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第7話

「色々考えたんだけど……あなた、私の奴隷になるのが良いわ!」


 奴隷なんて言葉が店内に響き渡り、周囲がざわめき始める。騒ぎになったらえらいことなので、『ゲームの話で盛り上がりすぎました! 気をつけます!』とフォローをしてなんとか場を収める。

 この先輩、とんでもねえな。これをツンデレ語だと解釈して翻訳するなら、『私のパートナーになって欲しい』とかなんだが……合ってるのかね? 聞いてみるか。


「先輩、その……何がどうなって奴隷の話になったのか教えてほしいのですが……」


 単語が単語なので、如月先輩に少し近づいて出来るだけ小声で質問をする。あ、めちゃくちゃいい匂いが漂ってくる……この匂い好きやな……いや。今の俺めちゃくちゃキモいわ……気をつけよ。


 俺の質問を聞いて如月先輩がしまったという顔をしてすぐさま頭を下げてくる。


「……あっ、ごめんなさい。私、ちょっと興奮すると色々すっとばしちゃうのよ……。ちゃんと説明するわ」


 興奮しちゃったのなら仕方ない。俺は大人しく先輩の真意を聞くことにしよう。


「まず秋月くんは、先天性と後天性の能力持ちの違いって知っているかしら?」

「先天性もそうですが、特に後天性の能力持ちについてネットの情報が殆どなかったので違いというのは知らないですね」

「それは仕方ないことだわ。そもそも後天性の人たちなんてほとんど居ないのだし、能力者についての情報は結構秘匿されてるから」


 はえー、そうだったんか……。そりゃネットに情報が転がってないわけだわ。

 そんな何も知らない俺に、如月先輩は可愛く指を立てながら一から説明をしてくれた。


「まず先天性の人から。こっちの人は能力がとにかく強力な人が多いわ。例えば山を1つ簡単に吹き飛ばせるとか、ほぼ不死身とか。能力の方向性は色々違うけど、軍隊とかの通常兵器じゃ太刀打ちできないレベルの強さを誇っていると思ってくれたらいいわ」

「そんな強さだから、僕たちが通っている高校みたいな能力者に首輪をつける機関が存在しているんですね」

「物わかりが良いじゃない。その通りよ」


 俺が官僚だったら同じようなことするし、アニメとかラノベであるあるの設定やからな。


「次に後天性の能力者についてだけど--」

「--マリン。奴隷と叫んでいた件について言いたいことがあるのと、学校関係者にしか知られてはいけない機密情報を不特定多数の人がいるところで言おうとしないでください」


 突然、如月先輩の声を遮るように、聞き覚えのある鈴の音のような声が前方から聞こえてくる。顔をそちらに向けてみると……そこにはにっこりスマイルの鈴野生徒会長がいました。





 ちょっとオコだったらしい生徒会長がその場で如月先輩に一瞬説教をした後、場所を変えましょうということで、現在生徒会長室のソファーに座っております。隣になぜか如月先輩が座っているけど。なんか俺を誰かに取られまいとしている雰囲気もあるし。


 そんな如月先輩と若干困惑している俺に生徒会長がお茶とお菓子を出してくださり、彼女は対面に腰を下ろす。


「まず秋月くん、無理やり連れてくるような形になってごめんなさい。流石にあの場所で機密情報を流すのは看過できなかったので……」

「いえいえ、大丈夫です。気にしていませんので。……ん、あれ? なんで僕の名前を……?」

「私もスタボでお茶をしていたのですが、マリンの『奴隷になりなさい』以降、失礼ながらちょっと近くで話を聞いていたのです。そこでお名前を知りました。盗み聞ぎしてしまってごめんなさいね」

「全然大丈夫です!」


 「ごめんなさいね」のところで上目遣いなんかされたもんだから、おじさんイチコロですよ。近くで話を聞いていたのも風紀を乱す生徒を監視していたのだろうし。


 「よかったぁ~」という生徒会長を見て『可愛すぎんだろ』とか思っていると、横から舌打ちらしき音が聞こえてきた。……俺は難聴系では無いから聞こえてますよ、如月先輩。

 そんな如月先輩に生徒会長がスタボでの一瞬説教の続きを始めた。


「それでマリン。あの場では聞けませんでしたが、なんでスタボで奴隷なんて言葉を発したのか教えてほしいのですが。というか、桜大学付属高校の生徒として許されざる行為でしたよ? あなたはテレビでも特集を組まれる有名人なのですから、もっと言動に注意してください。あ、昨日のクレープ屋でのやらかしも知っていますからね?」

「……ごめんなさい」


 さっきまで若干イライラしていた如月先輩が水をぶっかけられたかのように静かになる。というか、生徒会長すげーな。クレープ屋の話も知ってるのか。


「反省しているならそれで良いのですが……。それで、なんで秋月くんに対して奴隷なんて言葉を発したのですか? あなたのことだから、なにか興奮することがあったのでしょうけど」

「それは…………秋月くんがいい物件だったから……」

「……? 恋愛の話? 確かにマリンは昔から恋愛話になると顔を真っ赤にして恥ずかしがる傾向があるけど……」

「いや、そういう話じゃないから」


 如月先輩が真顔で即座に否定する。まあ、こんな美少女が出会って早々俺に惚れてたら怖いわ。ちょっとだけそういうのを期待していたのは認めるが。というか、話は変わるけど、二人は幼なじみなのかな? そうなのかな? 絶対にそうだよね。

 一ミリほど落胆し心の安全のため頭の中の話題を別のものに逸らす俺を傍目に二人は話を続ける。


「じゃあどういうことなのですか? もっと分かりやすく説明してください」

「…………いやだと言ったら?」

「実力行使にでます」


 生徒会長がポキポキと指を鳴らす真似をしてにっこりスマイルを如月先輩に向ける。これには如月先輩も顔を青ざめさせる。どうやら、力関係としては生徒会長のほうが上らしい。そんな相手にタメ口な先輩もなかなか肝が座ってらっしゃるが。

 

 如月先輩は渋々と言った様子ながらも理由をを説明し始めた。


「……………………秋月くんが能力持ちじゃなかったのと……パッと見た感じ能力的にも戦闘能力的にも将来性があったから……」

「あったから?」

「…………唾を付けておこうと……」

「だから奴隷と?」

「あ、あれは言葉の綾で……本当は任務とかの時に一緒に行動するチームメイトにならないかって言いたくて……」

「ということらしいです。秋月くん、ごめんなさいね。この子、言葉選びが悪すぎるのと、過程を何も言わずに結論だけ言う癖があるの」

「ごめんなさい……」


 生徒会長はまたまた可愛らしく上目遣いで、如月先輩はペコリと頭を下げて謝ってきた。俺としては全く気にもしていなかったところなので、こちらも頭を下げて気にしてないですよ、と告げる。

 

「ありがとう。マリンも次こそは気をつけてくださいね」

「はい……。秋月くん、この埋め合わせは必ずするわ」


 その埋め合わせでまた同じようなことが起きないか一瞬心配になったが、それは飲み込み、「気にしなくていいですよ」と笑顔で答える。

 正直、何か問題が起きてもこんな美少女と食事とかに行けるだけで全てが許せるし! 許せる理由が不純すぎるかもしれないが……仕方ないね!

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