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VS ~ 代償 ~  作者: 邑 紫貴
溺愛の業火

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11/50

流されて


清水くんは腕を伸ばして、頭に乗せた私の手を取った。

「座って。」

自分の隣に座るようにと、手を引いて導く。

彼は下から上目で、少し泣きそうな苦笑を見せた。

胸が苦しくなった私は無言で、導かれるまま横に座る。

清水くんは私の肩に、甘えるように頭を寄り掛からせて、無意識なのか何度もすり寄せる。

微妙な息苦しさ。

自然と体は動いていく。

私は彼の頭に、自分の顔を近づけて触れた。

清水くんは驚いたのか頭を離して、私の様子を確認するように覗き込んでくる。

少しの沈黙。

私は赤くなっている彼の目に釘づけになっていた。

その視線に、彼は何を思ったのか目を伏せ気味にして視線を逸らす。

「惨めだ。」

その言葉で自分の今の状況を把握した。

手は導かれた時に繋いだままで、赤くなった目元に触れようとするまで気づかなかった自分。

無意識に彼に触れたいと願うほどの、奥深くに沈めた想い。

『惨め』

私は視線を落として、苦しい胸元の服を握り締める。

そんな自分に影が落ち、額に風が当たって目を上げた。

おでこに柔らかな接触。

見つめ続ける私に、清水くんは視線を合わせて辛そうな表情をした。

沈んだ感情に、別の想いが込み上げてくる。

涙が出そう。苦しいのに甘い。

無言で見つめる彼の目が閉じ気味になり、顔の距離がゆっくりと縮まっていく。

私は目を閉じた。

唇に受けたのは軽いキス。

拒絶できるわけがない。

目を開けると、彼と視線が合ったまま唇が重なった。

流されてしまう。

このまま、何も考えず……



次の日の朝。

「篠崎!お前、一体何をしたんだよ。てか、大丈夫なのか?」

松沢くんが学校の玄関で待ち伏せ、挨拶もなしで叫びながら近づいて来た。

一体何を?大丈夫なのか?

「こっちに来いよ。」

手を引かれ、登校する流れの邪魔にならない廊下へと連れて行かれる。

「あいつ、頭がおかしくなったのかと思うぐらいに怖いんだけど!」

多分、あいつって清水くんの事だよね。

昨日の事が頭を巡って、私は赤くなる頬を覆いながら首を振った。

「もともと爽やかだったのが、照らされて浄化するかと思うぐらいの笑顔だぞ?何、あの後、付き合う話になったのか?」

松沢くんの興奮した説明と質問に、私は無言で首を振る。

「うわぁ、厄介な事になるぞ。篠崎、覚悟しておけよ。俺にはもう止められねぇ。」

覚悟とか、今の私には後悔しか残っていないのに。

昨日は流されて、あんな事になるなんて。あんな……。

恥ずかしくて死ねる!


教室には、そんな彼の様子を見ようと見物客が殺到していた。

出来るだけ視線が合わないようにチラ見したけれど、嬉しさの表れた笑顔が炸裂。

不味い。取り返しのつかない崖に飛び降りたような気分だ。

今の彼なら更に這い上がる私を待ち構え、手を伸ばしてきそうだ。

「篠崎、おはよう。」

見つかった!

そりゃそうだ。同じクラスだから当然の事。

嫌な汗が流れているのが自分でも分かる。

「おはよう、清水くん。」

作り笑顔で挨拶を返し、さっと視線を逸らして自分の席に逃げる。

追ってはこない。恐らく、昨日の『あんな事』で満足したのだろう。そう信じよう。

流されて気が付けば……

未遂だけど満足してますよね?きっと!

え?覚悟って何それ、美味しいの?うふふ。

夢なら覚めて欲しい。そう、私を現実へと突き落して。



「篠崎さん、昨日の清水くんの足を引っ張ったのはあなたよね。」

これが現実。

私が彼に相応しくないのだと、もっと突き付けて欲しい。

「そうよ。どうすればいい?」

どうにもならない。

想いは膨らんで、彼の気持ちに流されても良いと思っているのだから。

彼女の怒りを買って、外鍵のかかった小さな準備室に閉じ込められてしまった。

わざわざ準備していたのかな。

両手は体の前、縄で縛られているけれど身動きは取れる。

そして放置。計画性があるから、誰かが見回りとか来るのかな。

生徒会の子だし、大騒ぎにはならないような時間で解放してくれると信じよう。


床に座って壁にもたれ、今までの事を振り返る。

どうすれば良かったのかな。

告白された時、清水くんと付き合う事など頭には全くなかった。

だけど嬉しかったのも少なからず。

冷静にしたのは私が相応しくないという劣等感。

憧れの意識もなかった気がする。

だけど、好意は確かに存在した。付き合うことを考えないわけじゃない。

不安と恐れが、自分の想像する未来の大半を占めていた。

味わったことのない幸せよりも現実的。

それなのに、私は流されている……




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