ボールはグルメ魔法を学ぶ
ある日、ボールがこう言った。
「私ももっと効率的に戦いたいなぁ……」
「じゃあ、グルメ魔法を覚えようか?」
「えっ? いいの!」
「うん!」
オーキャラは書き溜めたグルメ魔法の秘伝書をボールに渡した。ボールはすぐに読み始めた。そして三日後、彼女はグルメ魔法を覚えた。
「これで少しは役に立てるかな」
ボールの言葉を聞いてオーキャラは嬉しくなった。
オーキャラ達が森へ行くとボアが群れで現れた。
「どうしよう……。逃げないと……でも……」
ボア達が一斉にこちらに向かってきた。
「キャー!!」
ボアの大群を見てメイは悲鳴を上げた。しかし、オーキャラは冷静だった。
「大丈夫だから落ち着いて。そばを離れないでね」
そう言うと、ボールはボアたちに向けて手を向けた。
「グルメ魔法・焼き肉」
するとボアたちの足下から炎が上がった。ボアたちは一瞬にして丸焼きとなった。
「すごい!!」
ボールはグルメ魔法に感動した。
「そうだよ。次はボールの番だ」
「うぅ~ん……やっぱり無理かも……」
「そんなこと言わずにやってみようよ」
「分かったわ。やってやるわよ!」
ボールは再びボアたちに手をかざして呪文を唱えた。
「グルメ魔法・ゼリー」
ボアはゼリーになった。それを見ていた他のボアたちも怯えていた。
「やったじゃん!さすがボールだよ」
「ありがとう。これもオーキャラのおかげだよ」
こうして、二人はボア狩りを続けた。しばらくすると、ボアよりも強い獲物まで狙えるようになっていた。
そんなある日のこと。いつものようにボアを狩っていると、突然空に大きなドラゴンが現れた。
「あれは何!?」
「分からないけど、きっとドラゴンだと思う」
ドラゴンの周りではボアたちが逃げ惑っていた。
「ねぇ、追いかけてみようよ」
「えぇ~!!危なくない?」
「大丈夫だって。それにあのドラゴンってなんか弱そうなんだよね」
「そっか……。なら行ってみるか」
オーキャラ達はドラゴンを追いかけることにした。しばらく走るとドラゴンに追いついた。ドラゴンはかなり疲れている様子だった。
「よし、今のうちに倒そうぜ」
「待ってオーキャラ。様子が変だよ」
「どういうことだ?」
よく見るとドラゴンの背中には小さな女の子が乗っていた。
その少女は泣いていた。
「お願いします。助けてください」
「君の名前はなんていうの?」
「私はミミと言います」
「俺はオーキャラ。こっちはボールとメイっていうんだ」
「よろしくね」
「それで何があったの?」
「実は私達、旅をしているんですけど、途中で悪い人たちに襲われてしまったんです」
「それは災難だったね」
「はい……。ですからどうか私たちを助けてもらえませんか?」
「もちろん良いよ」
「本当ですか!ありがとうございます」
「それじゃあ早速行こうか」
「ちょっと待った!」
「どうしたんだよ?早くしないとまた襲われるぞ」
「私達はこの子を助けたいんじゃないのか?」
「あっ、そういえば……」
「ごめんなさい……。私のせいで迷惑をかけてしまって……」
「気にしないでください。困ったときはお互い様ですよ」
「本当にすみませんでした」
「謝らないでいいから早く行きましょう」
「ところでどこに行くつもりなんだ?」
「とりあえず近くの街に行きたいんだけど……」
「分かりました。案内しますね」
ミミの話によると近くに大きな町があるらしい。そこで一休みしようと決めた。しばらく進むと道の向こう側から馬車がやってきた。馬に乗った騎士らしき男が近づいてきた。
「止まれ!!」
男は大声で叫んだ。オーキャラは無視して通り過ぎようとした。すると男は大きな剣を抜いて襲いかかってきた。
「止まりやがれ!!」
だが次の瞬間、オーキャラの魔法によって男の体は氷漬けになってしまった。
「なっ……なんでこんなことに……」
「お前こそ誰だ!!」
「おっ……お許しを……」
「おい、逃げるんじゃねえよ!!」
オーキャラは逃げ出した馬も凍らせた。
「ひぃっ!!」
「さぁ話してもらおうか!」
「わ……分かった……」
男は観念したように語り始めた。
「実は……俺達は盗賊団なんだよ」
「どうしてそんなことをするの?」
「金のためだ。金持ちの商人を襲うことで生計を立ててるんだ」
「でもどうして私たちを襲ったんだ?」
「そこの女は貴族の娘だから身代金を取れると思ったんだ」
「なるほど……」
「頼むから命だけは勘弁してくれ」
「分かったよ。その代わり……」
「分かってる。何でも言うことを聞くよ」
「それならまずは武器を捨てろ!!」
「分かったよ……」
男は渋々といった感じで持っていた剣を落とした。
「次は両手を上げて後ろを向いてくれ!!」
「分かったよ……」
男は言われた通りにした。するとボールは魔法を唱えた。
「グルメ魔法・焼き肉」
ボアの時と同じように炎が上がった。
「ぎゃああああ!!!!」
「これでもう悪さをできないだろ」
「た……助けてくれ……」
「ダメに決まってんだろうが!」
オーキャラは男の頭を蹴飛ばした。
「ぐふぅっ……」
「さてと、次はどうしようかな……」
「あの……私のことは放っておいて下さい……」
「そんなことできるわけないよ」
「でも、これ以上あなた達に迷惑をかける訳にはいきませんから」
「大丈夫だよ。それより怪我はない?」
「はい、大丈夫です」