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【恋愛系集約】VS ~ 代償 ~  作者: 邑 紫貴
喰 喰

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52/75

グルグル


「おはよぅ。茶紗……くふふ……ついに告白したんだ?」

「え?」

何で知っているの??

待って、あれは……冗談……だよね?

だって、あの後。

彼は、私に背を向けて帰って行ったんだよ?

私は何が起こったのか分からず、地面に座り込んで。

夕暮れを見て、一人で帰ったんだよ??

付き合うって、違うよね?

しかもあれが告白?


小倉おぐら 湖未こみ

今まで、私の妄想のような恋話こいばなを聞いてくれていた優しい友達。

私の反応に首を傾げ。

「今日の朝一、彼に告白した女の子に『彼女が出来た』って言ったらしいよ?私の耳に入ったから、確認したんだけど??」

彼女にとっては、私からの報告もなく。

周りのウワサが先に聴こえたのだと理解し。

少し、すねているようにも見える。だけど……

「う……」

「う?」

「うわぁあぁ~~ん!」

自分で理解も納得もできていない、この状況。

言葉にならない叫び。

湖未ちゃんに飛びついて、溢れる涙。

私を抱きしめ、背中を優しく撫でる湖未ちゃん。

場所を移動して。

泣きながら、分かる範囲で全部を吐き出すように話した。

「……うぅ~~ん……意味が分からないね。」

伝えながら頭を整理できるかと思ったけれど、パニックは変わらず。

記憶を吐き出しきった私に、苦笑いの湖未ちゃん。

「でも、彼……茶紗のこと、好きなんじゃない?今は、どうか知らないけど……上手く言えないな。つまり茶紗の知らない俺も、知って、きちんと好きになってくれって事じゃない?」


私を……好き?彼が?

「何で?私、好かれるような女じゃないよ??」

「茶紗が見ていたのを知っていたんだよね?その視線で、心が動いたんじゃないの?」

私の視線……そんなにバレバレだった?!

思考が更にグルグル。パニックに、考えがまとまらない。

「自信を持てば良いよ。茶紗は、小さくて可愛い♪ぐふふ……抱き心地も良いし?」

「どうせ、細くないもん……」

お菓子が大好き。美味しいものも我慢できない。

ダイエットなんてしない。

デブではないにしても、少し……ぽっちゃり。背も低い。

それが可愛いなんて、湖未ちゃんは基準がおかしい。

彼と比べるレベルでもない。自信なんて持てない。

それに彼は怒っている。私が傷つけたんだ。

見ていた。そう他の女の子と同様。

離れたところから、見ているだけ。それで満足だった。

彼のこと?どれだけ知っているか……

知らない。私の想いは、現実を見ていない。

勝手に描いた空想の彼を見ていた。

そうだよね、真剣に告白している女の子に便乗して……

それで、好き……なんて。許してくれない。

それに、彼を好きな女の子達はウワサに嫉妬するだろう。

嫌がらせも当然あるよね。

私なんか……

更に涙が溢れて、増すのは情けなさ。

「ぐすっ……っ……うぅっ……」


「何、泣いているの?」

抱き寄せていた湖未ちゃんの声じゃない。

近くに立っていたのは……

「荒木くん?」

「ふふ。希渉って呼んでよ。」

教室の隅にいた私たち。

ウワサで興味津々の視線を受けながら、小さな声で話をしていた。

そこに気配なく彼が現れた。


ただ気づかなかっただけだろう。

教室内は騒いでいたのかもしれない。

普段、他の人に接するように丁寧で。優しい雰囲気。

「お昼に、図書室に来て。一緒に食べよう?その時……紹介したい奴がいるんだ。」

泣いている私に穏やかに微笑み、手を伸ばして零れた涙を指で優しくぬぐう。

【ドク……ン】

心が反応する。

これは。

だけど。それも一時。

始業開始前のチャイムで、彼は私に背を向ける。

「待っているから……」

小さな声は、会話のトーンより低かった。

周りに聴こえないように言ったのかな……?

「よかったね。心配する必要ないよ!」

湖未ちゃんは、明るく笑う。

私には心に曇る何か……予感のようなもの。

ひっかかる。違和感。楽観視などできなかった。

紹介したい奴……それが誰なのか、不安が襲う。

そう。影から見てきた。遠巻きに。

みんなと仲良く、優しそうに話す彼。

けれど、特別な仲の友達を知らない。

微かな記憶。あれは。

思い出せない。

それほど私の知らない人なのだと、今更……

知らないことが怖い。

こんなことがあっても、彼に対する想いが変わったわけじゃない。

近づけた距離に、幸せが勝って……想いは別の感情を得ていく。

そう。変わらず好き……

憧れ。淡い想い。彼の事を考えてきた時間は積み重なり。

湖未ちゃんに語ってきた多くの妄想の夢物語。非現実だったもの。

けれど、この現実に面し。あの頃に戻ることもできず。

きっと戻れない……

彼との関係は終わりなのか、始まりなのか。








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