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現実世界に飽きた俺、異世界で英雄になる

作者: カナタ

 俺は世間で言う大企業、森高ホールディングス社長の息子で、地域では有名な不良のボスである。名前は森高太一、小さい頃から周りの人間に頭を下げられ、才能にも恵まれ、人から見たら羨ましいような人生を歩んできた。

 だが俺はそんな毎日を退屈に思い、不良とつるむようになっていった。

 

「はぁ、なんかいいことねーかなー」

そんなことを言いながら親父のコレクションをあさる。その中である本が俺の目にとまった。何語で書いてあるのかもわからない。だがその本は俺の興味をひいた。

 適当に開いたページの文字をなんとなくで読んでいくと、突然そのページが目を塞がないと耐えれないくらい光ったのだ。


 俺がとっさに目を塞いで、再び開くと、どこか知らないところに俺はいた。

 その空間は時計がたくさんあり、俺の学校の体育館より少し狭いくらいの空間だ。           

 中心に豪華な椅子があり、その奥に扉が見える。

「(これは、夢か?)」

 そう思った瞬間に扉がゆっくりと開いた。

「だ、誰だ。」

「驚かないでください、あなたが私を呼んだんですよ。私は愛の女神です。」

「愛の、女神?……ちょっと頬をつねってくれないか?」

「いいですよ、これは夢ではありませんし」

 ぐいっと女神?が俺の頬をつねる。

「いってー」

 でもきちんと痛かったので、ここが夢ではないのがわかる。

「(じゃあ俺は死んだのか?)」

「死んではいませんよ」

「お前、俺の心を読んだのか?」

「はい」

 愛の女神?が俺の頬を優しくさする。そしてゆっくりと、椅子の上に座ってまた話を始めた。

「あなたの住んでいる世界の他にもいくつか世界があり、そして私以外にも神がたくさんいます。あなたたちを見守るのも私たちの役割なんですよ」

「(ここはいわゆる天界というやつなんだろうか。)」

「じゃあなんで俺はここに今いるんだ?」

「あなたが本に書いてあった呪文でここにワープしたからじゃないですか。」

「(あの本がっ、そんなすごいものだったのか。)」

「まぁ私があなたの運命をいじってここに来るように仕向けたんですけどね」

「な、なんでそんなことしたんだ?」

「あなたのお父さんは実は一度死んでいて、異世界での私の命じたミッションを成功させて、生き返ったんですよ」

「親父が!そんな人生してたのか」

「あなたを呼んだのは、私のお気に入りだからというのもありますが、あなたのお父様が、異世界で建国した国の腐敗を正して欲しいのです」

「その異世界の時間軸は俺の世界と違うのか?」

「そうですね」

「まぁ退屈な世界に飽きてたところだ。やってやらぁ」

「あなたの行く世界の地図を渡します。」

 女神が渡してきた地図には、一つの大陸に五つの国が書いてあった。

 「(一つの国の名はグロース朝レムリアで人間が皇帝……)」

「ちなみに死んだらもうその世界にはいけませんので気をつけて」

「えっちょっと、はやいってぇ」

 足元に魔法陣のようなものが現れる。


 「あの女神、すぐに人を異世界に飛ばしやがって」

 「地図を見てる暇もなかったじゃないか」

 俺がふと周りを見回すと、そこには見たことない世界が広がっていた。

 街並みは中世ヨーロッパのような感じで、でも少し違くて、少し大きめの塔かビルのような建物があったり、魔法使いの杖見たいのを持ってる人がいたり、刃物を持っている人もいて、俺のいた退屈な世界よりずっと楽しそうだった。

