ダイエット
ある日、ボールから相談を受けた。
「最近、お腹が出てきた気がするんだけど……」
「それは当然だ。人間は成長するものだし、食事の量も増えているはずだ。体重が増えるのは自然なことだ」
「そうなんだね。でも、太るのは嫌なんだよね」
「ダイエットをするのか?」
「うーん……。ダイエットかぁ……? よく分からないけど、痩せたいかなぁ……」
「では、私がダイエットメニューを作ってあげよう」
「ありがとう!」
こうして、オーキャラによるダイエットが始まった。まずは朝食抜きにした。そして昼食は野菜サラダのみとした。夕食は少し多めに取った。
三日後、オーキャラはダイエットの成果を確認するためにボールを呼び出した。
「どうだった? 減量できたかい?」
「それがさっぱり。全然減らないんだよねぇ」
「そうか。では、もう少し続けよう」
更に一週間が経過したが、一向に成果は出なかった。そこで、オーキャラは方針を変えた。
「よし! こうなったら最後の手段を使うしかないようだな」
「えっ!? 何か秘策でもあるの?」
「ああ。あるぞ。私の必殺技を使えば、どんな相手もイチコロだ」
「おお。すごいね」
「ただし、リスクもある。下手すれば死ぬかもしれない」
「えぇ~!! そんな危険な技があるのぉ!!」
「いや、そこまで危険ではない」
「うぅ。怖いよ」
「心配するなって。ちゃんと作戦は考えてあるから」
オーキャラは、ボールに耳打ちして、とある場所へ連れ出した。そこは森の奥にある洞窟で、中に入ると薄暗くジメッとしていた。
「ここで何をするつもりなの?」
「まあ見てろって」
すると、オーキャラは何もない空間に向かって叫んだ。
「出てこい!悪しき者どもよ!!」
その瞬間、何もなかったはずの場所に黒い渦が現れて、そこから悪魔が現れた。
「ふわぁ~。何だよ一体。せっかく気持ち良く寝ていたっていうのに……」
「すまない。だが緊急事態なのだ。実はこの人間をダイエットさせたくて呼んだのだ」
「ほう。それで、どうやって痩せさせるつもりなんだ?」
「簡単だ。私が作った特製ドリンクを飲ませるだけだ」
「なるほど。それなら楽勝じゃないか」
「そういうことなので、後は任せたぞ」
「おう。分かったぜ」
こうして、悪魔の協力もあって、無事にダイエットに成功することができた。しかし、副作用としてボールの体は縮んでしまった。その結果、彼女は子どもの姿になってしまったというわけである。
「こんな姿にしてしまって申し訳ないが、許してくれないか?」
「別にいいけど……。どうして急に小さくなったんだろう?」
「おそらく、あのドリンクが原因だろう。あれには人間の体を大きくしたり小さくしたりする効果があるらしい」
「そうなんだね。でも、元に戻る方法はないの?」
「残念ながら、今のところ方法は見つかっていない」
「そっか……。じゃあ仕方がないね」
「本当にすまないことをしたと思っている」
「大丈夫だってば。気にしないでよ」
「ありがとう。優しいな君は」
「……ということがあってな。あの時は本当に大変だったんだ」
「…………」
「おい。聞いているのか?」
「あっ。ごめんなさい。ちょっと考え事をしていたもので」
「まったく。昔のことを思い出してしまったではないか」
「すみません」