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11-6 神様たちと邂逅

最近カップ麺の美味しいことに気がつき不健康してます。


神様たちと邂逅



目の前が真っ暗だ。

なにも感じない…なにもわからない。

でもこの感覚はずっと前に感じた感覚と同じ。

真っ暗な闇の中をひたすら銃や背嚢を背負って歩く感じと同じ。

私は今どこを歩いている?

私は今どこに向かっている?

田中3佐…向井1尉…沖田2曹…室戸3曹…千春ねぇ…健太にぃ…小野士長…サト士長…お兄ちゃん…お父さん。

私は今なにをしているかわからないよ。

頭がぼーっとするんだ…誰か教えてくれないか?




「瑠香…前を向いて、頑張り過ぎているのよ」




誰の声だ…優しくて、暖かくて何よりずっと聴きたかった声だと思うんだけど。



「瑠香、目を覚まして…下ばかり向いていたらなにもわからなくなるよ」



この声の感じ…懐かしい。

お母さん…お母さん…お母さん。










「お母さん…あれここどこだ

私、富にぃの血を舐めて、それからゲロ吐いて…

って忍さんみたいな人がたくさんいる」




目を覚ましたら、私は少し広い洞窟のような場所に寝ていた。

しかも綺麗めの毛布に包まって、頭がぼーっとするまで寝ていたみたい。

働かない頭で辺りをじっと見てみると武器や装具、半長靴なんかは外されて誰か1人見張っているし。

忍さんはどこに行ったんだろう?





「…起きたようだな

うちの若いのが手荒な真似をしてすまなかった

きつく言って聞かせるから許してくれ」


「…貴女は確か、みずかみ生徒監…さん?」


「ほぉ、俺のことを知っているのか?

夢現ながら源坊との会話を聞いていたか

そうだ、瑠香のことが好きな猫又はそこにいるぜ」





水上さんが指差す先には洞窟の天井みたいなところに、麻縄みたいなもので縛られて吊るされて…。

ん…ん…ん?

んんんんんんんんんんん?

天井に吊るされてる?

えっと…吊るされてる…忍さんが…吊るされてる?

忍さん…忍さん?

えっとあの…えっと…し…し…し。






「忍さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!」


「みゃ…みゃぁ…ニャンコ…助けて…」


「川越死んだか…麻井は喜ぶなよ?」


「川越死んでやんの!

瑠香もかわいそうだなぁ…こんなひいじいさんでヨォ!」





私の頭はなにも処理できなかった。

周りにいる挺進兵たちがずっと忍さんのことを見て笑っているし、忍さんは目を閉じてなにも言わないし。

私が固まっているのにみんな気がついて、笑ったら良いからという。

昔の兵隊さんって暴力による指導を受けて育っていくって田中3佐が言っていたけど、これは暴力というか私的制裁って言えばいいのか。

それともこれはなんだ?




「ふぅ…そろそろ降りるか

驚かせてごめんよ、ニャンコ」


「レン…ジャァァ」


「困惑しててウケる〜!」


「川越軍曹…瑠香が固まっています

あまり驚かせてはなりませぬよ」


「…あぴぃ」





訳がわからない。

みんなケロッとしてるし、神様も普通に笑っているだけでみんなの行動を咎めないしでさ。

私の知ってる軍隊ってめっちゃ怖なイメージというか。

コワコワの怖って感じなのよ。

ここにいる人たち本当に軍人さんなんだよね?

怖くないというより、私の感覚が麻痺してるのかな?

誰かこの状況を理解できる人いますか?




「改めてニャンコに説明しようかな

ようこそ義烈ブートキャンプへ!」


「義烈…ブートキャンプ?!」


「そうであります瑠香殿

これには深い訳があるのですよ

あぁ申し遅れました…私は清水平吉と申します

街の中であった平吉は…私であります」


「平吉…くん?

あの純朴そうな男の子のあの!?

えっおばちゃん…ちょっ…飴っこ食べる?」






この瞬間、私の取り巻く空気感が何か変わった。

自分のことをおばちゃんと呼んだりしたせいなのか…。はたまたここにいる人たちが清水さん…いや平吉くんに対する対応がまさに大阪のおばちゃんと呼ばれる古参兵士(おかあさん)がそれと言われんばかりの言葉だったからなのか。

私が言ったことはまさにそれだ。

みんなが盛大にひっくり返って笑い転げているんだ。

義烈ブートキャンプ…これは思った以上にまずいものかもしれない。




「くははは!

