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VS ~ 代償 ~  作者: 邑 紫貴
溺愛の業火

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20/50

『kissよりも:side和叶』


放課後。

委員会の作業が早く終わったので、生徒会室に足を運ぶ。

ノックすると、一颯くんの声で返事だけ。

あれ、他の人は帰ったのかな。

誰か居る時は、返事の後でドアが開くはずなのに。

自分でドアを開け、中に居るのが彼だけだと分かって焦りが生じた。

予測はしていたはずなのに。

机に向かって書類を見つめる姿は、逆光で表情が見えない。

「もう少しで終わるから、入って。」

中に入ってドアを閉め、彼の机まで歩を進めた。

「お疲れ様。」

「うん、疲れた。癒して欲しい。」

腰に腕が回って引き寄せられ、私のお腹に額を当ててすり寄せる。

椅子に座った状態で甘えて来るなんて。余程、疲れているのかな。

髪が乱れないように、そっと頭を撫でた。

「ねぇ、俺は『あの時』を思い出すんだけど。君は触れても許してくれるかな。」

それは『あんな事』の続きでしょうか。

許すも何も。こんな学校の生徒会室では、抵抗を感じますけど。

言葉を選んでいるうちに。

「ごめん、忘れて。」

狡い。強引にしておきながら、そうやって弱さを見せるのだから。

彼の手が離れ、顔を上げて私を下から見つめる。

「キス、だけなら。」

視線を逸らして答えた。

自分から望んでいるようで、恥ずかしい。

彼は椅子から立ち上がり、顔を近づけてくる。

キスされるのかと目を閉じた。

けれど、唇に触れたのは違う感触。

身構えた私に近づく気配は、遠慮気味な気がする。

耳元に囁く声。

「好きだよ。」

心臓のありえない音と速さ。

頬に手が当てられ、耳を撫でる。

「……っ。」

息詰まる。

背中に回る手も優しくなぞる様に移動して。

力が入らない。

自分の唇が当たったのは、彼の襟元。

視界に入るのは彼の髪、肩と首。

近い。抱き寄せられるより、近い距離で微かに触れる息遣いにときめくなんて。

「キス、しないの?」

「今日はしない。」

キスに逃げたいと思うような、曖昧さ。

自分が彼の愛情に溺れていく。

もっと欲しくて。だけど、そんな事は言えない。

言えないはずなのに。

「キス、……したい。」




S系溺愛男子:side清水



俺達が付き合っている事実に満足して、ここに君がいるだけで癒されていたはずなのに。

「キス、……したい。」

君の言葉が嬉しいのに。い

つか失うかもしれないという不安を煽っていく。

大事にしたくて遠慮気味だった距離を、強く抱き寄せて縮めた。

胸がいっぱいで、苦しいのに満たされる。

「求めてもいいかな。」

応えてくれるだろうか。

額に口づけ、目元や頬に滑るような愛撫。

視線を合わせ、閉じ気味になっていく目。

唇を軽く重ね、角度を変えて強く押し付けた。柔らかい。

息は熱くて、自分か君のものなのかも分からない。

口を離して目を開け、視界に入る君の姿に思考は消えた。

閉じていた君の目が伏せ気味に開いて、視線は漂う様に俺を探す。

そして見つけた君は頬を染めて、俺に微笑んだ。

全てが許されているんだと思えるような錯覚。

大事にしたいのに。急かされるような衝動。

駄目だ。この細くて柔らかい身体を、壊してしまうかもしれない。

抑えなければ。嫌われる。

「やっと手に入れたのに、失いたくない。帰ろうか。」

俺は何を間違えたのかな。どんな顔を自分がしたのだろうか。

和叶は俺に、悲しそうな表情で無理した笑みを見せる。

「ごめん。」

謝った俺に、君は困ったような素振り。

途中で止めて、俺は物足りない。君の為だと自分を抑えたんだ。

だけど和叶の『気持ち』は。まさか。期待してもいいのかな。

「俺は、もっとキスしたい。和叶がどうしたいか、言って。」

さっき君からキスしたいと言ってくれたよね。恥ずかしかったよね。

だけど、もっと素直な俺への愛情を頂戴。

君に溺れて、優しくも意地悪もしたいんだ。制御できない。

「もう少しだけ。」

甘えるように俺に寄り掛かり、顔をうずめて小さな声。

「このまま?」

可愛い。湧き上がる愛しさ。

もっと甘えて欲しい。君が何を考えているのか教えて。

「意地悪。」

そうだよ、君は優しいから許してくれるよね?

「ふふっ。好きだよ。和叶も俺の事を好きだよね。言ってよ、何でも俺はするから。甘えて。」




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