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11-12 停戦

もう少しで年越しです。

蕎麦食べましたか?



「甘いよ…きゃっとたわーってゆうのかな?

そんなもの作って可愛いねぇ」




空間に弾き飛ばされてムカついたから、雷を地面に向かって撃って地形を変える作戦は我ながらいい。

だと思っていた時期がありました!

忍さんの足元目がけて、剣山みたいに尖らせた地面を突き立てようとしたけど、ほとんど全部と言ってもいいくらい、足元のタールみたいなものに地面も雷も吸い取られて言ってる!

だからといって抵抗して無茶苦茶撃ったら、私の体力がもたない!

考えろ…どうすればいいのか考えるっしょ!




「そんなに怖がらないでよ?

素直に俺の娘になるってゆえばなぁ

まっ、言うことは聞かないか

じゃあこういうのはどうかな?」





おいおいおいおいおい、ふざけんなって!

着地した瞬間に地面から規格外の大きさの剣山みたいなのが湧いて出てきてる!?

さっき私がやった陣地形成と同じことをやってるのか!

まずい空中に投げ飛ばされてバランスが取れないし、落下してるし…剣山に当たって死ぬ…?

そんな無様なことになってたまるか!



「落下する勢いを相殺するなら…やっきゃぁ!

発動…野戦特科…榴弾発射ぁ!」




うぉぉぉおぁぉあらぁぁぁぁぁ!!





(??? 洞窟内)



「まぁ、こういう結果にはなったんだかな

お前らわかってるだろうけど、俺たち敵襲を受けてるよな?

相手から察するに、チーム過保護で親玉は瑠香の親父

その補佐で俺の可愛い源坊がいるんだよ

水上の言いたいことわかるよな!?」



「「「「「「「おっす」」」」」」」」


「ということで、反抗しないといけないんだわ…

はっきり言って」


「「「「「「「おっす」」」」」」」」


「お前ら、持てる武器は全部持ったか?」


「「「「「「「おっす」」」」」」」」」


「お前らさっきからそれしか言ってねぇじゃんかよ!

お前ぇらはよ!」



「「「「「「「…」」」」」」」」」


「何とか言えよ、黙るなって頼むから!

まぁいいや…てめぇら行くぞ

ジジイが若いのに負けねぇところ見せねぇとなぁ

長船…お前の子孫がいるんならちゃんと顔を見てやれよ」


「はい…ありがとうございます、水上大尉」


「水上大尉、なんか…向こうが撃ってきました!」


「えっ……!」







(??? 飛行場)



「へぇ、雷撃の勢力で剣山を破壊し…衝撃で地面にぶつかる勢いを消しとばしたか

で、ここに大穴が空いて…爆心地みたいだね?

気配を消した気でいるらしいが、俺の能力はお前以上だ…どこにいるかわかるんだぞ!」




とは言ったが妙に静かだな、気配を完璧に消している。

俺のいる半径2メートル地点は更地になり、残りの剣山は瓦礫の山になり…捲れ上がったアスファルトの上に乗って俺の雷には触れて捉えられない。

カマをかけても無駄骨になりそうだが、ここまで心躍る戦いは久しぶりだ。

終焉の地を模倣したこの場に合わせて、着替えてきておいてよかったよ。

38の弾も爆薬と多めに持ってきておいてよかった。

陸上自衛隊の精鋭を名乗るならば、俺もそれに応えようか。

でも探し出したあとは、俺の娘になれよ瑠香。

…空気を切る音が8時の方向から…。




「どんな攻撃をしてくれ…ぐぅぁ!」



なんだ…今の弾は?

鉄砲の弾ではない…擲弾(てきだん)でもなければ砲弾でもない!

石ころだと思ったが…なんだ!



「次は2時の方こ…あっぐぁ!」



避けれてはいる…避けれている!

石ころを避けたと思えば、今度は雷撃が付随してくる!

今度はどこだ…どこから打つ気だ!

音が聞こえなければ気配もない!

弄ばれている…この俺が!?

ふざけるな、俺は瑠香の事を…みくびっていたとでもいうのか!



「クソガァァァァ!!!」




(??? チーム過保護 高機動車内)



「源坊、この車いいなぁ…俺にもくれよ!」


「官品ですよ水上生徒監

それにしてもまぁ、一ヶ月もうちの娘を」


「るっちゃぁァァァ!!!

パパが今行くよぉぉぉお!!!」


「…こいつらまとめて、連行してやる」


「あっははは」



いやぁ、メンツが濃ゆいなぁ。

師団長と連隊長…おまけに義烈空挺隊員の隊長に憲兵って…長船三曹は胸焼け必死ですね。

ボーナス多くもらっても、無理です?



「…ごめんね瑛太、水上大尉は新しいものが好きなんだ

さっきの無反動砲だっけ?

正確にうちに来て俺はすごいと思うよ…さすが俺のひ孫だ」


「ありがとう…ひいおじいちゃん」



俺の隣左で腕を拘束されてるけど、苦笑いを浮かべる俺のひいおじいちゃん。

会うのは今回初めてだけど、まさか義烈空挺隊だとは知らなかったよ。

向かいに座っている修と、清水さんの、目がうるうるしてるのがなんだかなぁ。



「それにしても、あの無反動砲攻撃が効いたわ!

