オマケ:お誘い
タイトル『お誘い』
登場人物:三浦 薫乃・木之下さん・冨喜君
「トキ君、サボリはダメだって言ったよね。」
ドアから入ってきた気配で声をかけようと覗くと、居たのはサボリ常習のトキ君。
思わず注意しかでない。
「違うって、電池を取りに来ただけ。」
「そ?すぐに戻ってよね、現場。みんなまだ仕事をしてるんだから。」
ちゃんと電池の保管場所に向かって、持っている電池の数と在庫を数え。
持ち出し表に記入している。
うんうん、よろしい。
「ねぇ、三浦っち。」
「なんでしょう?」
書類作成の途中だったので、パソコンとにらめっこしながら返事をする。
「買い出しとか俺、手伝うよ?いつでも言って。」
「え~、声かけるの面倒くさい。一人で大丈夫だし。それに大きなものは所長が買うから。」
ん?静かだな。
現場に戻ったのなら、いってらっしゃいくらい言うのに。
視線を移動させると、真横に居るのだと気づく。
「うぎゃっ」
「ぶっ。何、そんなに驚くこと?」
心臓がバクバク。
気配がなかったくせに。
お腹を抱えて笑っている。
「もう!ほら、現場に戻る!私だって仕事、してるんだからね。」
「うん、すごい集中してた。」
席を立ち、現場に向かわせようとするけれど。
かわして、私の様子を見て楽しんでいる。
これは木之下さんと所長に言って、注意してもらわなきゃ。
「それ。」
指さしたのは、机に置いた私のハンカチ。
「私のだよ、可愛いでしょ。」
「俺も好き。」
わぁ、男の人でも可愛いキャラもの好きなんだ。
思わず嬉しくなって。
「だよね、可愛いよね。」
「欲しいんだけど、どこで売ってるの?」
どこで。
通勤は遠くて、この近くでの買い物は100円均一とか、ホームセンター。
「この近辺だと分からない。」
「可愛い物を一人で買うの恥ずかしいから、一緒に買いに付いて来てよ。」
「わかった。今度、見つけたら買ってくるね。」
トキ君との会話も終わりかと思った瞬間。
「ぶふっ。」
吹き出して、爆笑の木之下さんが後ろから登場。
「お疲れ様です。」
何故、笑っているか全く理解できず。
一応のお決まり挨拶の私。
木之下さんは笑いを堪え。
「トキ、現場に戻れ。電池待ちだろが。午後から検査が入っているのは知ってるっすよね。行け。」
言いながら、いつもの不機嫌。
上司モードに切り替わっていく。
その威圧感に、口答えせず去っていくトキ君の後姿。
「ホント、お前は大物っすね。俺は感動したっすよ。」
なんの嫌味なのか分からず。
後日、ちゃんとトキ君におそろいのハンカチを買ってきてあげた。
トキ君はとても喜んでいて、お金を出すと言うので。
その金額で、みんなへの差し入れになるものを買ってきてもらった。
そのやり取りを見ていた木之下さん。
「何で受け取らないっすか?」
そんなに不思議だろうか。
外に出るのが面倒くさくて、差し入れを買ってきてくれるなら楽できると思ったのは黙っておこう。
「お金を受け取るのって好きじゃないだよね。」
これも嘘じゃない。
「可愛げないっすね。それに、あいつは……いや、俺が言う事でもないっすね。てか、サボるな働け!」
一緒に会話してたのは、木之下だよね?
急な俺様ツン。
なんだ、この面白い人は。
「は~い。」
「返事は短くっすよ!」
「……はい。」
今日も事務所は平和でした。
END




