表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【恋愛系集約】VS ~ 代償 ~  作者: 邑 紫貴
悪狐

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/75

恋心


「先生は、保月先生と仲が良いの?」

私を抱え、視線は真っ直ぐに歩き続け、口もとは笑み。

「どうかな。俺は仲が良いと思っているよ、あいつが何を考えているのか分からないけれど。」

保月先生が何を考えているか。

そこはとても単純で、二人の仲の良し悪しの方が複雑なのだと感じたのに。

それは他の人にも当てはまるのかも。

「私は保月先生が、自分の事を知っている大内先生が傍にいることを、本気で嫌がっているようには見えませんでした。」

私に知られたくない事に触れて話す大内先生の存在を、願っているような気もする。

「そっか。それなら嬉しいけどね。」

下から見える表情が、どこか寂しそう。

大人の事情は分からない。私の知らない事。

目を閉じ、身を任せるようにして意識が遠退いていく。

弱い身体。どうすることも出来ない。

仲が悪いのに、自分の家庭環境を教えるだろうか。

知られたくない事を自分から告げたのではない人物が近くに居て、あんな雰囲気は保てない。

保月先生は大内先生に自ら告げたのだろう。

それがいつなのかは分からないけれど。羨ましい。

知りたい。何があったのか。

だけど、おじ様に聞くのは間違っているような気がする。保月先生の知らない所で。

だけど口止めはされていない。

夢現。年上の男性に、どこか弱さを見たようで愛しさが増していく。

膨らむ期待と淡い想い。身勝手な心。

保月先生との少しの時間も貪欲に求めて、歪んだ愛情に染まる。

受け止める。彼から与えられる感情が、憎しみでも良いと思うなんて。

間違っているはずなのに。



「先生、おじ様と何があったの?」

傷つけたいわけじゃないのに。深層心理。

あなたの隠しきれない憎しみと悲しみの原因に触れて、感情を煽る。

「大内が言った事は忘れろ。そうしないと……」

首を絞めるように添えられる手。

鋭い視線に殺意。

「先生が答えてくれないなら、おじ様に聞くわ。」

睨んだ視線を真っ直ぐ受け止め、私は絞まる首に手を添えた。

「忘れるより、簡単な方法があるぞ。利用してやるよ。後悔するんだな、全て……お前が悪いんだ。そして……あいつが……」

見開いた目には、鋭い視線が間近に迫ったのが見えているのに。唇に痛みと熱で思考停止。

「目を閉じろよ、そんな知識も無いのか?」

首を絞めていた手が顎を持ち上げ、見上げる私を嘲笑うように見つめる。

「……初めてなの。」

優しくして欲しいなんて言えず、色恋に疎い自分が幼く感じて涙ぐむ。

先生は目を伏せ気味にして、私の唇に舌を這わす。

唇を重ねた感覚のキスとは異なり、生々しいような柔らかさと滑り。

「イヤ、止めて。」

違う。確かに求めていたけれど、こんな事じゃない。

「前に言ったはずだ。来る度に、屈辱を与えてやると……イライラする。その顔で俺を見るな。大内にでも、慰めてもらえばいい。」

突き放すように手が離れ、その場に座り込んだ私は体を覆う様に両手で抱き寄せた。

少しの震えが徐々に全身に伝わる感覚。

「何だ、許しが出たならもらって行こうかな。」

この声、大内先生?

視線を向けると、ドアに寄り掛かって笑顔を見せる。

いつから居たんだろうか。

先生は私の手を引いて立ち上がらせる。

そして抱きしめ、背中や頭を優しく撫でた。

「相変わらず、悪趣味な奴だな。お前……」

保月先生は背を向けたまま、私たちの方を見ない。

「連れて行け。邪魔だ。」

冷たい言葉は、低音で響く。

手を引かれ、足取りは不安定ながら保健室を後にした。

感情が冷めたように、体も冷たくなったような寒さ。

「大内先生、いつから居たんですか?」

何かを考えていないと、そのまま闇に落ちてしまいそうな程、頭に浮かぶのは良くない事ばかり。

「どの時点でもアウトかな。」

私が保健室に向かったのを知っていたなら、担任として様子を見に来ていても不思議ではない。

最初からかな。どの時点でも会話的にはアウト。

それは生徒と教師との間で、あってはならない事。

「煽ったのは私です。」

足を止め、繋いだ手を引き戻す。

視線は冷たい廊下を見つめ、大内先生の目を見ることが出来なかった。

一時。ため息を吐いたのが分かって、自分の情けなさに体身が固くなる。

そんな私の頭に、そっと手を乗せて。

「何故、そんなに委縮してるの?もっと力を抜きなよ、君は悪くないんだから。」

私は悪くない?本当に?

顔を上げ、みんなに向ける時の笑顔と変わらないのを見て、私は力が抜けた。

正当化せず、私は自分の過ちを素直に認めて。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