ドラン
オーキャラ達が村の外れにある草原を歩いていると、何やら作業をしている男性を見つけた。
「こんにちは」
オーキャラが声をかける。
男性は振り返り、オーキャラ達の姿を目にした。
「これはどうも」
彼は笑顔で挨拶する。
「何をしてたんですか?」
「草刈りだよ。この辺りは雑草が生えるのが早いからね」
「へえ、大変ですね」
「慣れれば平気さ。ところで、君たちは冒険者かい?」
男性が尋ねる。
「はい。そうですけど」
「そうなのか! なら、この村にしばらく滞在するんだね?」
「そうですね。まだ決めてないですけど」
「それなら、ぜひ僕の家に来てくれないかな?君達と話したくてウズウズしてたんだよ」
「私たちと?」
「ああ、そうだとも」
「どうしてですか?」
「それはだね……」
男は語り始めた。
「僕はこの村に住んでいるんだけどね、最近になって、村の外から人がやって来るようになったんだ」
「そうなんですか?」
「うん。しかも、その人たちは全員女性なんだよね。最初は驚いたよ。だって、こんな田舎に女性がやってくるなんて思わないだろう?」
「確かに、普通は考えませんよね」
「でも、彼女たちは違うみたいだ。村にやって来た途端、楽しそうにおしゃべりを始めたからね」
「へえ……」
「それで、興味を持った僕は、彼女達に話しかけることにした。そしたら、なんとその内の二人が恋人同士だというじゃないか!」
「えっ!?本当ですか?」
オーキャラは驚いた。
「ああ、間違いないよ。二人はとても仲が良く見えた。だから、僕は言ったんだ。『結婚を前提に付き合ってるのか?』ってね」
「そうしたら?」
オーキャラは固唾を飲む。
「そしたら、二人は顔を真っ赤にして俯いてしまった。それを見た瞬間、僕は悟った。ああ、こいつらは本当に愛し合っているんだなって。だから、僕は祝福することにした。二人の幸せを願ってるって伝えたよ」
「良いですね」
「ありがとう。だけど、それ以来、あの二人と会う機会がないんだ。そこで、君たちにお願いがある」
「お願いですか?」
ボールは首を傾げる。
「そう。実は……、一度でいいから、あの二人に会いたいと思ってるんだ」
「なるほど」
「そういうことですか」
「だから、もし良かったら、協力してくれないだろうか? もちろん、謝礼はする」
「分かりました」
ボールは即答した。
「おお、引き受けてくれるのかい?助かるよ!」
男性は嬉しそうに言う。
「いえ、お安い御用ですよ」
「じゃあ、早速行こうか」
「はい」
こうして、オーキャラ達は男性と共に村へと向かった。道中、男性は自己紹介をした。彼の名前はドランという。それから程なくして、彼らは目的地に到着した。そこは、小さな教会だった。入り口には看板があり、「愛の誓いを立てる場所」と書かれている。
「ここが僕の家さ」
ドランが説明する。
「素敵なお宅ですね」
「はっはっは! そんなに褒めても何も出ないよ!」
ドランは上機嫌だった。
「さあ、中に入ってくれ」
彼が促す。そして、オーキャラ達は彼の後についていった。室内に入ると、そこには女性がいた。彼女は椅子に座っており、テーブルの上には花瓶が置かれている。どうやら、水やりをしていたようだ。
「母さん、ただいま!」
彼は元気よく挨拶した。すると、女性は立ち上がり、こちらに向かって歩いてきた。そして、オーキャラ達の姿を確認するなり、「あら!」と言って微笑む。それから、すぐに表情を引き締めた。
「あなた、その方達はどなたかしら?」
「旅人だよ」
「まあまあ、そうなのね」
女性は再び笑顔になった。
「初めまして。私はドランの母です」
「どうも」
「はじめまして」
「立ち話をするより、まずは座らないかしら?」
彼女の提案により、一行は席に着いた。
「改めまして、私の名前はナターシャです」
女性が名乗った。
「私はオーキャラです」
「ボールです」
「メイです」
「そう。よろしくね」