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VS ~ 代償 ~  作者: 邑 紫貴
溺愛の業火

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12/34

辿り着く


どれくらい時間が経ったのかな。

ドアに近づく物音。

「篠崎、大丈夫か?」

清水くんの声がして、扉が開いたから安堵した。

入って来た彼の息は荒く、伝わるのは必死さ。

心配して来てくれたんだ。嬉しい。

縛られて不自由だけどなんとか立ち上がり、近づいた彼に解いて欲しいと、私の両手を見せたまでは予想の範囲内。

彼は、私の縛られた両手を数本の指で押さえて優位を示す。

本当なら、この状況は助かったはずなのに、危機感が増したような気がするのはどうしてだろう。

彼の怒りの矛先が誰に向かっているのか、理解に苦しむ。

元はと言えば、生徒会長のあなたが悪いのよ。

人気がある自覚すらないのかしら。

あなたの好意が私を混乱に招いて、他の子たちからも妬まれるなんて。

迷惑なのよ。理不尽にも程がある。私は縛られ、こんな所に閉じ込められたのだから。

あなたは責任を感じて、私を助けに来てくれたんだよね?

無言で睨みつける彼の表情から読み取れるのは、優しさではない。

「お礼はキスでいい。」

誰が原因で、こんなことになったのか理解しているくせに。

「嫌よ、付き合ってもいないのに。」

「俺は、そのつもりだけど?」

彼は私の鼻を持ち上げるように摘まみ、息継ぎ待ちで、顔を近づけてニヤリ。

指でかけていた圧力が緩まったかと思ったのも束の間。

空いた方の手は、私の縛られた手首をしっかりと捕らえ直す。

私の背には壁で逃場はない。

悔しい。絶対に負けない。もう、これ以上は流されるわけにはいかないから。

そう固く口を閉ざすけれど、息苦しくて体がプルプル震える。

目で「嫌だ」と睨んで私が訴えると、彼は視線を逸らさずに冷たい表情。

まるで「じっくり待ってやる」と言うような沈黙で、私を見つめ続ける。

ムカつく。イラつく。どうして分かってくれないの?

断ったじゃない。未熟な自分。あなたの感情に追いつけない。

無理、お願いだから分かって欲しいのに。

そんな私の気持ちもお構いなしで……もう限界……

涙が溢れて零れ始めた。

流れ続ける涙で、視界の歪んだ中にいるあなたの表情は分からない。

けれど、摘まんでいた鼻は解放された。

私は酸素を求めて口を開け、悔しさに似たうめきの様な声で泣き崩れた。

そんな私を優しく抱き寄せ、あやすように頭や背中を撫でる。

「お前が俺のものになってくれるなら……」

狡い。優しくしながら、強引な言葉で私を追い詰めていくなんて。

あなたの穏やかな笑顔や、優しい言葉……思い出せば、その時に自分が抱いた気持ちは理解できたのに。

遅かったのかな。今は、あなたの愛情が怖い。

応えきれないと逃げ腰で。それでも望んでしまう。

私はどうすればいい?


清水くんが抱き寄せる腕の中、寄り添う体は熱を共有して、優しい香りが包む。

逃げられない。逃げたくない。

「俺は、篠崎が好きだ。だけど、この想いが君を追い詰めるなら俺は諦める。ねぇ。俺の事、嫌い?」

清水くんが私への気持ちを諦めると言った。

涙が止まり、私は顔を上げる。

だけど、そこで見たのは清水くんの黒い笑顔。

私の全てを見透かすような眼。

あぁ、続くんだ。これが流されて辿り着いた先。


溺愛の業火






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