 街の人に話しかけてみた。そしたら最悪なことに気づいた。

「すみません、この国の名前を教えてください」

 俺が日本語でそう聞くと、街の人は意味のわからなそうな顔をして、俺の知らない言語を話して、どこかいってしまった。

 「(しまった、異世界で言語が通じるなんて、そんな都合のいいのは物語の中だけだった)」

「あの女神、俺を勝手に召喚しておいて異世界に送ったら送ったで言語通じないってイカれてやがる」

 「(そんなこと言っても仕方がないのだが、食べ物をどうにか入手しないとな、でも話せない奴が働くなんて無理だし、言語を数日でマスターしろと、無茶苦茶だ)」

 よく考えた結果、俺はスリをすることにした。いやだってしょうがないし。

 やってみると意外と上手くできた。のほほんとしてる奴から物を奪う。ただそれだけだから。だがその生活も長くは続かなかった。この少し身なりのいい男に気づかれたからだ。だが現行犯ではなく、なぜか後から俺が飯を食っている時に声をかけてきた。

「うめー!」

「君、さっきスリをしていただろう」

「あぁ、してたけどなんで現行犯じゃなくて今言ってって、えぇ!なんであんた俺の言葉がわかるんだ?」

「驚いたかい、私はこの国の伯爵でね、まぁ場所を変えよう」

 こうして俺はなぜか日本語が喋れる男に連れられて、でかい屋敷に連れてこられ、晩飯をご馳走になった。

「どうだい、美味しいかい?」

「まぁ普通かな、俺のいた世界では、俺は裕福だったから」

「そうかい、では本題に入ろう。私が君に聞きたいことは二つ、なぜ君がこの言葉が話せるのか、それと俺の世界、とはなんのことだ?」

「この言葉は俺のいた世界の俺のいた国の言葉で、俺は俺の世界から女神に天界に呼び出されて、突然この世界に送られたんだ。」

「ふーん、すまない申し遅れたね、私の名前はレオナルド・フォン・ライヒェンバッハだ。レオナルドと呼んでくれ。」

「俺の名前は森高太一、呼び方はなんでもいいよ」

「今度は俺の番だ。俺から聞きたいことは山ほどある。まず、この国の名前は?」

「この国の名前はグロース朝レムリア、皇帝の名前はフリードリヒ・フォン・グロース。この屋敷はこの国の首都グラナディアにある。」

 俺は女神からもらった地図を見た。この国は大陸の中央にあった。種族はいろいろだが、人間が皇帝の国らしい。

「じゃあ次は、レオナルドがなんでこの言葉を話せるんだ?」

「この言語は国の貴族や皇帝はみんな喋れるんだ。それ以上のことはわからない。」

「なんで俺をスリで捕まえずにひろったんだ?」

「君がスリをしているのは君が悪いんじゃない、だって君がこの国で働けないのはこの国の腐敗と君がこの国の言語が喋れないからだ。」

「(まぁその通りなのだが。)」

「それと僕は盗賊団の親分でもあってね、いわゆる義賊というやつだ。君の腕前を見込んで、そこの盗賊団に入って欲しい。」

「でもレムリア語が喋れないのは盗賊団にとっては致命的じゃないか。どうすんだ?」

「それなら大丈夫、ちょっと待っていて」

そう言ってレオナルドが僕に手を向けて何か呪文を唱え始めた。

「この者にレムリア語を習得させたまえ、レムリア・ランゲージ!」

「これでレムリア語が習得できたのか?」

「あぁできたはずだ。なぜなら今私はレムリア語で話しているからね。」

「(レオナルドの魔法、チートすぎだろ)」

「貴族たちは秘密の会談をする時などに君の国の言葉を使うんだ」

「そうなのか、まぁ盗賊団には入るよ」

「そうかい、では君は第一部隊であるエヴァン・ウッドくんのエヴァン隊で働いてもらう」

「わかった」

「なぁ話は変わるんだが、君私の養子にならないか?」

「なんですか突然?」

「いや、返事は急がなくていい。だが私には後継ぎがいないものでね。私が死んだら悪徳貴族どものいいような国になっていずれは争いを招きかねないからね」

「まぁ考えておきます」

「今日は部屋で休みたまえ、朝エヴァンに迎えさせに行く」

 今日色々話して調べてわかったことは、この国では今、前の皇帝が崩御し、幼い皇帝が即位したことによって悪徳貴族が国を統率しているようだ。ということと、悪徳貴族の親玉はこの国の宰相のエドムント・フォン・ブラックアダー公爵であるのに対して、反悪徳貴族派は規模がやや劣り、親玉はアーサー・フォン・ペンドラゴン公爵ということ。まぁ今日はゆっくり休んで、明日は頑張ろう。


