グルグル
「おはよぅ。茶紗……くふふ……ついに告白したんだ?」
「え?」
何で知っているの??
待って、あれは……冗談……だよね?
だって、あの後。
彼は、私に背を向けて帰って行ったんだよ?
私は何が起こったのか分からず、地面に座り込んで。
夕暮れを見て、一人で帰ったんだよ??
付き合うって、違うよね?
しかもあれが告白?
小倉 湖未。
今まで、私の妄想のような恋話を聞いてくれていた優しい友達。
私の反応に首を傾げ。
「今日の朝一、彼に告白した女の子に『彼女が出来た』って言ったらしいよ?私の耳に入ったから、確認したんだけど??」
彼女にとっては、私からの報告もなく。
周りのウワサが先に聴こえたのだと理解し。
少し、すねているようにも見える。だけど……
「う……」
「う?」
「うわぁあぁ~~ん!」
自分で理解も納得もできていない、この状況。
言葉にならない叫び。
湖未ちゃんに飛びついて、溢れる涙。
私を抱きしめ、背中を優しく撫でる湖未ちゃん。
場所を移動して。
泣きながら、分かる範囲で全部を吐き出すように話した。
「……うぅ~~ん……意味が分からないね。」
伝えながら頭を整理できるかと思ったけれど、パニックは変わらず。
記憶を吐き出しきった私に、苦笑いの湖未ちゃん。
「でも、彼……茶紗のこと、好きなんじゃない?今は、どうか知らないけど……上手く言えないな。つまり茶紗の知らない俺も、知って、きちんと好きになってくれって事じゃない?」
私を……好き?彼が?
「何で?私、好かれるような女じゃないよ??」
「茶紗が見ていたのを知っていたんだよね?その視線で、心が動いたんじゃないの?」
私の視線……そんなにバレバレだった?!
思考が更にグルグル。パニックに、考えがまとまらない。
「自信を持てば良いよ。茶紗は、小さくて可愛い♪ぐふふ……抱き心地も良いし?」
「どうせ、細くないもん……」
お菓子が大好き。美味しいものも我慢できない。
ダイエットなんてしない。
デブではないにしても、少し……ぽっちゃり。背も低い。
それが可愛いなんて、湖未ちゃんは基準がおかしい。
彼と比べるレベルでもない。自信なんて持てない。
それに彼は怒っている。私が傷つけたんだ。
見ていた。そう他の女の子と同様。
離れたところから、見ているだけ。それで満足だった。
彼のこと?どれだけ知っているか……
知らない。私の想いは、現実を見ていない。
勝手に描いた空想の彼を見ていた。
そうだよね、真剣に告白している女の子に便乗して……
それで、好き……なんて。許してくれない。
それに、彼を好きな女の子達はウワサに嫉妬するだろう。
嫌がらせも当然あるよね。
私なんか……
更に涙が溢れて、増すのは情けなさ。
「ぐすっ……っ……うぅっ……」
「何、泣いているの?」
抱き寄せていた湖未ちゃんの声じゃない。
近くに立っていたのは……
「荒木くん?」
「ふふ。希渉って呼んでよ。」
教室の隅にいた私たち。
ウワサで興味津々の視線を受けながら、小さな声で話をしていた。
そこに気配なく彼が現れた。
ただ気づかなかっただけだろう。
教室内は騒いでいたのかもしれない。
普段、他の人に接するように丁寧で。優しい雰囲気。
「お昼に、図書室に来て。一緒に食べよう?その時……紹介したい奴がいるんだ。」
泣いている私に穏やかに微笑み、手を伸ばして零れた涙を指で優しくぬぐう。
【ドク……ン】
心が反応する。
これは。
だけど。それも一時。
始業開始前のチャイムで、彼は私に背を向ける。
「待っているから……」
小さな声は、会話のトーンより低かった。
周りに聴こえないように言ったのかな……?
「よかったね。心配する必要ないよ!」
湖未ちゃんは、明るく笑う。
私には心に曇る何か……予感のようなもの。
ひっかかる。違和感。楽観視などできなかった。
紹介したい奴……それが誰なのか、不安が襲う。
そう。影から見てきた。遠巻きに。
みんなと仲良く、優しそうに話す彼。
けれど、特別な仲の友達を知らない。
微かな記憶。あれは。
思い出せない。
それほど私の知らない人なのだと、今更……
知らないことが怖い。
こんなことがあっても、彼に対する想いが変わったわけじゃない。
近づけた距離に、幸せが勝って……想いは別の感情を得ていく。
そう。変わらず好き……
憧れ。淡い想い。彼の事を考えてきた時間は積み重なり。
湖未ちゃんに語ってきた多くの妄想の夢物語。非現実だったもの。
けれど、この現実に面し。あの頃に戻ることもできず。
きっと戻れない……
彼との関係は終わりなのか、始まりなのか。




