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VS ~ 代償 ~  作者: 邑 紫貴
煽情的ナミダ

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33/50

告白と腹黒

涙目にドS発動。

「好きだよ、その泣き顔が。お前自身をどう思っているか何て分からないけどね。他の誰かに譲るつもりはないくらいには執着している。」

そこに愛情があるのかも分からない束縛で君を翻弄していく……


樋野ひの あかつき

遠田おんだ 留惟るい



樋野ひの あかつき



幼い時から、外見に寄ってくる女にはウンザリしていた。

それは高校生になった今でも同じ。

特別な努力なしで成績上位に加え、運動神経も悪くない。それが俺だ。

人当たりよく無難に過ごして来たけれど、誰かに惹かれる事なんてなかった。

一目惚れだったのか何て聞かれても、答えは分からない。

ただ、俺が固執するには十分な心の衝撃。

「好きです。付き合って頂けませんか。」

地味なタイプだけど、顔は普通。

化粧でもすれば、どれだけでも化けるだろうけど。

緊張から震え、か細くて身構えているのか、より小さく見える。

怯えた小動物。俺の無言に、圧力を感じたのか顔が真っ赤に染まっていく。

そして、目には涙が……

激情。怒りにも似た感覚。

初めて味わう想いに、俺は狂ってしまった。

『もっと泣かせたい』

手に入れなければ、泣かせて観賞なんて出来ない。

「良いよ、付き合おう。ところで君は誰?」

俺の返事に、驚いた顔。

そうだろうね、俺自身が最低な事を言った自覚がある。

人当たりよく無難に対応してきた自分が、今までと違うのは。

「……わ……て。」

混乱しているのか言葉が詰まって、声が聞こえない。

彼女の目から涙が溢れ、零れ落ちていく。

普通はそうなるよね。

それが見たいと思うなんて。

「忘れて、告白はなかったことに!」

俺の視線に何を感じたのか、方向転換で言い逃げの体勢。

当然、逃がさないけどね。

手を掴んで引き留め、俺はニッコリ笑顔。

「君の気持ちは受け止めてあげるね。嫌なら名前は告げなくてもいいよ?クラスは、この組章で分かったから。皆の前で公に付き合う事を宣言しよう。」

彼女は俺を見上げ、青ざめていく。

力が抜けたのか、その場に座り込んで涙を地面に落とす。

下を向いた彼女の泣き顔を見逃してしまった。

俺はしゃがんで、彼女の顎を持ち上げる。

「見せて、もっと。どうすれば俺の為に泣いてくれる?教えて。」

彼女は涙目で、俺を睨む。

ゾクゾクとする感覚。癖になりそうな甘い痺れ。

さっきとは違う表情に、満たされるような気持ち。

でも、もっと見られるはずだ。貪欲に望みは増していく。

「ねぇ、俺を好きだと言った気持ちは嘘じゃないよね?本当の俺を受け入れて。」

これが俺の本質。

目覚めさせたのは君だ。逃がさない。

「私は遠田おんだ 留惟るい。樋野くん、告白は保留にするわ。だから誰にも言わないで。」

さっきとは違う、睨む様な真っ直ぐな視線。

「君次第だよ。」

涙を拭う事もしない。

小さな身に潜む強さを見たような気がする。

惹かれた涙が乾きかけているのに、綺麗だと思った。

「留惟。今日は暇かな?俺の家においでよ。ね、仲良くなろう。」

笑顔を向けたつもりだったけれど、悪意が隠せていなかったのか、無自覚で出してしまったのか。

彼女は俺の手を払い、冷めたような視線で言い放つ。

「行かないし、仲良くするつもりはないから。」

俺の理解できない、おかしなことを言うものだ。

「告白は保留だよね?」

彼女は俺の何に呆れたのか、表情が固まり一瞬の間。

そして視線を逸らし、ため息。

何だろう、この新鮮な反応。俺の好奇心を刺激する。

「……あなたが、OKしてくれるなんて思わなかった。告げるだけで、満足したかったのかもしれない。ごめんなさい。」

言い終えると、また俺に視線を真っ直ぐ向ける。

刺さるような胸の痛み。この気持ちは何だろうか。

彼女のセリフに、心が痛むなんて。まるで……

「ふふ。満足しちゃったの?残念だね、俺は足りないんだ。埋まらない。満たされない。もっと頂戴。……絶対に、逃がさないからね。」

留惟の腹部に腕を回し、抱えるようにして立ち上がる。

「え?ちょ、離して!怖い!」

抵抗する姿も見逃したくない。

連れ去りたい衝動と、立ち止まって観察したい欲求で葛藤。

一瞬、頭を過ったのは嫌われるかもしれないという考え。

冷静になる自分がいる。

今までは誰かからの好意が消えても、気にする事さえなかったのに。

俺は留惟を解放した。

「ごめん。」

自分の感情に動揺する。

急に降り懸かった恐怖。

「樋野くん?どうしたの、大丈夫?」

俺に何をされたのか、もう忘れたのかな。

こいつが俺を好きなのは本当なんだ。

告白は保留。

君が悪いんだ、俺に弱点を見せるから。

逃がさない方法を見つけてしまった。

「大丈夫じゃない。少し気分が悪いんだ。」

俺の沈んだ声に、彼女は心配そうな表情を向ける。

優しさが嬉しい。

それを利用したくて心が黒く染まっていく……




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