 朝目が覚めて陽の光を浴び、朝食を食べて部屋に戻ると、痩せていて身長の小さい男が立っていた。

「君が太一か、今日から君が加わる酒場の店長のエヴァンだ。よろしく」

「あの俺は酒場じゃなくて盗賊団に……」

「あー君は新入りだからな、酒場でのルールを教えてやろう。」

「まず今から私たちが行くところは酒場だ。そこが我々のアジトだからな、普段は旅人や冒険者が来るところだが、たまに任務が来るのでそしたら何人か任務に行かせている」

「酒場は盗賊団の隠語で、店長は隊長の隠語だから普段からそう呼ぶようにしてくれ。」

「わかった」

「あと、君の名前はこの世界では目立つからこれからはクラウス・ツィンマーマンと名乗ってくれ、盗賊の時は二つ名のミストを名乗るんだ」

「俺の名前はクラウス、そして酒場の店員盗賊のときはミストっと」

「その調子だ」

 こうして俺は義賊になり、レオナルドの配下として、普段は酒場の店員、依頼が入ればミストとして生きていくことになる。「(だけどこんな所から国の腐敗をただせるんだろうか)」

 今俺は店長に連れられて開店前の酒場へと入る。店名はファースト。店の建物の二階は、アジトとなっており、エヴァン隊の隊員と俺はそこで初めて顔を合わせた。

「今日からうちの酒場で働くクラウス、二つ名はミスト君だ。」

「ほらみんな自己紹介して」

「厨房担当のルーカス・ベックマンだ。俺の二つ名はコヨーテ」

「ホール担当のレナ・シュミットです。私の二つ名はエクリプスです。」

「ホール担当のレオ・ガブリエル・ルソーです。僕の二つ名はサイクロンです。」

「厨房担当のエマ・ソフィー・クラインです。私の二つ名はマーキュリーです。」

「最後に私は店長のエヴァン・ウッドだ。二つ名はレックス、よろしくな。君にはホールに入ってもらう」

「はい、よろしくお願いします」

 「(うわーみんな二つ名かっけー)」

 それからは店長に仕事を教えてもらい、スタッフとして普通に働き始めた。俺の住まいは店の二階で、衣食住もまともに揃えることができた。


 この生活ができるのもレオナルド様さまだなーなんて思っていたらいつも酒場で見ないような小綺麗な親子が現れた。

「クラウス、あの方は伯爵夫人と伯爵令嬢だ。こちらにご案内してくれ」

「(伯爵家の人々がなんの用なんだろう)」

「ご案内します。ここではなく、裏の方へ、あとは店長お願いします」

「君も来たまえ、他のスタッフに任せて君と私たちでゆっくり話そう」

「では、お茶を用意します」

 そう言って俺はお茶をいれながら考えた。

「(なんか厄介事の匂いがするけど、これが国の腐敗を治すヒントになるかもしれない)」

 お茶を持って店の裏へ行き、俺も席についた。

「では話を始めましょう。早速ですがどうなさいましたか、イザベラ様、エレノア様」

「実は先日、宰相のエドムント公爵が亡くなったのです。悪徳貴族の力を弱めるには、この気を逃すわけにはいかない。そこでエドムント邸にある、国庫からの横領と奴隷の売買の証拠が書いてある書物を持ち出して欲しいのです。」

