始まりと職業覚醒
それは突如として人類の前に現れた。
空間を引き裂いて出現した巨大な門、そこから現れる無数の異形たち。
銃火器は通用せず、原始的な武器しか通用しない異形に日本は蹂躙された。
しかし、人類にもまだ希望は残っていた。
神々が全ての人類に『ステータス』と『スキル』という恩恵を与えたのだ。
ある者は剣を取り、ある者は武具を生み出す。
これは無数の人間の中のほんの一人のお話。
―――――――――――なんなんだよ?この光景は?
俺の眼の前では、同級生が次々と引き裂かれ、殴られ、殺されていた。
緑の体色を持つ小さな子供の姿をした異形、『ゴブリン』が群れをなして俺達の学校を襲撃している。
勇敢な者は武器を取り、立ち向かっていったが数の暴力には勝てずに散っていった。
今は机と椅子でバリケードを作り、なんとか抑えているが突破されるのも時間の問題だ。
俺の後ろには女子数名と負傷した男子が9人。
戦えるのは俺と親友のみ。対してゴブリンは13体。
体力的には女子は全員庇えるが、負傷者を含めると無理だ。
クソッタレ、何のための『ステータス』だよ。
って、俺はまだ覚醒すらしてなかったな。
『ステータス』は三日前に突如として出現した『モンスター』たちと戦うための力。
基礎的な自身の身体能力に加え、各パラメータ数値に応じた強化をするってやつだ。
覚醒したらステータスは見えるが、俺達学生はほとんど見えてる奴はいない。
「グギャァ!!!!」
作戦を練っているうちに、バリケードの一部が突破されてしまった。
本当にヤベェ。
「どうするよ相棒!?」
迫ってきたゴブリンを殴り、追加の前蹴りで距離を取らせる。
そのまま親友である小野塚涼に質問をぶつける。
「いつもの行くぞ!」
「え、アレやんの!?ソラ!?」
「もちろんだ!」
親友が驚きのあまり、俺の名を叫ぶ。
俺の名前は富岡ソラ。高校一年生だ。
涼と俺は『武術部』という部活に所属していて、そこにはある掛け声がある。
それが小っ恥ずかしくて涼は嫌がっているのだ。
「「『我ら武術部!!敵は全員、かかってこいやぁ!!』」」
ゴブリンたちが動きを止めて、馬鹿なのか?みたいな視線を送ってきた。
やべ、俺達も恥ずかしくなってきた。
「今だ!!女子は逃げろ!!」
俺が叫び、その言葉と同時に女子が負傷者を連れて駆け出す。
これでなんとかなるかな?
二人でゴブリンを前にしたとき、空間に謎のシステムウィンドウが開かれた。
もしかして!!これが、『ステータス』!?
表示されていたのは、俺に加護を授けてくれた『神格』の異名と授けたスキルだった。
ステータスも含めるとすごかった。
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ステータス
名 富岡 ソラ
性別 男
レベル 1/100
クラス 『召喚士』『テイマー』『剣士』『格闘家』
HP 100/100
MP 300/300
STR 20
VIT 15
INT 28
AGI 25
DEX 12
LUK 6
SP 40
SUP 10
ユニークスキル『ガチャ』
クラススキル 『剣術(C)』『格闘術(B-)』『従魔契約(B)』『召喚術(S)』
スキル 無し
加護スキル『パーティー強化(D)』『芸術センス(A+)』『月姫の守り(C)』『魔王の素質(C+)』『癒やしの陽光(C)』
加護『誘引の奏者の加護』『月帰天女の加護』『天愚魔王の加護』『陽光の鳥頭神の加護』『羨望の姫君の加護』
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なんとか、なりそう?
でも、『ガチャ』に賭けるしかないよな。今スキルは0だし。
「ユニークスキル『ガチャ』!!」
俺が叫ぶと同時に、システムウィンドウが開いた。
開かれた画面にはいつもやっているソシャゲのようなガチャ画面。
真ん中にでっかく表示された『初回限定無料30連ガチャ(SSR、UR排出率上昇中)!』の文字。
これに賭けるしかねぇ!!
「回すぜ!」
輝かしい演出と共に、金色の宝箱、虹色の宝箱などが排出される。
大体はNか、R、SRだが、稀にSSRが出現した。
最後の一箱になると、その宝箱は『虹色』だった。
宝箱に銀色の鍵が差し込まれ、龍が立ち昇る演出が発生する。
排出されたのは一枚のカード。
書かれていたのは『UR』の二文字。
カード名は『ユニットカード【蒼海の騎士】オフィリア』。
名前だけでもめっちゃ強そうだな。
俺がガチャを引いている間に食い止めてくれていた涼に変わって前に出る。
「お前もステータス、出たんだろ?確認しておけ。役割交代だ。」
「了解!少し任せる!」
システムウィンドウのアイテムボックスに収納されていた『ユニットカード』を実体化させる。
手に取った瞬間に、どのように使えばいいのかが頭に刻まれた。
そのやり方に従い、俺は言葉を紡ぐ。
「『我が呼び声に応えよ。群青の海を守護する者よ』!!」
掲げていた『ユニットカード』が光の粒子となり、周囲に散らばっていく。
失敗か?と思ったのも束の間。
俺の眼の前に巨大な魔法陣が展開された。
魔法陣からゆっくりとした足取りで姿を表している。
深い青色の全身甲冑に、雲を思わせるような真っ白の剣。
背中には青のマントに、どこかの国章を携えたまさしく『騎士』が顕現した。
騎士はゆっくりとこちらを向き、いきなり跪く。
「マスターの呼び声により、参上しました。【蒼海の騎士】オフィリアと申します。なんなりとご命令ください。」
初手から忠誠心がやばい感じがするなぁ………
大丈夫かな