まぁ台所にあったサンバルが無事でよかったよ

南印のかぁちゃんの飯、サンバル…くいてぇなぁ

瑠香はなんでも作れるからいい嫁さんになれる」



「当たり前だ、俺の娘だ!

なんでもできるし、めんこいんだよ!」


「親父黙れ」



みんなこんな雰囲気だけど、外からかすかに炸裂音が聞こえるのが…。

瑠香よ、無事でいてくれよ?

お前はFF課程に行って、お前の夢を叶えないといけないんだからな。

wacで初めての降下長…お前がならないとつまらないんだぞ。

俺たちが行くまでくたばるなよ?







(??? 飛行場)




「完全に沈黙を確認…

それにしてもとんだ威力だべ」



無理して撃ちまくったせいで、体が痺れる。

練馬の司令部にいる天城士長からの、アドバイスで得られた技だけど…使い方をもう少し考えないとな。


「戦車の装甲は年々、硬さがマシマシだから

普通の砲弾は貫通なんて難しい

だから槍状の弾頭にモンロー効果を加えて破壊するサボット弾にインスパイアした技

機甲科…榴弾射撃

人の原型を留めない可能性のある禁術だな」



忍さんは倒れて動く気配がない。

失礼だけど、銃口の先で突っついてはみたがやはり。

青い目の能力と雷撃をうまく組み合わせれば、大切な人たちを守れるんだ。

でも今は、疲れた…ちょっとだけ休憩し

というよりなんで上半身裸なんだよ…爆薬に引火しそうになって慌てて脱ぎ捨てたの?

銃も…投げ捨てたみたいだね。




「…負けだ、俺は父親になれない

雷撃を受けた時、瑠香の心の中が見えて来た

どれほど悲しい事があっても、財前誠を父親として愛しているのだな」


「忍さん…私は」


「最後の一撃の時に、1番強い火力を食らった瞬間

俺のやった行動は意味がないとわかった

俺はただ父親になりたかった

少し顔を見せてくれないか…」




ふっと彼の右手のひらが私の左頬を優しく撫でる。

温もりと、優しさ…ゴツゴツした手からは到底感じられない暖かさ。

忍さんが求めていた娘に対する愛情を注ぐという夢。

一ヶ月もここに閉じ込めたのは、夢を抱いたまま叶う事なく死んでしまった後悔から来ていたんだね。

水上一尉が言っていた事以上の気持ちを感じてたまらないよ!

涙が溢れて来た…忍さん!




「…いい顔してるじゃねえかよ

瑠香よありがとうな、猫又を止めてくれて」


「いいえ…そういうわけでは、お兄ちゃん…長船三曹

みんな来てたの!」


「当たり前だろ?

妹がさらわれて、平気なふりする家族がいると思うか?

仲間が居なくなって探さない中隊なんていないだろ?」




「修の言う通りだよ、心配したんだからな

長船三曹を困らせるなよ!

…なんてね、無事でよかった

さぁ…帰ろうか、みんなのいる練馬や習志野に」


「その前に待ってくれないか

やらなければならない事がある」




そう言って忍さんは、座り直して私にぎゅっと抱きしめくれた。

硝煙の匂いとタールの匂い…若干だけど血の匂いもするけどね。

でも忍さんが思う父親としての、温もりみたいであったかくて好きだ。

外された鉄棒がゴトンと地面に置かれて、彼は前髪をかき分けて私のおでこに優しくキスをした。

キスをした…?!

ふぁ…っへぁ…き…キス…キスぅぅぅぅぅう!!!

んにゃぁびぃぃ、すきぃぃい!





「これは俺から償いと、お礼だよ

一ヶ月、拘束してすまなかった…瑠香の中にある空の子の力は全て解放したよ

今でも俺は…お前の遠い時代の父親だ

愛してるよ瑠香」



「…ありがとう…お父さん…」







るっちゃァァァァァ!!!

そいつから離れろ、神前忍ぅくぉろぉぉおす!

修ぅ俺の武器を持ってこいよ!

…修ちゃん、どこ行くの?

修ちゃぁぁあん!


行かないで、とっちゃをひとりにしないで。

白石さんどいてくれ、そいつを殺せ…なんで手錠持ってるんですかあ?!

明確な殺意って警務隊…やめてこないで!




「うるさいね、檻の中にいればいいと思うよ」



「「だからさ」」


「長船瑛太の目は狂ってる?」


「「わんつかでもそった気持ち持ったらだめ」」


「息ぴったりの兄妹だなぁ」



わかってました、はいとても。

みんなが気まずくなって言えないのも。

ずっと殺気立ってここに歩いて来ていたのも。

男衆たちのほとんどが暴走しないように抑えているのも。

私、忍さんの娘に本気でなろうかなぁあ!



「俺の娘になる?

いいよ、俺はいつでも待ってるから

でもその前に、みんなの元におかえり

サンバルは俺たち義烈で食っておくからさ」


「うん」


「俺も忍さんの娘になってもいい?」


「いいよ…修、おいで」

忍の願いは、お父さんになることですが叶わなかったみたいです。


忍ははちゃめちゃ強いアレだったのですが、それを上回るくらいに瑠香が強かったのか。

理由は来週に答えが出ます。

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