ジャイアントロックゴーレム
二人が歩いていると突然、空から大きな物体が落ちてきて、地面に激突した。それは巨大な岩のようなモンスターだった。そのモンスターは地面を揺らしながらゆっくりと立ち上がった。その姿を見て、ボールは驚いた。
「あれは、まさか……」
「知っているのかい? あのモンスターのこと」
「ああ。あれは、かつて私達が倒したことのある伝説の怪物さ。名前は確か、ジャイアントロックゴーレムと言ったかな」
「えっ!そうなの!?」
オーキャラは大きな声で驚きの声を上げた。
「うん。間違いないと思う。でも、何でこんなところに……」
ボールが不思議に思っていると、ジャイアントロックゴーレムはオーキャラたちを睨みつけた。
「ひぃ~」
オーキャラは悲鳴を上げながらボールにしがみついた。ジャイアントロックゴーレムはその巨体に似合わず素早い動きでオーキャラたちに迫ってきた。
「グルメ魔法・ハンバーガー!」
オーキャラは再び魔法の杖をかざして呪文を唱えたが、やはり効果はなかった。ジャイアントロックゴーレムはオーキャラたちに体当たりをした。オーキャラは吹っ飛ばされた。ボールは剣を構え、ジャイアントロックゴーレムと対峙した。
「ボール。危ないぞ。早く逃げるんだ」
オーキャラは必死に呼びかけた。
「いや、ここで逃げたら勇者じゃない」
逆にボールを奮起させてしまった。ボールは剣を振り回した。
「うわぁっ!!」
剣の攻撃は当たらず、逆にパンチを食らいそうになった。ボールは慌てて避けた。
「こいつ……強い」
ボールは焦った。一方、ジャイアントロックゴーレムの方もボールに苦戦している様子である。
「よし。ここは私に任せてくれないか」
オーキャラは立ち上がり、魔法の杖を構えた。
「分かった。気を付けてね」
ボールが心配そうに言うと、オーキャラは大きく深呼吸した。
「グルメ魔法・チーズバーガー!」
しかし、またしても効果は現れなかった。
「そんな馬鹿な……。一体どういうことなんだ」
オーキャラは狼に追い詰められた羊のように怯えていた。
「大丈夫だよ。きっと何か理由があるはずだよ」
ボールが励ましてくれた。
「そうだよね」
オーキャラは自分に言い聞かせるように呟いた。
「そういえば、前にも同じようなことがあったような気がするんだ」
ボールは記憶を辿るように言った。
「前って?」
「ほら、以前、オーキャラがグルメ魔法を使った時も効かなかったことがあったじゃないか」
「あ、思い出したよ。確かに効かなかったことがある。それがどうかしたの?」
「つまり、グルメ魔法が効かないのには何らかの原因があって、その原因を取り除けばグルメ魔法になるかもしれないということだよ」
「なるほどね。じゃあさ、試しにもう一度グルメ魔法を使ってみてくれないか」
「了解!」
オーキャラは元気よく答えて、魔法の杖を振ろうとした。その時、ジャイアントロックゴーレムが突進してきた。オーキャラはとっさに魔法を唱えることができず、とびかかってきたジャイアントロックゴーレムを避けることができなかった。
「ギャーッ」
オーキャラは叫び声を上げて倒れた。
「オーキャラ!大丈夫か!?」ボールは叫んだ。
「何とか大丈夫だけど……」
オーキャラは起き上がったが、足を痛めているらしくよろめいた。
「待っていて。今、助けるから」
ボールはそう言ってオーキャラのもとに向かおうとした。だが、ジャイアントロックゴーレムがそれを阻む。
「くそっ。邪魔をするな」
ボールはジャイアントロックゴーレムに向かっていった。
「ボール君。無茶だよ。逃げよう」オーキャラが言った。
「大丈夫だよ。私は逃げない」
ボールは果敢にもジャイアントロックゴーレムに立ち向かった。しかし、ジャイアントロックゴーレムは強かった。ボールは何度も殴られ、蹴られた。
「ぐぅ……」
ボールは血を流しながら倒れ込んだ。
「もういいよ。逃げようよ」
しかし、ボールは逃げなかった。それどころか、果敢にも攻撃を始めた。
「グルメ魔法・チーズバーガー!」
しかし、またしてもチーズバーガーにならない。
「どうして?」
オーキャラは不思議だった。
「分からないけど、とにかく逃げよう」
ボールの言葉に従い、オーキャラ達は走り出した。しかし、すぐに追ってくる。そして、あっけなく捕まってしまった。
「もう駄目だ……」
オーキャラは絶望的な表情を浮かべた。
「グルメ魔法発動! 岩豆腐!」
ジャイアントロックゴーレムだから岩に関係する料理にしないとグルメ魔法は効かなかった。岩豆腐は岩のように固い豆腐である。山奥の村の豆腐は、山道を運ぶ際に崩れないように固くした。
「おおー」
ボールは感動の声を上げた。そして、手を伸ばして岩豆腐を掴んだ。
「美味しい!いくらでも食べられる気がする」
「それは良かった」
「グルメ魔法があれば旅先でもご飯に困らないわね」
「まあ、そういうことだね」
二人は満足げに笑った。
「ところでさ、あのモンスターは何でこんなところにいるんだろう? まさか、この辺りに住んでいるとか?」
オーキャラは疑問を口にした。
「いや、違うと思うよ」
ボールは首を横に振って否定した。
「前にも言った通り、あいつは伝説の怪物なんだ。そんな奴が、こんなところにいるはずがない」
「じゃあ、何のためにここに来たんだろ?」
「多分、何かを探しに来たんじゃないかな」
「探し物?」
「うん。例えば……宝箱とかさ」
ボールは冗談めかしに言ったつもりだったのだが、オーキャラは真剣に受け止めた。
「えっ……そうなの」
オーキャラは怯えた。
「いや、単なる思いつきだよ。気にしないで」
「そうよね。考え過ぎよね」
オーキャラはほっとした。
「それにしても、これからどうしようか」
ボールは腕組みをして考えた。
「そうだね……。とりあえず、村に行こう」
「分かった。じゃあ、行こう」
ボールはオーキャラの手を引いて歩き始めた。