ガナードの村
二人はさらに森の奥へと進んだ。すると、また別のアウズンブラが現れた。今度は三体だ。
「どうしよう」ボールが言った。
「大丈夫だよ。今度こそ、グルメ魔法を使ってみるよ」
オーキャラは自信ありげだった。
「じゃあ、やってみて」
「グルメ魔法・チーズバーガー!」
しかし、またしてもアウズンブラはチーズバーガーにならない。それどころか、三体のアウズンブラは突進してきた。
「どうして?」
オーキャラは混乱していた。
「分からないけど、とにかく逃げよう」
ボールの言葉に従い、オーキャラ達は走り出した。だが、すぐに追ってくる。そして、あっけなく捕まってしまった。
「もう駄目だー」
オーキャラは叫んだ。オーキャラの叫び声が響いた。
「いや、まだ諦めるのは早いぞ」
そう言って現れたのは、大きなリュックを背負った男だった。男は手から炎を出し、アウズンブラを燃やした。
「ありがとうございます」
オーキャラとボールは礼を言う。
「気にするな。それより、お前達も冒険者か? 俺はこの近くの村に住んでいるんだ。一緒に行こうぜ」
こうして、三人の冒険者は出会った。
それからしばらくして、彼らは村に辿り着いた。村は小さなもので、人口は百人にも満たなかった。
「ここが俺の家さ」
男が言う。彼は村長の息子で、名前はガナードと言った。年齢は二十歳前後といったところだろうか。髪の色は茶色く、瞳の色も同じ色をしていた。
「へえ、いい家ですね」
オーキャラが言う。
「だろう? 親父が建ててくれたんだよ」
ガナードは自分の家に誇りを持っているらしく、嬉しそうな顔をした。
「ところで、君たちはどこから来たんだい?」
ガナードが訊ねる。
「私たちですか?旅をしているんです」
「旅だって!? すごいじゃないか! それで、どこまで行くつもりなんだ?」
「それは……」
ボールが言い淀む。
「決まってないのか? それなら、しばらくここに滞在してもいいんじゃないか?」
「でも、お金がないんですよね」
「金なんて要らないよ。ここは小さいけれど、自然豊かだし、空気も美味しい。きっと気に入ると思うぞ」
「本当ですか? 嬉しいです」
「私も気に入ったぞ!」
オーキャラも同意するように言った。
「良かったら、村の案内をしてやるよ」
「良いんですか?」ボールが尋ねる。
「もちろんだとも。今日はもう遅いから、明日になったら出かけよう」
こうして村に泊まることになった。
翌朝になり、オーキャラ達はガナードに連れられ、村の中を見て回った。村には畑があり、そこで働いている村人もいた。他にも、牛や羊を飼っている家もあった。どれも、ごく普通の光景である。
「何か質問はあるかい?」
ガナードが訊ねる。
「あの……、この村の外には何があるのですか?」
ボールは疑問を口にした。
「ああ……。実は、この近くに遺跡があるらしいんだ。そのせいで、モンスターがよく現れるようになったんだってさ」
「遺跡ですか。そこに行けば、もっとたくさんのモンスターが現れるかもしれないですよね」
「そうだな。だけど、危険すぎるよ。だから、誰も近づかないようにしているんだ」
「なるほど……」
「おっと、そろそろ戻ろうか」
ガナードが提案する。
「分かりました」
オーキャラ達は了承し、彼の後に続いた。その後、彼らは村長の家に招待された。中に入ると、そこには一人の老人がいた。彼はガナードの父親であり、名をドランという。
「おお、よく来てくれましたな」
「お邪魔します」
「ゆっくりしていきなさい」
「はい」
「それと、息子のことをよろしく頼みます」
「えっ? はあ……」
「こいつはまだ若いのに、村を出て冒険者に成りたいとか言ってましてなぁ。まあ、気持ちは分からんでもないが……」
「父さん! 余計なこと言わなくていいよ!」
「すまんすまん。つい口が滑ったわい」
「まったく……」
「まあまあ、落ち着いてください」
オーキャラは二人の間に割って入った。
「すみません」
「申し訳ありませんな」
「いえ、大丈夫です。それより、少し話を聞かせてください」
「話ですか?」
「はい。この村についてです」
「そう言われてものう……」
「この村では、どんな作物を作っていますか? あと、特産品とかありますか?」
「そうじゃな……」
それからしばらくの間、ボールとオーキャラとガナードの父親は村についての会話をした。そして、日が落ちてきた頃、彼らは解散することになった。別れ際、ボールはガナードと握手を交わした。
「また会おうな」
「うん」
こうして、三人の冒険者は別れたのだった。