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第5話

「ねえあんた。さっきから何私のことジロジロ見てるの? 私の身長が小さいからけんか売ってきてるわけ? それともあんたも私のむ……胸が小さいって言うわけ!? 誰がロリよ! 私はれっきとしたレディだし高校2年生なのよ!」


 謎のクレープ大食い女子がいきなりどえらいことを言ってくるもんだから、その場が騒然となる。一緒にここに来ていた宮崎達も「おいおい……」みたいな感じだ。俺も同じ気持ちダゾ。


「ジロジロ見てすみません。あまりにも美味しそうに食べていたのでつい見てしまいました」


 俺のせいで彼女が気分を害してしまったかもしれないので即座に謝る。

 実際には「すげえ食いっぷりだな」と思いながら見ていたのだが、美味しそうに食べていたのは事実だから嘘は言っていない。


「そういうことなら良いのよ。……ちなみにあなたに聞くけど、私はロリじゃないわよね? ツルペタロリじゃないわよね?」

「そ、それはもちろん! 立派な女性であると思うであります!」


 ロリかロリじゃないかと言われれば見た目はロリであるし、ツルペタか否かと言われればツルペタであるが、そんなことバカ正直に言うわけがない。あと、エグい質問されたことで動揺してしまって軍人みたいな喋り方になってしまった……恥ずかしい……。


 そんな俺の回答を聞いて彼女は「ふーん」みたいな顔をしながら、なぜか俺の方に一歩一歩近づいてくる。

 え? どういうこと? 俺の答えはお気に召さなかったですか? 一発殴られてスッキリしてもらわないとダメですか?

 

「あなた、名前は?」

秋月康介(あきづきこうすけ)です」

「学年は?」

「1年生です」

「なるほどね」


 俺が質問に答えている間も彼女は俺の方に近づいてきて、いい感じの威力でビンタとかができそうな距離でやっと止まってくれた。

 ……なんで近づいてくるんですかねぇ。やっぱりビンタとか殴られるとかそういうイベントこなさないといけない感じですか? まだ転生して1日目なんですけど。あと入学したてなんですけど。

 宮崎達も唾を飲んで行末を見守っている。薄情なんてそんなことは思わない。俺も同じ立場なら似たような行動をとるだろうし。

 しかし、止まったと思ったら今度は俺の全身をくまなく見始めたんだけど、まじでどういうこと? 時々「ふーん」と「はぁ……」を繰り返すの辞めてほしいです。心臓に悪い。

 というか、この先輩。よくよく見たら神様が教えてくれたヒロインの人じゃん。髪色が写真では赤だったけど、目の前にいる子は金髪だったから分からんかったぞ。顔が写真と全く同じだから間違いない。あと、結構気が強そうな古のツンデレみたいな感じの雰囲気も同じだし。

 名前は確か--


「あ、名前を言ってなかったわね。私は如月マリン。あなた、将来性はありそうに見えるけど、今はただの案山子(かかし)ね。評価は現状Dかしら。これが授業評価なら落単ね」


 向こうから名乗ってくれた。名前も神様から聞いたものと一致しているし、間違いないね。ついでに、なんかものすごく失礼な評価をされたが。落単……この言葉に囚われた人はもれなく留年していたなぁ。あゝ懐かしや。


「評価……はどう受け止めていいか分かりませんが、先程は失礼しました。如月先輩」

「私の方こそごめんなさい。さっきは少し乱暴な言葉になってしまって」


 俺は如月先輩の言葉を聞いてホッとする。ツンデレ先輩だから、ちょっとしたことで「絶対に許さないわ! 一発ぶん殴られなさい!」とか言われるかと思ったけど、どうやら今のところ彼女は令和製のツンデレさんのようだ。最初は怪しかったけど。


「……ちょっと注目を集めすぎたわね。えーっと……はいこれ。私のライムID。あとからちゃんと登録しておいて。あなたと後日また話がしたいの。じゃあ」


 そういって俺に紙を渡した如月先輩は駆け足で去っていった。

 ……なんだか主人公イベントみたいだったなぁ。今の会話で俺と後日話したくなるようなことなかった気がするが。ま、貰えるものは貰っておこう!

 

 如月先輩が去った後、周りの野次馬達も興味を失ったのか去っていき、宮崎達が「大変だったな」と言いながら俺が注文していたクレープを持ってきてくれる。宮崎お前……ありがとう! てか、みんなクレープに手をつけてないじゃん。わざわざ待っててくれたのか……優しいなぁ。

 俺は彼からちょっと冷めてしまったクレープを受け取り、ぱくり。うん、甘い! んでうまい! みんなも幸せそうな顔で食べてるし、このクレープ屋、やるな。


 クレープをみんなで味わって食べた後、宮崎以外のクラスメイトは俺と帰り道が異なっていたため、別れて帰ることとなった。んで、宮崎は驚くことに俺と同じマンション住みだったので一緒にだべりながら帰宅する。話題は、やっぱり先程の如月先輩関連である。


「秋月、入学初日からあの如月先輩のライムID貰えるなんてすげえじゃねえか」

「如月先輩って有名な人なの?」

「有名だぞー。テレビとかでたまに『将来の国防を担う美少女特集24時』っていうのが放送されるんだけど、そこで生徒会長とともにいつも特集組まれる人だぞ。そういうの見ない人なのか?」

「あー、最近は見てなかったな。面白そうだし、今度から見るわ」


 なるほど。警○24時みたいな番組がこっちの世界でもやってるのね。


「ちなみに、如月先輩ってどういう人か知ってる?」

「うーん、俺も今日あそこで会うまでテレビでしか見たことなかったし、テレビでの情報になるぞ?」

「うん」

「端的に言うとツンデレちゃんとして紹介されてたな」

「……なるほどね」


 テレビでもそうなのか。んじゃ、性格はツンデレで確定やな。あの見た目であの言動でツンデレじゃなかったらむしろ怖いくらいやったし。俺はツンデレが大好物やし、問題なし、むしろ大歓迎っす! ぜひとも仲良くさせてもらいたいですねぇ!

 家帰ったらすぐにライム友だち登録しておこう。

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