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VS ~ 代償 ~  作者: 邑 紫貴
VS ~ 代償 ~

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1/17

可愛い?

石代いししろ 真歩まほ


朝は早く起きて、予習を行う日課。

時間が来れば、着替えて台所に立つ。朝食の支度と、お弁当の準備。

それが終わると、両親を起こす。

朝食を家族で食べ、片付けを済ませて身支度。

「行ってきます!」

申し分のない子供。それを演じ続けた人生。

幼き日に現れた彼の存在が、私を変えたの――


「まぁ、可愛い!息子さん?こんな可愛い子は、見たことがないわ!」

ずっと、私を見つめ続けてきた母の表情とは違う。目の輝きと歓喜。

それでも、現れた彼と友達になった。

一緒に遊んで楽しかったから。

その夜トイレに起きた私は、リビングの明かりに近づいた。

母が嬉しそうに、仕事から帰った父に語る。

「本当に、可愛いわぁ~~。まだ、小学生にもなっていないのに、勉強も出来るって♪将来……」

ウソツキ。お母さんが私に言った言葉は、ウソだった。

「可愛い。世界で一番、可愛い私たちの娘。勉強なんか出来なくていい。優しい子になって。」

そうね。優しい子になるわ。嫌いな彼と、仲良く出来るぐらいに。


外国人の血が入った彼の肌は、白い。まつ毛も長く、切れ長の目。

瞳の色は薄く。髪は、ふわふわの茶色。私が成れないモノ。

せめて自分を磨こう。彼に一歩でも近く、すべての事を。

心に巣食った感情は、消えずに何をエサにしたのかヒッソリと成長を続けていた。

在原ありはら りょうへの敵対心。


中学になり、周りが色めきだす。

小学生の時の色めきに、無関心だった私。

それは被害が少なかったからだと知る。

「石代さん。在原くんと、付き合っているの?」

この質問に、うんざりしつつ。笑顔で答える。

「幼馴染だと言って、特別な感情を持たない。私が、彼を特別視していると?」

「うっ。違うなら良いの!」

言葉に詰まり、走り去る女の子の背中を見つめる。

「ふふ。敵対心は、十分特別視だと思うけど?」

くすくすと、意地悪な笑いで近づいてくる友達。

更月 サユ(さらつき さゆ)。

「サユ、何の事?さ、授業に遅れちゃう。戻りましょうね♪」

「くくっ。類友って知ってる?真歩は、私と同じ匂いがする。崩れるのが楽しみだな。」

知ってる。きっと、彼が現れなければサユのように成長していただろう。

心地よい。本当の自分を見ている気がするから。

だから彼が嫌いなの。


「真歩、帰りに図書館へ寄らないか?」

涼の爽やかな笑顔に憎しみしか感じない。

それでも私は笑顔で答える。

「いいわよ。テストも近いし。」

敵情視察のための時間。

図書館は静か。

チラリと、彼の教科書を見る。教科は、現国。

それは私が唯一、彼に勝てる教科。

「ね、真歩。告白されたって?」

【ドキッ】会話の内容じゃなく、視察を勘ぐられたのかと焦った。

「勉強に関係ないでしょう?」

内心の焦りを誤魔化すように、ノートを閉じる。

「俺には、関係あるよ。」

何、言ってんの?

思わず、眉間にシワ。それを指で押さえて直す。

私の言葉は、どれが正解なのか考える。

答えが見つからない。涼が何を考えているのか分からずに、悔しい気持ちになる。

「真歩、俺たち付き合ってないの?」

ないでしょう?

今日の涼は、オカシイ。このまま続けばテストで勝てる?

頭の中は、それだけだ。

「付き合いって言うのは、『好きだ』と告白されて『私も』ってなれば成立するものでしょう?私たちにあるのは、幼いころからの友人関係。種類が違うのよ。」

これだから、外国育ちは感覚が違うのよねって。

優しい子は、そんな事を思わないわ。きっと。反省!

「じゃあ、その改めて。」

何を改めるのかな?

「俺、真歩が好きだ。ずっと好きだった。小さい頃、俺が好きだと言ったら、好きだと答えてくれたよね?」

それと、これは話が違いますよ?

友達!幼馴染!お母さんの印象のため!それ以上の感覚なんて、ない。

「私に、涼への恋愛感情はないわ。幼馴染だから、一緒にいたの。どうする?」

彼の悲しそうな表情。

【チクリ】小さな胸の痛み。

あぁ、優しい子に育ったんだ。

敵の彼を傷つけた事に、良心が痛むなんて。成長したんだ。

「友達のままでいい。一緒にいられるなら。」

胸に感じた重みを、一瞬の内に。

心に巣食った何かが喰い尽くした。


「うわぁ~可愛い――」

遠くで聞こえた、彼への言葉。




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