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青色

かつては外に出ることを恐れていた

玄関のドアを開けるだけで、息が苦しくなる日々が続いていた


朝――じゃない 昼過ぎに目が覚める

枕元のスマホを手に取る

今度は青色が消えたと話題になっている


世界中のユーザーが【青い空が無くなった】と写真を載せている

条件反射に窓の方向を見るが、ここ10年シャッターを閉めっぱなしだ

俺は小学生の頃から家を出ていない


ふと、昔の事を思い出す

小学校の国語の授業で、爺ちゃん先生が言ってた話を

『日本では――青信号――日本語が――』

学校に良い思い出は無いからあまり覚えて無い

記憶に残そうともしなかったから


――


そういえば、最後に外を見たのは、いつだっけ。

今までは外なんて気にしなかったが、さすがに5色目だ

大きく変わった世界を肉眼で覗いて見るか

窓に近づきシャッターを開ける


シャッターが軋み、金属の音が空気を割いた

冷たい風が頬を撫で、くすんだ空が彼の視界いっぱいに広がった

世界は、思っていたよりも静かで、色がなかった


「……空って、青かったっけ?」


その言葉が、自分の口から出たことに驚く

俺は、本当に空の色を忘れてしまっていたのかもしれない


――


思い出す

クラスでのこと


ひどいあだ名で呼ばれたり教科書を隠される

集団行動で仲間はずれにされる色の無い日々


学校に行かなくなった俺に先生が家を訪ねてくれた

一度じゃない 何度も来た

「話をしに来ただけだから」と言って少ししたら帰る

俺は部屋の隅で返事もしないでやり過ごした

――なんであの時、声をかけなかったんだろう


さすがに年を取れば分かる

学校に行く必要は無かったと今でも思うが、無駄に周りに怯える必要も無かった

今さら、どうしようもない

空が青かった頃を思い出して、なぜか胸が痛い


シャッターを閉めずに、窓の前に座り込んだ

久しぶりに、風の音を感じる

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