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VS ~ 代償 ~  作者: 邑 紫貴
溺愛の業火

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32/50

松沢くんの甘い恋


やっと想いが通じて、公になった関係。

デートがしたいのに、君は相変わらず図書室に入り浸る。

放課後、俺を誘う女の子たちは居ない。

そして周りを警戒せずに、俺は会いに行く。

「図書室では静かにして下さいね。ふしだらは御免ですよ。」

入口で、鋭い視線と低い声で牽制する図書委員。

「ねぇ、君は俺に何をしてくれたの?」

俺が感謝しなきゃいけない何かがあった。

でも。お礼を言うつもりだったけど、天邪鬼な俺の態度に怒ったのかな。

「あなたって馬鹿ですよね。」

冷静な口調で一言。

自分の愚かさに気付いたけれど、それを指摘されると、情けなさを上乗せされたような気分になる。

これ以上、聞いても答えてくれないよね。

「……ありがとう。」

ため息を吐いて、彼は図書室の鍵を俺に渡した。

帰り支度を済ませていたのか、荷物を持って立ち上がる。

俺から視線を逸らし、部屋の奥に居る暁乃に目を向けて。

「伊東さんは、ずっと松沢くんの事が好きだったんです。俺には、見守る事しか出来ませんでした。」

そして去って行く後姿。

何も言えなかった。卑怯な自分に嫌気。

それでも、暁乃あきのを好きな気持ちは譲れない。


想いは膨らんで、足りない愛情が満たされることを望む。

それなのに。近づいた俺を気にも留めず、本を見つめ続ける彼女。

もっとイチャイチャしたいのに。前の席に座り、読んでいる本を揺らす。

「邪魔しないでください。」

冷たい態度。

「ねぇ、甘いの好きでしょ?」

相手してよ。イジケると、俺は何するか分からないぞ♪

「食べるのは、好きですけど。」

本に栞を挟んでから閉じ、机に置いて俺に視線を向ける。

ゆっくりとした動作に苛立ちながらも、相手にしてくれるんだという嬉しさ。

単純だよね、俺。

「ふふ。食べるのは、俺かな。」

俺の笑顔に、少し困ったような苦笑を返す。

押せそう?どこまで強引にしてもいいのかな。

「触れても良い?」

了解も得ていない状態で身を乗り出し、そっと手を伸ばして横髪に触れる。

冷たくてサラサラ。

揺れる一筋を指に絡めると、スルリと逃げていく。

間にある机が邪魔で、自分たちの心の距離のように感じて不安になった。

拒絶はないけど、見つめる彼女から感情が読めない。

「俺の事、好きだって言ったよね?付き合って欲しいって、君から言ったよね?」

自分を抑制する何かを壊したくて、暁乃の肯定的な言葉が欲しい。

それなのに。何故か、君は眼鏡を外して、視線を逸らして立ち上がる。

軽いショック。

俺は手を引いて、乗り出した体を元の位置に戻した。

その場を離れる彼女を見る事も出来ず。

外した眼鏡は、読んでいる途中の本の上に乗っている。

違う本を探しに行くには、おかしな状況。

不思議に思って、視線を歩いて行った方角に向けた。

本棚の間から顔を覗かせて手招きをする姿。

見えていないからか無表情に近いけれど、頬は赤くなっている。

勢いよく立ち上がり、駆け寄った。

「図書室では、静かにして下さい。」

近づく俺を誘う様に、奥へと誘導する。

「窓際は、外から見えるんです。」

それは、つまり。

「見えない所でなら、何をしても良い?」

暁乃は俺の伸ばした手を取り、自分の頬にすり寄せて目を閉じた。

指で頬を撫で、顔を近づけて額に口づける。

「くすくす。ふしだらは駄目だと注意を受けたんだけどな。」

「じゃあ、止めますか?」

顔を上げて、見上げる視線で俺を誘うくせに。

意地悪を言うんだから。

「塞いじゃうよ、そんな唇は。」

お互いに目を閉じ気味にしながら、そっと唇を重ねた。

柔らかくて、温かい。

「もっと深くしても良いかな?」

「分かりません。」

嫌じゃないのは分かる。

だけど、言わせてみたい。

「もっとキスしてもいいかな?」

「……はい。」

彼女の後頭部を押さえて、上からの強引なキスを落とす。

唇を重ね、強く押し当てて深くしていく。

壁に沿いながら座り込んで、息が乱れた状態で見つめ合う。

「ごめん。」

「どうして謝るんですか?」

離れた俺に手を伸ばし、抱き寄せる。

「容赦しないで。」


柔らかな身体に触れて、甘い体温と香りに包まれ……味わう幸せ……





END

【溺愛の業火】

サ終サイトで人気があり、ファンが1,500人近くにまで増加。

短編のはずが反応良くて、アンケートを実施。

それに応えていたら長々と続き。悪友の短編まで←笑


続くのは【煽情的ナミダ】。

これも短編。私的には微妙かな?と思っていたのですが。

意外と『ベリーズカフェ』で読む人がいました。

お楽しみください。

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