった。

長期連載が決定し、注目され始めた。夢から現実へ、成長の作品と……


小説の登場人物は、現実を見る。夢のような台詞は吐かない。

君と出会い。君に惹かれる。君を知って、君が俺に話しかける。

相手がいることの難しさ……違う人間、考え方……今更、意識する。

ヒナキ……比名琴……君の名を何度呼んだ?

欲が出る。君が、俺の名を呼ぶたびに……心が触れ合えたと感じたら……。

とうとう、触れたいと思うようになったんだ。

貪欲。夢に見る。君を汚す夢も見る。

君は、俺を軽蔑する?君に、言えるはずが無い。

言葉を呑み込んで、悲しみの笑顔。つられた君が、同じように悲しそうな笑顔を返す。

愛しい。何て、現実は美しく残酷なんだろう。

恋愛に憧れ、恋焦がれ。願いはどこまでも果てしなく。

君を手に入れたい。

俺の望みは、誰しもが望むもの。

普通の恋愛、赦されない想い。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