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【恋愛系集約】VS ~ 代償 ~  作者: 邑 紫貴
小夜啼鳥

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43/75

・・


痛がるか笑うか、どちらかにしてくれないかな。気持ち悪い。

「言葉の綾よ。あなたも知っている通り、私の家系は落ちぶれ、執事を雇うような余裕などない。それを、歴史とか由緒とか言われて……そもそも何故、キスしたの?」

何度か繰り返した主従関係の話。

それより気になるキスについて追求する方が、今は大事な気がする。

「今の関係を壊したくて。それは、君も同じだろ?」

今の関係を壊したいのは私も同じ。

確かにそうかもしれない。だけど、あなたの方法は私が望んだものと異なる。

初めてのキスを不本意な形で奪われてしまった。

それなのに心が痛まない。それは……

「そうね、壊れてしまった。私たちの関係が。幼馴染ではいられない。そして……あなたが望むような関係を私が願っていないから。」

彼に背を向け、私は拒絶を示す。

あなたは常に、私に対して優しい声をかけてきた。

それを受けて嬉しかったはずなのに、変わっていく関係が怖くて拒絶する。

「絶対に認めない。」

認めるわけにはいかない。流されたりすれば私は…………

「黙って俺のものになれ。」

藤九郎は私を優しく抱き寄せ、抱きしめる腕の力を強めていく。

徐々に伝わる熱が増えていき、懐かしい香りに包まれて。

耳元で囁いた声は、いつもと違ってかすれていた。

絞り出すような想いのこもった声音。

否定したくても、伝わる言葉に心は反応する。

足の力が抜けて彼の腕から離れ、廊下に座り込んでしまった。

冷たい床の温度も気にならない程、体温は上昇して心音が響く。

見上げた私に、藤九郎は優しい視線を注ぐ。

私の返事も聞いていないのに、満足そうな微笑み。

負けたような気がして、自分の抵抗が虚しく、思わず苦笑が出てしまう。

そんな様子を見て、藤九郎は私の両脇に手を入れ、軽々と持ち上げて立ち上がらせる。

真っ直ぐ見つめ、顔を近づけて額に軽いキス。

「好きだよ、七帆。出会った日から、ずっと。誰にも渡さない。幼き日から執事として仕えるなら、君の為に命を懸けようと父から学んできたんだ。君が気に入らないなら……ふっ。恋人になってあげても良いよ?」

とんだ上から目線。

だけど、それは執事を目指す前の、幼い頃のあなたと同じ。

私の心を奪った、初恋の思い出と変わってはいない。

優しい言葉も、意地悪な言葉も……あなたの甘い声は変わらず、私への想いを告げる。

「好きよ、藤九郎……だけど執事は要らないわ。あなたは、私の為に命を懸けると誓った。それなら由緒も歴史も捨てて、私を恋人にしてくれるよね?」

「あぁ。恋も実らない主従関係など、最初から望んでいない。利用できる状況を使っただけ。不安にさせたよね、俺の愛情を疑っただろ?」

ん?段々、不機嫌になってるような。

口元は笑っているようだけど、眼が怖い。

嫌な汗が出てきた。視線を逸らし、小さな声で答える。

「疑ってなんかないよ?」

「そ?なら、恋人らしくキスで仲直りしようか。」

首からあごに指が滑って、その流れに導かれる様に顔が上を向く。

唇は受け入れ態勢。

優しい視線を受け、重なる口づけ。

目を閉じて、感情の変化に伴う満足感を味わう。

「君を誰にも渡さない。俺のものだ。」

優しい声が耳に残って、夢心地。

悩んでいた事が全て消えたわけじゃない。

それでも、私の想いは未来に続く。

藤九郎の甘い言葉を信じて、優しい声に心許して…………




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