お約束:side清水
お約束:side清水
和叶が求めるのが何なのか、分かったようで答えが出ない。
自分の欲望のまま彼女に触れて良いのか、迷いと不安。
柔らかい。男とは違う。
そうだよな、松沢がふざけて絡ませる固い腕と同じ扱いなど。
あいつのは振り払っても折れたりしない。
だけど和叶の腕は細くて、ガラスのように簡単に壊れてしまいそうだ。
肩や首元も、何て華奢で美しいのだろう。
松沢の腹は殴っても耐えられる。
だけど。白い肌。手を乗せるだけで沈む。馴染む様な柔さと温もり。
火照った体が、淡く色づいていく。
彼女の乱れた息遣い。
自分の呼吸も加速するように荒くなる。
「和叶は幻滅しないかな。」
彼女の気持ちに応えられる自信がない。
「あなたこそ、私に幻滅してるんじゃないの?」
和叶に?どうして、そう思うのかな。
「ただ、このまま優しく抱きしめるだけでいいかな。欲望のままに触れるのは、壊してしまいそうで怖いから。」
臆病な自分を素直に告げて、足りないと言う彼女の反応を観察。
和叶は優しく微笑み、見下ろす俺の首に手を滑らせて、ゆっくりと胸元に引き寄せる。
「ほら、簡単には壊れないわ。あなたの重みも心地いい。」
圧し掛かる俺の背に腕を回し、小さく呟いた。
俺の匂いとは違う甘い香りが漂う。
頭では、このまま夢心地を味わうことを望むのに、体は熱くて衝動に駆られそうになる。
壊れないと彼女は言った。そうであれば。
身を起こしたと同時で、携帯の着信音が鳴り響く。
目が合った彼女は、苦笑を見せた。
コール音は空気を読まずに鳴り続ける。
「出た方が良いんじゃない?」
良い雰囲気が壊れた気がしたけど。
「もうすぐ止まるよ。」
気付かない振り。
留守番に切り替わったのか音は止まった。
俺は続けるため、キスをしようと顔を近づける。
すると、重なる寸前でコール音が再び。
ツボに入ったのか、和叶は通常モードで笑いだした。
誰だよ、容赦しないからな。
電話に出ると。
「あはは。俺様だ!優しい松沢くんは、5分だけ時間をあげちゃうぞ。さっさとしないと、裏口から侵入するからな。」
何で、邪魔された俺より怒ってんだコイツ。
声が漏れていたのか、和叶は身を起こして服のボタンを留め始めた。
「ごめんな、和叶。」
「ううん。大丈夫。」
何が大丈夫なのかな。
突然の事で、少し混乱しているのか。
5分も経たず、玄関のインターホンが鳴る。煩い連打。
ドアを開けると、俺より殺気立った松沢が居た。
裏口は開いていなかった。邪魔する気しか感じられない。
「くくっ。お前の幸せなんてぶっ壊してやるよ。」
俺の怒りも吹っ飛ぶぐらい、ヤサグレてるなぁ。
「居るんだろ?知ってんだぜ。どこまで許してくれたんだ?ん?」
俺はため息を吐き出し、松沢の頭を軽く叩いた。
これくらいは許せ。
「入れよ。白い肌に、少し触れただけだ。邪魔しなくても……。」
どうだろうか。
松沢が止めてくれて、良かったのかもしれない。




