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VS ~ 代償 ~  作者: 邑 紫貴
VS ~ 代償 ~

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降り積もる


負ければ当然、受けるべき代償を払う。

彼が望んだのは……私……本質を隠して、良い子を演じたワタシ。

私が敵視していたのも、彼の表面……

気づかなかった。見もしなかった、彼の激しい内面に。

代償は沁み込む。私の心を支配する熱。甘い代償……

それを、本当は望む。

こんなに貪欲になるまで彼を……



試験勉強。並ぶ文字や数式。頭に入っているのか、記憶に残っているのか。

不確かに積もる知識。テストの結果は多分、それを如実に示しているのだろう。

それが、暗闇に突き落す。

自分の限界を思い知り、今まで目指していた目標や目的も見えなくするように。

……違う……私が見失った。目指す方向さえ、間違っていた。

そんな不安定な私の前に、彼は現れる。

勝負に勝ち、私に求めるのは復讐だろうか。

熱い。突き刺さるような視線。

目をそらしても、体が意識して感じる熱。

その意味も、怖くて。理解できない自分自身の感情も隠して。

……溺れる。冷たいはずの彼に深く。沈む想い。

「放課後、待っているから……」

小さな声で、通り過ぎながら囁いて行く。

放課後……ドコ……きっと、この前と同じ使用されていない教室。

待っている。彼が、私に望むコト。望んでいるのは、繕っていた私に求めた欲望。

費やした時間と想い。裏切ったのは、私……

私も彼に裏切られた。……違う、私が見ようとしなかった。彼の本質を。

それは私の間違い。私の受けるべき代償。

許してもらえない。許せないだろう。

心は願うのに。それも許されない。

解放されるには、彼に勝つ事。

勝った、その後は……きっと、誰かを好きになれる。

涼を、忘れて……再スタートできるはず……


矛盾した感情に吐き気がする。

授業も耳に入らない。視覚も機能が鈍る。

……駄目だ。勝てない。もう、このまま彼に負け続ける日々を繰り返すのだろうか。

こんな弱い私を。本当の自分を晒せば。

彼は、諦めてくれる?ガッカリして、私をもっと嫌うだろうか。

憎しみ、怒り……彼の秘めた感情は、いつまで……


約束の時間。多分、その場所。

向かう足は重く、整理も出来ない頭の中はグチャグチャで。

泣きそうなのを我慢する。

これが、負けた代償。

涼を知ろうとしなかった私の罰。

それでも甘い、小さな炎が灯る。

身体の奥深く。潜んだ黒い感情と同じ位置。

気づきたくなかったソレは、気持ちを高揚させる……


教室のドアを開けると、そこで彼が待っていた。

本を片手に窓際にもたれ、私に視線を向ける。

【ドクッン】心音が早くなるのが分かる。

それを誤魔化すように、視線を逸らして教室に入った。

「鍵、閉めて。」

今から、異質な空間を味わう。

二人の世界……それは、勝負の代償。

甘さなんて、似つかないはずなのに。

彼の落ち着いたような低い声が、私を酔わすように感覚を麻痺させる。

涼は本を近くの机に置き、姿勢を正し。私に向かって歩を進めた。

涼の眼……頬が紅葉し、私の視線に戸惑いを見せる。

どうして、そんな表情をするの?

理解できない。尋ねることも躊躇する。

私たちの関係は今まで、何だった?今は何?

苦しい……これが、負けた私の代償。

涼の気持ちに、応える資格のない。罰。


涼から視線を逸らし、痛みの生じる胸を押さえるように身を固める。

「真歩、いい?今から5分。ふっ……ルールを変更するのは……」

え?小さな声に、顔を上げた瞬間。身体が覆われる。

抱きしめる涼。この間と同じように私を包む。

抱きしめる力は、この前より強い気がする。

それでも圧迫はなく、涼の香りに包まれた方が苦しいと思うなんて。

片手が、私の髪を首から流すように触れる。

【ぞくっ】

え?

涼の顔が近づき、私の肩に額をのせた。

熱い息が、服の隙間から胸元に流れ込んでくる。

「やっ。」

思わず、抵抗してしまった。

勝負も代償も。5分の束縛も忘れて。

「駄目だよ。5分は、俺のだ。俺の……そうだね、今以上に嫌えばいい。憎んでも良い。心に、俺がいるなら。それで…---」

“ごめん”

小さく、聞き取れないような声と同時。

首元に涼の口づけ。

「……はぁ……」

苦しい。何が原因なのか理解できない。思考も鈍る……

涼の手が、お腹に滑る。

「ひゃっ!?」

やっ……嘘、ウソだ!涼……

涙目になり、必死に腕で胸を押さえた。

「はぁ……お願い。拒絶しないで……5分。勝ったのは俺じゃないか。負けたのは、君だよ?勝負を言い出したのも……真歩……」

そう。負けた……勝てない涼に、何をされても文句は言えない。

だけど……気持ちが追いつかない。こんなに自分が不器用だったなんて。

そうだよね。今まで、不器用に生きてきた。

気づくこともなく、涼も……私自身も傷つけて……

零れる涙を拭い、震える手を胸元から退ける。

「次は、負けない。勝って、あなたから解放される。」

「……うん。この5分だけ。俺の勝利の……」

涼の手は、優しくお腹から胸下に移動する。

服の上から。そっと包むように胸に触れた。

身体が反応する。

涼の反対の腕は、私の腰に回り支えるように抱き寄せる。

その肩の服を必死で握り、もう片方の手は、涼の胸元に触れた。

彼の熱が伝わってくる。

愛しい……この曖昧な、通うことのない想いが身を焦がす。

涼は私の胸元に顔をうずめ、すり寄せるように甘える。

「真歩……柔らかい。もっと望んでしまう。俺は、勝負に勝ちたいわけじゃない。」

え?視線を向けると、下から見つめ微笑んだ。

【ドキッ】

胸に触れた手は、思い描いたような欲望を表すことは無かった。

その手の温もりが、ずっと留まるのを願うほど……

それも、時間なのかな?

彼は胸から手を離す。

私の視線を捉えたまま。指で唇に優しく触れた。

その手の動きを追うように、目を閉じた涼の顔が近づいて、指の上から。優しい口づけ。

私は目を閉じることを忘れ、ずっと見つめた。

この唇を、望むような……そんな資格さえないのに。

涙が溢れて零れ。

目を閉じた……


静かな教室に鳴り響く。

制限時間を知らせるアラーム。

触れていた熱が消える。

私に無、以上の虚無を刻み付け。

それは痛み以上の苦しみを募らせて……降り積もる想い……




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