「なるほど、その任務が我が部隊に来るとは光栄だ。ちょうどいいから新人のクラウス君にこの仕事を任せてみましょう」

「(えぇ)」

「いや店長、僕の初仕事がこんな大事なことなんてやばいですよ」

「じゃあできないのか」

「(うっ、店長俺の性格をよくわかって嫌がる)」

「できないかって言われてできないなんて言いたくないです。できます」

「よし!当日は俺とクラウスの二人で行くのでお任せください」

「頼みましたよ。レックス」

「はい、ところでなんでエレノア様もいらっしゃったのですか?」

「主人がひどくそこのクラウスを気に入りまして、今回の任務が成功したら養子にするなんて言うので、挨拶させにきたんですよ」

「クラウス、今回の仕事成功させなさいよ。お父様のためにも」

「はい!お任せください。」

「(この子が仕事成功したら妹になるのか。なんでレオナルドは俺をそんなに養子にしたいんだ?)」

 そんなことを思いつつも任務は早速明日なので、今日はゆっくり寝た。

 朝早くに店長に起こされた。

「おい、もう30秒寝坊だぞ、あと今日は隠語と二つ名を使うことだ。」

「はい、わかりました、レックス。」

「(30秒寝坊って厳しすぎだろ店長)」

 こうして僕は鍛えられた通り早着替えをして店長と共にエドムント邸の近くまで来た。

「注文わかっているな、ミスト」

「はい、エドムント邸の一階の書斎の机の中の書物一枚でも多く、デリバリーですよね。」

「あぁそうだ、侵入経路はこうだ。俺が三階の部屋のガラスを割って引きつけるから、その隙にミストが玄関から侵入し、衛兵は教えた睡眠魔法で眠らせ、商品をとってくる、いいな!」

「はい」

「じゃあ行くぞ!」

 パァン!レックスが窓を破り、こうして作戦が始まった。

 衛兵が上に上がっていくのが見える。そろそろ俺の出番だろうか。

 俺は颯爽と玄関を駆け抜け地図をもとに書斎へ向かった。書斎の前に鍵を持った衛兵がいたのでそいつに睡眠魔法をかけた。

「この者を眠りに導きたまえルナ・レムリア」

「(すっげー本当に眠りやがった!)」

 そのあと俺は鍵を奪い、書斎の机の中から書類を持ち出した。

 家主が亡くなった直後だったからか順調に作戦は進み、俺は見事に初任務を成功させた。

 

「かんぱーい!」

「いやー今日は大活躍だったな、クラウス!」

「それほどでもないですってぇ照れますなぁ」

 とまぁこんな感じで俺の初任務は大成功だった。

「明日はレオナルド様への報告会があるからな、寝坊するなよ。」

「はい!」

 こうして長かった今日が終わって眠りについた。

「レオナルド様、これらが証拠書類でございます。」

「おぉーよくやった。エヴァン、クラウス。」

「これを使って裁判を起こしてください。そしたら敵方が弱体化させれます。」

「おう、そのつもりだ。」

 そうしてレオナルド様は裁判を起こし、ブラックアダー家を失脚させることに成功した。それにより、レオナルド様は伯爵から侯爵となり、宰相はアーサー公爵となり、敵だった悪徳貴族たちもこちらへと寝返り、貴族内での勢力図は一気に変わった。

 こうして僕はレオナルド様に気に入られて、養子となり、クラウス・フォン・ライヒェンバッハとなった。

 なので僕は貴族として政治や国について深く関わっていくこととなる。


「クラウス、君にはきっと力がある、国を動かし世界を変えてしまうほどの力が。」

「(俺にそんな力あるんだろうか、でも女神が俺の運命を決めているのなら、この国を安寧に導くほどの力があるかもしれない)」

「レオナルド様、まだまだこれからですよね。」

「そうだクラウス、国にいる悪徳貴族の排除、敵対国との和平、経済、民衆、恋。いろいろなことが君を待っているだろう。」

「(そうなんだろう、きっと。それでも俺は戦って生き延びよう。そしてみんなが笑顔の国を作りたい。)」

「レオナルド様、俺英雄になりたいです!」

「クラウス、君ならきっとなれるさ。私は応援しているよ。」


 こうして俺は国を建て直し、英雄になるのだがこれはまだまだ先のお話です。


読んでくださりありがとうございます。

短編初めて投稿しました。

誤字修正点等ありましたら教えてください。

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