新年
「あー……もう新年か」
硫黄の香りが強い温泉で、俺は朝日を見ながらつぶやいた。
ジハドを倒し、こっちの世界に戻ってきた俺は、呪術師の村があった場所に住んでいる。プリムがこの辺の土地を買い、『領主』としておさめているのだとか。
深い森の奥にある呪術師の村。
特殊な「磁場」とやらで、一度踏み込むと脱出不可能な「迷いの森」という場所なのだが、エルフのナキとその仲間たちのおかげで、近くの町や村までの道が開拓された。森の住人であるエルフにとって、この程度の「磁場」など問題ないのだとか。
森を開拓し、街道までの道を作ると、その「磁場」とやらは綺麗さっぱり消えたそうだ。
「あぁぁ~……」
それにしても、いい。
温泉……最高ですわ。
呪術師の村、共同浴場。男女一緒に入るのが村では当たり前だったんだけど……村を開拓してからは仕切りがはめられ、男女別となっている。
だが、男女の区切りだけではない。小さいながらも「混浴」があった。
俺は現在そこにいる。理由は混浴に入りたかった……からではなく、この混浴が一番、朝日が見えるのだ。
すると、混浴のドアが開き入ってきたのはカグヤだ。タオルで胸を隠しているが、照れはない。
「ちょっと! お風呂入るならアタシも呼んでよ!」
「悪い。だってお前ぐっすりだったから」
「もう……ま、いいわ」
カグヤは身体を流し、俺の隣へ。
やや照れはあるが、羞恥はない。
俺とカグヤは深い仲になった。俺の組手相手であり、嫁であり、相棒である。
「プリムたちは?」
「あのね、まだ朝日出たばかりでしょ。みんな寝てるわよ」
「お前は起きてんじゃん」
「ベッドにアンタがいないからでしょ」
カグヤは俺の肩に頭を載せてくる。
こいつ、たまにベタベタ甘えてくるんだよな。この世界に戻った当初は泣いて抱きついたりしてきたんだけど、すぐに「泣いたこと忘れなさい。じゃないと蹴る」とかキレるし。
でも、今ではもう俺の嫁だ。
カグヤは朝日を見る。
「そういや新年だっけ」
「ああ。昨日はナキたちも混ぜて飲み会したよな。くくっ……ナキの腹芸、マジで笑えた」
「ぷっ……や、やめてよ思い出させるの」
そういや、プリムも言ってたな。
「ホワイトパール王国では新年を祝うお祭りが三日間開催される」って。
俺はカグヤに提案する。
「な、ホワイトパール王国に行かないか?」
「なによいきなり」
「プリムが言ってたじゃん。新年のお祭り開催されるって」
「あ!! そういやそんなこと言ってたわね」
「俺らなら走って半日くらいで着くだろ。それか空蝉丸の背中に乗って空飛んでいくのもいいし」
「……あのキモイ虫? 嫌よ。ミカエルとか泣き出すわよ」
「誰が泣くって?」
と、ここでミカエルが登場。
タオルで胸を隠しているが、こちらも羞恥はない。
ミカエルも、俺の嫁となった。
身体を流し温泉へ入ってくる。すると再びドアが開き、プリムとアイシェラ、クロネとヒョウカが入ってきた。
「あ、フレア。やっぱりいました」
「よ、プリム。ちょうどよかった、カグヤたちと話してたんだ」
「はい?」
「おい貴様、まずはお嬢様の身体を洗うから待っていろ」
アイシェラ、クロネ、プリムはしっかりタオルを巻いている。
だがヒョウカは一切隠さずにいた。この辺は呪術師の村の連中と似てるな。
「あなた。なにやら楽しそうなお話してました?」
「ああ。祭りに行こうって話」
「まぁ!」
ヒョウカは身体を流し、俺の真正面へ来た。両隣はふさがってるしな。
そして、すすーっと抱きつく。
「町でデートもいいですわね。ふふ、楽しみ」
「ちょっと、アタシらもいるからね」
「そうよ」
「わかっています。旦那様の愛を受けた者同士……ふふ、わらわは女同士もイケますわよ?」
「「…………」」
カグヤとミカエルの顔色が急に悪くなった。
そして、プリムが俺の傍へ。アイシェラとクロネは少し離れて湯船に浸かる。
「お祭りって、ホワイトパール王国のですか?」
「ああ。新年の祭り、やってるんだろ?」
「はい。あ、ちょうどよかった。わたし、ウィンダーお兄様に領地についての報告もあるので……」
「じゃあ今日行くか」
「え」
俺は朝日を見上げ、大きく伸びをする。
「先生が言ってた。『思い立ったが吉日』って。思ったことはすぐ実行しろ!!って」
「ちょ、ちょっと違うような……」
「ま、いーじゃん。アタシお祭り行きたい」
「あたしもよ。そういや、天使も人間の町に住み始めたってラティエルが言ってたし、確認しに行くのも面白そうね」
「わらわは旦那様と共に」
「お嬢様の護衛は任せろ」
「にゃん……みんなノリノリにゃん」
俺たちは、全員で朝日を見上げる。
新年、今年もいい年になりそうだ。
あ、そうだ……みんなにちゃんと言わないと。
「みんな、今年もよろしくな」
さぁて、もうちょっと温泉を堪能したら……ホワイトパール王国の新年祭りに行きますか!!