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VS ~ 代償 ~  作者: 邑 紫貴
溺愛の業火

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18/30

『庇護:side清水』


昼休み。

今日は和叶が体調不良で休みの為、仕方なく松沢と昼食。

「不機嫌な顔をするなよ、俺まで暗くなるだろ?」

微妙に暗いのは、お前も同じような気がするけど。

何かあったのかな。

「振られたのか?」

軽い気持ちで尋ねたのに。

松沢は表情が固まって、少し視線を逸らした。

「そんなんじゃない。」

複数と遊んでいると思っていたけど。

どうやら、本命は居るんだな。

「ざまぁ。」

いつも遊ばれているので、つい意地悪が出てしまった。

「俺の事はいいんだよ。それより篠崎とは、どうなんだよ。順調なの?」

話を逸らしてきた。

触れられたくないのか。謝るタイミングを失ってしまったな。

「あぁ、和叶からの初めてキスって凄くないか。そうそう、あの日は両親が居ないと言われて緊張したよ。」

幸せな気分に浸った俺を、コイツは呆れたように。

「はぁ?お前、何言ってんの。」

キス一つで舞い上がる自分を見下された気がして。

「不純なお前と一緒にするな。」

売り言葉に買い言葉。

感情的になって、またコイツを傷つけるような言葉。

「付き合っている相手に求める事が、お前にとって不純なら。篠崎に振られるぞ。恋愛音痴が!」

振られる?

相手に求めるって、篠崎は俺にキスをしてくれたのに。

何を言っているんだ。

「マジで、分かんねぇのかよ。付き合う前に、強引なお前は『相手の気持ちを無視』していると言ったよな。今も、お前は篠崎の気持ちを無視しているんだ。」

突き付けられる現実。

自分が何をしてきたのか。

「確かに、彼女の気持ちなんか考えていない。迷惑なのか、俺の好意は。」

強引に自分の気持ちを押し付け、拗ねた俺に彼女がしたキスは。

「心配しなくても篠崎は、清水の事を好きだよ。それは一番、お前が分かっていなきゃいけない事だろ。」

俺は言い返せず、松沢を睨んでいた。

ここは素直に、恋愛に不器用な自分だと認めるべきだ。

そうしないと、篠崎の求めることなんか俺には分からない。

「一から恋愛講座なんてできない。強引なお前は、どこに行っちゃったわけ?」

強引な俺?

「篠崎は、強引な俺の方がいいの?」

「待て!極論に走るな。落ち着け、冷静になるんだ。分かるよな。」

松沢の言いたい事が分かるような、分からないような。

俺に、どうしろと言うんだ。

もう焦る理由なんてない。和叶は、俺の彼女になったのだから。

大事にするんだ。幸せな時間を大切に味わいたい。嫉妬だって当然するけど。

「篠崎が苦労するのは分かっていたけど。ここまで清水が……いや今は。少女漫画でも買って勉強させた方が早いのか。」

女の子の読む漫画とか知らないけど。何故、松沢は内容を知っているのかな。

本命の趣味なのか?それが恋愛の教科書とでも言うのかな。

「清水はさ、篠崎をどうしたいわけ?」

どうしたいか。そんなの決まっている。

「誰にもやらない。触れたい。大事にしたい。一緒に居て幸せなんだ。」

正直な気持ちなんて、言い尽くせない。

「それ、篠崎にちゃんと言ってる?言葉で伝えないと、すれ違うけど。」

言っていない。伝わっているとか、考えた事も無かった。

何て自分勝手なんだろうか。

そうだ、それこそ和叶の気持ちなんて。

「ありがとう、松沢。お前も、本命には純粋なんだな。」

「だから俺の事はどうでもいいんだよ。篠崎といい、俺の本命に。あ。」

今、何て言ったんだ。

彼女は、松沢の本命を知っているのか?

「ちょ、待て。清水、殺気を出すな!俺は何も相談していない。お前の彼女の観察力が、優れているだけだ。」

俺も気づかない松沢の本命。

何にイラついているんだ、俺は。

「はぁ。和叶は、俺に何を望んでいるのかな。」

「強引に行けとは言えないけど。俺は相手からのキスで満足しないかな、家に親がいないなら。」

キス以上。家に両親はいない。和叶の部屋に二人きり。

体温が一気に上昇する。

「お、何を考えたのかな。生徒会長殿、教えて欲しいなぁ。」

「うるさい、黙れ。」

キス以上って、『あんな事』の続きとか。彼女は。

嘘だろ。暴走するなと言う方が、無理がある。

「手に入れる為に強引で、手に入れてしまえば過保護とか。本当に、お子ちゃまだね。」

「本当だ。だけど。松沢の言いたい事が正しいとは思いたくない。……最悪だ、頭の中がグチャグチャになる。」

松沢は満足そうに、俺に視線を向けて笑みを見せる。

大事にしたい。手に入れたからこそ。

自己満足な庇護欲に、相手の気持ちも考えず……




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