『庇護:side清水』
昼休み。
今日は和叶が体調不良で休みの為、仕方なく松沢と昼食。
「不機嫌な顔をするなよ、俺まで暗くなるだろ?」
微妙に暗いのは、お前も同じような気がするけど。
何かあったのかな。
「振られたのか?」
軽い気持ちで尋ねたのに。
松沢は表情が固まって、少し視線を逸らした。
「そんなんじゃない。」
複数と遊んでいると思っていたけど。
どうやら、本命は居るんだな。
「ざまぁ。」
いつも遊ばれているので、つい意地悪が出てしまった。
「俺の事はいいんだよ。それより篠崎とは、どうなんだよ。順調なの?」
話を逸らしてきた。
触れられたくないのか。謝るタイミングを失ってしまったな。
「あぁ、和叶からの初めてキスって凄くないか。そうそう、あの日は両親が居ないと言われて緊張したよ。」
幸せな気分に浸った俺を、コイツは呆れたように。
「はぁ?お前、何言ってんの。」
キス一つで舞い上がる自分を見下された気がして。
「不純なお前と一緒にするな。」
売り言葉に買い言葉。
感情的になって、またコイツを傷つけるような言葉。
「付き合っている相手に求める事が、お前にとって不純なら。篠崎に振られるぞ。恋愛音痴が!」
振られる?
相手に求めるって、篠崎は俺にキスをしてくれたのに。
何を言っているんだ。
「マジで、分かんねぇのかよ。付き合う前に、強引なお前は『相手の気持ちを無視』していると言ったよな。今も、お前は篠崎の気持ちを無視しているんだ。」
突き付けられる現実。
自分が何をしてきたのか。
「確かに、彼女の気持ちなんか考えていない。迷惑なのか、俺の好意は。」
強引に自分の気持ちを押し付け、拗ねた俺に彼女がしたキスは。
「心配しなくても篠崎は、清水の事を好きだよ。それは一番、お前が分かっていなきゃいけない事だろ。」
俺は言い返せず、松沢を睨んでいた。
ここは素直に、恋愛に不器用な自分だと認めるべきだ。
そうしないと、篠崎の求めることなんか俺には分からない。
「一から恋愛講座なんてできない。強引なお前は、どこに行っちゃったわけ?」
強引な俺?
「篠崎は、強引な俺の方がいいの?」
「待て!極論に走るな。落ち着け、冷静になるんだ。分かるよな。」
松沢の言いたい事が分かるような、分からないような。
俺に、どうしろと言うんだ。
もう焦る理由なんてない。和叶は、俺の彼女になったのだから。
大事にするんだ。幸せな時間を大切に味わいたい。嫉妬だって当然するけど。
「篠崎が苦労するのは分かっていたけど。ここまで清水が……いや今は。少女漫画でも買って勉強させた方が早いのか。」
女の子の読む漫画とか知らないけど。何故、松沢は内容を知っているのかな。
本命の趣味なのか?それが恋愛の教科書とでも言うのかな。
「清水はさ、篠崎をどうしたいわけ?」
どうしたいか。そんなの決まっている。
「誰にもやらない。触れたい。大事にしたい。一緒に居て幸せなんだ。」
正直な気持ちなんて、言い尽くせない。
「それ、篠崎にちゃんと言ってる?言葉で伝えないと、すれ違うけど。」
言っていない。伝わっているとか、考えた事も無かった。
何て自分勝手なんだろうか。
そうだ、それこそ和叶の気持ちなんて。
「ありがとう、松沢。お前も、本命には純粋なんだな。」
「だから俺の事はどうでもいいんだよ。篠崎といい、俺の本命に。あ。」
今、何て言ったんだ。
彼女は、松沢の本命を知っているのか?
「ちょ、待て。清水、殺気を出すな!俺は何も相談していない。お前の彼女の観察力が、優れているだけだ。」
俺も気づかない松沢の本命。
何にイラついているんだ、俺は。
「はぁ。和叶は、俺に何を望んでいるのかな。」
「強引に行けとは言えないけど。俺は相手からのキスで満足しないかな、家に親がいないなら。」
キス以上。家に両親はいない。和叶の部屋に二人きり。
体温が一気に上昇する。
「お、何を考えたのかな。生徒会長殿、教えて欲しいなぁ。」
「うるさい、黙れ。」
キス以上って、『あんな事』の続きとか。彼女は。
嘘だろ。暴走するなと言う方が、無理がある。
「手に入れる為に強引で、手に入れてしまえば過保護とか。本当に、お子ちゃまだね。」
「本当だ。だけど。松沢の言いたい事が正しいとは思いたくない。……最悪だ、頭の中がグチャグチャになる。」
松沢は満足そうに、俺に視線を向けて笑みを見せる。
大事にしたい。手に入れたからこそ。
自己満足な庇護欲に、相手の気持ちも考えず……




