松沢くんの甘い恋
やっと想いが通じて、公になった関係。
デートがしたいのに、君は相変わらず図書室に入り浸る。
放課後、俺を誘う女の子たちは居ない。
そして周りを警戒せずに、俺は会いに行く。
「図書室では静かにして下さいね。ふしだらは御免ですよ。」
入口で、鋭い視線と低い声で牽制する図書委員。
「ねぇ、君は俺に何をしてくれたの?」
俺が感謝しなきゃいけない何かがあった。
でも。お礼を言うつもりだったけど、天邪鬼な俺の態度に怒ったのかな。
「あなたって馬鹿ですよね。」
冷静な口調で一言。
自分の愚かさに気付いたけれど、それを指摘されると、情けなさを上乗せされたような気分になる。
これ以上、聞いても答えてくれないよね。
「……ありがとう。」
ため息を吐いて、彼は図書室の鍵を俺に渡した。
帰り支度を済ませていたのか、荷物を持って立ち上がる。
俺から視線を逸らし、部屋の奥に居る暁乃に目を向けて。
「伊東さんは、ずっと松沢くんの事が好きだったんです。俺には、見守る事しか出来ませんでした。」
そして去って行く後姿。
何も言えなかった。卑怯な自分に嫌気。
それでも、暁乃を好きな気持ちは譲れない。
想いは膨らんで、足りない愛情が満たされることを望む。
それなのに。近づいた俺を気にも留めず、本を見つめ続ける彼女。
もっとイチャイチャしたいのに。前の席に座り、読んでいる本を揺らす。
「邪魔しないでください。」
冷たい態度。
「ねぇ、甘いの好きでしょ?」
相手してよ。イジケると、俺は何するか分からないぞ♪
「食べるのは、好きですけど。」
本に栞を挟んでから閉じ、机に置いて俺に視線を向ける。
ゆっくりとした動作に苛立ちながらも、相手にしてくれるんだという嬉しさ。
単純だよね、俺。
「ふふ。食べるのは、俺かな。」
俺の笑顔に、少し困ったような苦笑を返す。
押せそう?どこまで強引にしてもいいのかな。
「触れても良い?」
了解も得ていない状態で身を乗り出し、そっと手を伸ばして横髪に触れる。
冷たくてサラサラ。
揺れる一筋を指に絡めると、スルリと逃げていく。
間にある机が邪魔で、自分たちの心の距離のように感じて不安になった。
拒絶はないけど、見つめる彼女から感情が読めない。
「俺の事、好きだって言ったよね?付き合って欲しいって、君から言ったよね?」
自分を抑制する何かを壊したくて、暁乃の肯定的な言葉が欲しい。
それなのに。何故か、君は眼鏡を外して、視線を逸らして立ち上がる。
軽いショック。
俺は手を引いて、乗り出した体を元の位置に戻した。
その場を離れる彼女を見る事も出来ず。
外した眼鏡は、読んでいる途中の本の上に乗っている。
違う本を探しに行くには、おかしな状況。
不思議に思って、視線を歩いて行った方角に向けた。
本棚の間から顔を覗かせて手招きをする姿。
見えていないからか無表情に近いけれど、頬は赤くなっている。
勢いよく立ち上がり、駆け寄った。
「図書室では、静かにして下さい。」
近づく俺を誘う様に、奥へと誘導する。
「窓際は、外から見えるんです。」
それは、つまり。
「見えない所でなら、何をしても良い?」
暁乃は俺の伸ばした手を取り、自分の頬にすり寄せて目を閉じた。
指で頬を撫で、顔を近づけて額に口づける。
「くすくす。ふしだらは駄目だと注意を受けたんだけどな。」
「じゃあ、止めますか?」
顔を上げて、見上げる視線で俺を誘うくせに。
意地悪を言うんだから。
「塞いじゃうよ、そんな唇は。」
お互いに目を閉じ気味にしながら、そっと唇を重ねた。
柔らかくて、温かい。
「もっと深くしても良いかな?」
「分かりません。」
嫌じゃないのは分かる。
だけど、言わせてみたい。
「もっとキスしてもいいかな?」
「……はい。」
彼女の後頭部を押さえて、上からの強引なキスを落とす。
唇を重ね、強く押し当てて深くしていく。
壁に沿いながら座り込んで、息が乱れた状態で見つめ合う。
「ごめん。」
「どうして謝るんですか?」
離れた俺に手を伸ばし、抱き寄せる。
「容赦しないで。」
柔らかな身体に触れて、甘い体温と香りに包まれ……味わう幸せ……
END
【溺愛の業火】
サ終サイトで人気があり、ファンが1,500人近くにまで増加。
短編のはずが反応良くて、アンケートを実施。
それに応えていたら長々と続き。悪友の短編まで←笑
続くのは【煽情的ナミダ】。
これも短編。私的には微妙かな?と思っていたのですが。
意外と『ベリーズカフェ』で読む人がいました。
お楽しみください。




