変化
高校になっても、身近にいる涼。
相変わらず、テストでは負け続けている日々。
「ふ、こうでなくちゃ♪」
テスト結果を眺める私に、サユが後ろから抱き着いて嬉しそうに笑う。
「良いカップルじゃん。成績優秀1位の旦那。2位の彼女。くすすっ」
嫌味か!
点差は、縮まるものの追い抜いたことが無い。
無視して、ため息を吐く私。
「いつも変わらない順位。仲良しの2人に、嫉妬は少なく憧れる存在か~。もう、付き合っちゃえば?」
耳元で、ヒソヒソ面白がっているサユ。
「てか、サユ。何気に、上位にいるよね?」
「くすす。2人が、どうなるのか見たくて高校も無理したんだよ?ね、私たち同類だよね♪」
そこは、どうなんだろう?
勉強すれば、良い位置を保てるのは事実。
きっかけが無いと、良い成績ではなかっただろう。
ふむ、ライバルや目的って良いもんだね。
他の事を考えていた私は、周りなんか見ていなかった。
「私たちは、どうにもならないよ。私が嫌いなのを、サユも知っているでしょう?」
「あ……」
え?
サユの言葉に詰まったのが珍しくて、振り返る。
そこには涼。
聞かれた!
口を押え、混乱と動揺に自分が見えなくなる。
そこにいるのが我慢できなくて、サユを押し退けて走る。
『嫌われる』
頭に浮かんだのは、これだった。
自分は、彼を嫌っていたくせに。彼の好意や、近くにいることを本当は!
自覚した想いと、心に巣食った何かの葛藤。
頭の中がグルグルなる!
どうしよう聞かれた。私が嫌いだと、知られた。
怖い。彼が、私をどう見るのか。
『どうする?』
私は中学で振ったとき、彼に選択権を与えた。
一緒にいたいなら、あなたの意思に任せると。
無意識で、その時から私の中に特別な感情があったんだ。
違う。否定してみようか。この想いを。
涼を好き?そうかもしれない。
でも、嫌いだと知られたし。私の振り回した行為に、彼も嫌気がしたに違いない。
今なら、まだ繕える。気持ちを切り替えられる。
きっと次の恋をすれば。
不器用な自分。
区切りをつけたい。どうせなら、彼に一度でも勝ちたい。
これが、すべての間違いだと気付いているのに。
同じ事を繰り返すの。
そして戻れない。
あなたへの想いと、触れたところから侵食するあなたの熱が狂わしていくの。
私の培ってきたものを覆す。
偽物の優しさも。巣食った何かも、変化を遂げて私の知らない何かに……
放課後。涼を待ち伏せた。
私の姿に立ち止まり、微笑もなく無言で私の様子を見ている。
心音が、自分でも分かるぐらいに、ありえないほど響く。
口を開いて、声を絞り出した。
「涼、次のテストで勝負して欲しいの。次、私が勝ったらもう近づかないで。」
その言葉を、覚悟していたかのように涼はうなずいた。
「いいよ。」
ホッとして笑みがこぼれた私に。
涼の表情は、悲しい笑顔に変わった。
【ズキッ】心が痛む。
謝っても許してくれないかもしれない。
でも言葉を出そうとした私に、涼は髪をかき上げ視線を逸らす。
「俺の気持ちを知って、そんなことが言えるんだよね?」
【ズキン】響くような痛み。
私も涼を見ることが出来ず、視線を落とす。
「勝負だよね?そっか。じゃぁ、俺が勝ったら。5分だけ。君に触れても良い?」
涼の言葉が信じられなくて、顔を上げる。
「それは!!」
涼も私に視線を戻し、見たことのない冷たい笑顔。
言葉を失う。
駄目だ。勝つつもりで、いつも負けている私。それに、触れられたら?
「何?俺に、勝つ気でしょ?敗者には、それだけの代償が伴う。勝負を止める?俺は、どっちでもいいよ。」
表情だけじゃなく、言葉も冷たいように感じる。
彼の心は、私への想いが無くなって復讐をしたいのかもしれない。当然だよね。
「涼……私が勝ったら、本当に近づかない?」
「誓うよ。真歩に嫌われているなんて、俺――」
消えるような声で、聞き取れなかった。
聞き返すことも出来なかった。怖くて。
彼に勝てば、何かが違うような気がする。変われるんだと。
逃げたい。今までに味わった、涼への苦しみとは違う痛み。
理解できない感情に、身体が反応する。
私の意思と反して……




