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プロローグ
『君にならあたしの背を預けてもいい』
そう告げたのはたったひとりだった。
人の羨む華やかな暮らしも名誉ある立場もいらない。
ただただ美しい花を愛でて、自分らしく穏やかに過ごせたら幸せだ。
そう願った矢先に、あたしの平穏だった日々は一変してしまう。
世は暗黒期。
野盗が絶えず、怪盗と名乗るふざけた輩まで現れ、挙句の果てにかつて名だたる術師たちによって封印されたという魔王の復活が噂されるようになった絶望的なこの暗い世の中で、この男にだけは背中を預けられると信頼しきっていた人物に、実は自分は王子で、魔王討伐に力を貸してほしいと言われるまでは。