コイツァいいぜ、瑠香!

そうだなぁ義烈ブートキャンプの熱い仲間はここにいる連中の簡単な紹介をしよう」





まずお前の真後ろで武器の管理と監視をしてるのが、鈴木勝と河本剛って言う。

陸自で言うところの三曹ぐらいか?

次にお前のことを攫おうとした時に、子供に化けたのが清水平吉でぇ。

その隣にいる目つき悪いが純朴少年その2が中村直哉。

まぁ陸士長と三曹の間くらいだな。

で俺の隣にいるいかにも堅物なやつが吉井孝次郎。

そこの凛々しくて色男なのが長船栄一だ。

この2人は少尉…三尉だ。

次にそこでツンケンしてるのが麻井友和…まぁ二曹だな。



「最後に俺が水上総一郎大尉

源坊の生徒監…まぁ士官学生のお目付役だったんよ

これから一週間の時間を取っちまうが…よろしくな」


「あの…よろしくおね『おいごら待てぼけ』


「忘れてたわ…猫又

何か質問はあるか…瑠香?」


「…レンジャァ!」


「質問ないみたいだな」



「猫又って言ってんじゃねぇぞ!?

俺のことをきちんと紹介しろ!

ニャンコも俺のこと知りたいよな?」



「あの…私の自己紹介を!」


「しねぇでいいさ…よく瑠香の顔を見せてくれないか?

ふふ…輪郭や口元に耳たぶの厚さは親父さん譲りだが

優しい表情や目つきにちっこい鼻っ柱は真奈美ちゃん譲りだなぁ

優しい女の子に生まれ育ってくれて水上は…いや義烈の皆は嬉しいよ」





私の頭をポンポンと触れる水上さんやなぜか涙ぐむ義烈のみなさんの顔を見るとなんだかとても…。

とても懐かしい感じがして、不思議と気持ちがいいんだ。

お母さんのことを知っているから、きっとお母さんが亡くなる前のことも知ってるのかな?

その辺りも情報収集しなきゃな。

そういえばなんか大事なことを忘れている訳じゃないけど忘れてる気がする。




「…ざけんな

ニャンコは一等卒だから仕方がないとして

お前ら俺のことを…猫又ってなぁ

いいぜ、ニャンコと俺の分残してあと今日の夕飯捨てるからな?」


「そういえばさっきからずっといい匂いがしていると思っていたけどこれってまさか…まさかぁ!?」


「ぼろねいぜ」


「ぶぉぉるぅおねぇぇいぜぇぇ!」




ボロネーゼは、イタリア発祥の料理。

北部に住むボローニャという富裕層の人たちが、フランスのラグー(煮込み料理)を参考に作ったと言われている。

牛挽肉と玉ねぎセロリといった香味野菜にトマトペーストと赤ワインを使った肉の旨味とトマトの甘みがべらぼーにマッチしちまった料理。

パスタもいいけど個人的にはご飯にかけてチーズ乗っけて炙ったら美味いはず。




「忍さん…投げたら…ボロネーゼがいたましいよ?

セイコーマート行って買い直さなきゃいけないよ?」



「北海道弁がなに言ってるかわからないよ?

でも捨てたら勿体無いものね…

今日のところは許そうか…でも」




百式軽機関銃(こいつ)が許すかな!?





忍さんが鍋の中から取り出した軽機関銃によって私以外のみんなは無事に駆逐されてしまいました。

咄嗟に地面に伏せて身を屈めて気がつけば…。

辺りに散らばっているのは銃弾ではなく大豆だったので大豆農家を敵に回したと私は直感しました。

なので財前家に伝わる必殺技…卍固めを決めて、私はみなさんのためにパスタを茹でてあげました。



「ボロネーゼうめぇ」

瑠香は神様達と出会い、この場所に来た理由をまだ教えてもらってはいませんが来てしまいました。

理由はまた後談します。


ボロネーゼを含めてこの話以降は飯テロさせてください

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