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VS ~ 代償 ~  作者: 邑 紫貴
溺愛の業火

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17/18

『まだ』


『まだ、そんな関係じゃない』

周りに言ったのは、本当の事。


学校からの帰り道、ゆっくり歩きながら今日の出来事を話している一颯いぶきくん。

主に松沢くんの不満だろうか。結局、仲が良いんだね。

「俺は怒っているのに。和叶わかなは何で、笑っているの?」

しまった。機嫌を損ねてしまったかな。

「あ、家に着いた。ありがとう。」

癖になったのか、つい逃げ腰。

そんな私に彼は無言で圧力をかける。

「あの、寄って行く?」

彼は意外だったのか、表情が固まり一瞬の間。

少し視線を逸らして答える。

「うん。」

平静を装っているけど、口もとが少し緩んでいるような気がする。

可愛いな。笑みがもれてしまう。

「上がって。両親はいないから、気兼ねしないで大丈夫だよ。」

自分の部屋に案内して入るように促したけれど、入り口に立ち尽くす一颯くん。

表情が読めない。

「入って。私、飲み物取って来るから。」

半ば強引に押し込め、台所へと向かった。

どうしたのだろうか。嬉しそうに見えたのは気のせいで、迷惑だったのかな。

少し話をすれば、松沢くんの件も誤解は解けるだろうし。

まさか緊張しているのかな。

あれ?自分の部屋、綺麗にはしてあるけど。

彼に見られているのだと思うと段々、恥ずかしくなってきた。


部屋に戻ると、小さな机の前での正座姿。

少し顔が赤いような気がするけど、暑くはないよね。

彼の前に座って、飲み物を並べる。

何か、会話しないと。

「あの、さっきの事なんだけど。」

「え、何?」

お互いに見つめて、沈黙。気まずい雰囲気。

「あの、松沢くんに対して一颯くんが怒っていたのに、私が。」

笑っていたのは何故かと、不機嫌になったよね?

首を傾げ、反応を見ていると。

彼は口元だけの笑みを返す。

「キス、してくれたら許すけど?」

そんなに怒るような事じゃないと思うけど。

どこか拗ねている様に見えるのが愛しくて。

「わかった。」

私は彼に近づき、顔を近づける。

すると、機嫌は良くなるどころか悪化。鋭い眼。

どう対処していいのか不安なドキドキ。

「目、閉じてくれない?」

「嫌だ。見てみたいな、キスする表情。」

ムカつく!

彼の余裕な態度に、自分は未熟で稚拙なのだと痛感するようで悔しい。

「見せるわけないでしょ!」

一颯くんの目を手のひらで塞いで、軽く唇を重ねた。

「ふふ。可愛いね。」

「知らない。」






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