真夜中の激戦①
遠くから俺達を値踏みする視線が届く。
お返しと言わんばかりに涼と俺は殺意を向けた。
認識されていると思わなかったのか、視線の主は雄叫びを上げる。
「グオオオオオオオオッッ!!!!」
ドオンと自身のような爆音が響き、奴は眼の前に出現する。
そいつは2キロ以上先のビルの屋上から脚力のみでこの場所にたどり着いていた。
体長はおそらく3メートル前後、ボディービルダーのような筋骨隆々の大男。
身に纏う肌は血で染まったかのように紅く、見るものに恐怖を植え付ける。
歴戦のゴブリンが至るとされる破壊の権化、『オーガ』が現れた。
「SANチェックものだな!やれ、涼!」
「わかってるよ!『風の矢』!」
オーガを見た瞬間に陣形を組んで戦闘を開始する。
先制攻撃は涼。『風弓師』のクラススキルで矢を生み出して放つ。
ノーモーションで放たれた不可視の一撃は、オーガの硬い皮膚に弾かれて消し飛んだ。
「嘘ぉ!?」
こいつ防御まで硬いのかよ、想像してたけど厄介だな。
全ステータスでオーガに劣る俺達がするべきこと。
思考を巡らせた結果、一つの結論に至る。
『ヒット・アンド・アウェイ』、全てのアクションゲームにおける原点。
一撃死のリスクが高い、イコール一撃も当たらなければ問題ない。
最初に回したガチャで、俺は様々なスキルカードを手にしていた。
それを全て自分に使用したので、今の俺のスキル数は20を超えている。
ゴミスキルもあったよ!死ね!
閑話休題。
とりあえず今は眼の前の相手に意識を向ける。
【病魔の盾】と【魔狼の剣】を装備し、ガチャ産のアクセサリーを装備する。
【SR 光り輝くペンダント】。涼にも渡してあるがこいつの効果は最強だ。
30日間に一度だけ、致命傷を無視しその戦闘中の全ステータスを上昇させる。
クールタイムが長いのが唯一の欠点だな。
「涼!ヒット・アンド・アウェイ!」
「はいよ!『剣術:ダブルエッジ』からの『格闘術:落葉駆け』」
涼が大太刀を振るい、オーガに2度の斬撃を叩き込む。
さすがにSR武器なのでしっかりと肉に刃が入り込んで奴を引き裂く。
反撃をしようと殴り掛かる前に回避スキルを使って距離を取る。
ヒット・アンド・アウェイ最強!君もそう唱えるがいい!
涼が疲れてきたら交代。
盾を構えながらオーガの前に立ち、挑発する。
「虫けら一匹もやれない雑魚!ざぁーこ!」
「お前の煽りはなにも興奮しない。死んでくれ」
今この場で言う単語じゃねぇなぁ!死亡フラグになっちまうよ!
愚直にも煽りに乗ってきたオーガの攻撃を引き付ける。
剣術スキルでいなし、回避して、稀に盾でガード。
連続で受けるたびに違和感に気付く。こいつ、一切搦め手使わないな。
この巨体で投石でもしてきたらひとたまりもないが、それを使ってこない。
俺がさせないように立ち回っているのもあるが、必ず距離を取るときに石くらいは投げるだろ。
もしかしたらシンプルに馬鹿なんじゃないのか?
「見えたぜぇ……突破口がよぉ!」
無駄口を叩いている間にも、俺達は攻撃の手を止めない。
こいつの表皮は鉄よりも固く、魔力操作による防御も相まって中々削ることは叶わなかった。
でもステータスによる補助効果で長時間の戦闘でも疲れないのが最高。
「ソラ、加護を使う」
「了解、何秒必要?」
「最低でも1分」
「あいよ!」
あいつが最大出力の技を放つまでの時間稼ぎをすることになった。
いやぁ、俺がタンクなの?召喚士なのにぃ!
仕方ないからやるけどさ。
盾と剣を構えて、オーガの方に向き直る。
「タイマンと洒落込もうぜ、オーガくん!」
俺に戦士としての気概を見たのかは知らないが、奴は高らかに咆哮する。
己の友を見つけたように、それでいて敵を殺すような叫びを。
「グルァァァァァッ!!!」
大気が震え、一瞬だけだが俺の体が強張る。
捕食者が放つ絶対的な畏怖、焦点が定まらず、脳味噌が逃げろと叫んでいた。
初めてオフィリアと出会ったときのような濃密な殺意。
コレでこそ闘争、生命の本質であると。
生態系は今や人間は頂点ではない。
恐怖を乗り越え、泥をすすってでも這い上がるのが人間だ。
今は低くとも、いずれ頂点へ上り詰める。
その決意を見せろ!俺!!
覚悟を決めて柄を握り直し、俺も負けじと絶叫する。
「オーガァァァァァ!!!!!」
一分間だけ、遊んでやるよ!
あけましておめでとうございます!
久しぶりの更新となって申し訳ないです




