Kiss
あれから俺たちは付き合う様になったものの。
一緒に歩いていても、留惟は警戒するように俺と距離をとる。
休み時間に教室へ向かった俺から逃げるように避け、やっと捕まえたかと思えば、緊張の伝わるほど身構えて。
引きつった笑顔。
それを見て、どこか満足してしまう自分がいる。
このままでは駄目だ。普通のカップルと違う。
「はぁ。」
ため息を吐いただけなのに。
「ひゃぁ!?」
挙動不審の大げさな反応で、身構える始末。
いくら怯える姿も見ていて楽しいからと言って、これは腹が立つなぁ。
ふと留惟に目を向けると、逃げた位置にある木から小さな葉が落ちてきて、彼女の頭の頭に乗っかった。
「留惟、頭に葉っぱが乗っているのを取るだけだからな。」
彼女に触れるのも、こんなに気を遣わなければならないとは。
近づいて手を伸ばし、小さな葉っぱを払う。
「っ!」
どうやら彼女の耳に触れてしまったようだ。
しかし、この過剰な反応は。
留惟は視線を逸らして、しまったと言う顔。
ゾクゾクとするような感覚。そうだね。不味いよ、その反応は。
「留惟?」
「……何でしょう?」
さっき触った耳とは反対側の頬に手を当て、俺はニッコリ笑顔。
それに対して彼女は、ぎこちない笑顔を返す。
徐々に俺から視線を外し、髪の毛先を弄りながら微妙な鼻歌。
何を誤魔化そうとしているのか分からないけど、こんな姿も可愛いね。
「耳、弱いんだ。」
図星だったのだろう。動きが止まって。
「そんなことはないですよ。」
小さな声で目線も合わせず、変な言葉遣い。
加減ができなくなりそうだ。
「なら、触れても良いよね?」
俺は口元が緩んで、彼女の髪を流しながら耳に触れ、反応を楽しむ。
彼女は必死で我慢しようと手で口を押え、少し逃げ腰。
それでも、怯えているわけじゃない。
俺に触れられるのが嫌でもない感じ。受け入れられた気がする。
耳裏に中指を添えて、親指で撫でながら顔を近づけていく。
彼女は目をギュッと閉じ、覚悟を決めたように俺を待つ。
その様子が愛しくて、ずっと観察を続けた。
少しの時間で、どんどん表情が変化していくのを。
俺の気配に敏感なのか、すぐに緊張が伝わった。
そして、観察する俺の動きがない事に疑問を持ったのか眉間にシワ。
彼女は固く閉じた口元の力を緩め、そっと片目を開けた。
ようやっと俺が観察していた事に気付く。
恥ずかしさなのか頬は一気に赤く染まり、軽い力で抵抗するように殴る。
その本気じゃない手を捕まえ、引き寄せた。額や目元に口づけ。
「留惟、好きだよ。」
機嫌が直ったのか、留惟は上目で笑みを見せる。
「キスしてもいい?」




