11-1 兵士たちの宿願
夏が終わる秋が始まる
そんな時に小説書いてるとしみじみしません
( 逢魔時 ??? )
「それにしても…ここはいつでも熱いなぁ
本当に地獄の様だ、いい加減にならないもんかな?」
「川越…貴様、我々の大切な空の子になんたることを
お前のやり方は無茶苦茶の度を超えている!」
「じゃあお前がやってみろよ、お前ならうまくやれるんだろ?
どうした、やってみろよ麻井!」
「喧嘩をするな貴様ら!
まずは空の子を、この空間に連れてくることが先決だぞ!
よりにもよって、地獄を見せるとは何事か!
それに麻井もカッカするな!」
あれ…ここどこだ?
神様みたいな格好の人たちがわんさかいる。
その中には神様…じゃなくて忍さんもいるけど私には気が付いていないみたいだ。
ここもこの前見た夢みたいにものすごく熱い。
なのになんでこんなに寒いんだ?
心が苦しいって言うか。
「…吉井少尉ぃ、そんなでっかい声出しちゃ行けねぇですぜ
ほぅらそこに可愛いお客がいるじゃねぇですか?」
その場にいた全員が私の方を見た!
視線が四方八方から注がれて、動くことができない。
身体中にまた、黒いタールみたいなのが這ってきた。
もがけばもがくほど、身体中に絡み付いてくるし喉を締めてきてる!
息が…できない…苦しい…助けて!
神様が…こっちに来て…る…こっ…来ないで!
「そんなに俺たちに会いたかったの?
そんなに慌てることなんてないよ
意外とせっかちなんだねニャンコは」
「ぁ…ぁぁ…う!」
「まぁいいや、今から俺たちところにおいでよ
美味しい漬けマグロ丼作るからさ
さぁ、こっちにおいで可愛いにゃんk」
『そうは問屋がおろしませんよ?
貴様ら全員尋問室に連れて行って、可憐に論破してやるよ…この白石憲兵少尉がなぁ!
御同行願おうかぁ!』
富にぃの声が地獄に響いて、身体中にへばりついていた、タールみたいなものが一気に剥がれ落ちた。
視界が明るくなって、真っ白な光の中に吸い込まれていく。
手を伸ばした先には、ものすっごくむっすりした富にぃが私を抱きしめた。
と思っていたけど、富にぃが腕を伸ばす方向にはきっと激おこな神様たちがいてそれに向けて拳銃を構えていたと思われる。
知らんけど。
「っはぁ!
私、知ってる…これは、知らない天井ダァ!
間違えた…習志野駐屯地の女性隊舎ダァ!」
「…大丈夫、頭おかしくなった?」
「すいません…言ってみたかっただけなんです
あの、畑口三曹…私」
「それくらい、いいよ
そのまま寝ていていいから、夢の中で何をみたか教えてくれない?
ものすごくうなされていたけど、まさか空挺の神様の事を夢の中で見たの?」
「不思議な場所で、神様たちがいました。
神様の仲間と言うべき人たちが…物凄く暑くて寒くて苦しくて、私は遠くから見ていたんですけど途中で気づかれて
捕まりそうになった時に、白石さんが助けてくれたんです」
「神様たちね…練馬のお父さんの家でも悪夢を見たのは知ってる
あんまり無理しないでね」
「ありがとうございま」
ぱっぱらーぱ、ぱっぱらーぱ、ぱっぱらーぱ、ぱっぱっぱ…ぱっぱらーぱ、ぱっぱらーぱ、ぱっぱらーぱ、ぱっぱっぱー。
「起床らっぱ…鳴っちゃいましたね」
「とりあえず…起きようか」
ちょうど6時をデジタル時計はさしていて、けたたましくなった起床ラッパも相待って私の眠気は消えてなくなった。
食堂はもう開いていると思い、ジャージから戦闘服に着替えてそろりと歩いて出て行く。
この時間帯は起きている人とまだ夢の中の人がバラバラなのだ。
立哨とかしている人が夜勤明けで仮眠を取る可能性もあるから、まぁ多少はね?
「習志野に来てからなんだか見られているような感じがする
なんだかとってもいずいなぁ…」
色々なところで視線をふと感じてしまう。
空挺徽章をつけたwacがいるからとかそんな感じじゃないし、監視されているとかそんなものでもない。
見守られているのか、それとも面白がっているのかわからないけどなんだろうな。
でも一つ確実に言えるのは私はそのうちそっち側に連れて行かれるんじゃないかって思う。
「最近変な夢ばかり見るし嫌になってきたよ」
( 午前9時 高淳高校 二年A組 )
「桐生さん…ねぇ葵ちゃん、どうしたの?」
「あ…牧野さんごめん、ぼーっとしちゃったよね?
いや…なんだかずっと神前さんの事が不安でさ
いやな感じがするって言えばいいのかな?」
「例えばどんな?」
「怖がらないで聞いてほしいんだけどね
なんだか遠くに行きそうな感じがして怖くて」
午前9時…もうすぐ授業が始まる時に、ふとぼんやりと桐生さんが窓の外を見ていたので牧野は不思議に思いました。
普段はおとなしい人ではあるんですけど、物思いにふけっているのが珍しいなぁって思ったのです。
でも私もずっと胸騒ぎのようなものを覚えて仕方がないんだ。
瑠香ちゃん本当に大丈夫かな…。
教室の窓から見た空は私たちの心みたいに真っ黒い雲に覆われつつあります。
「もしかしたら…いや何もないと思いたい」
「そう…だよね桐生さん
何もないと私も思いたいよ」
「練馬駐屯地で空挺降下のデモンストレーションがあったでしょ?
その時みんなで食べ歩きしたじゃん
その後からなんだか、神前さんのことが」
「何か見えたの?」
「…薄グレーの生地に、くすんだ緑色みたいなまだら模様の服着た男の人がずっと神前さんのこと見ていて
その人の顔がものすごい顔で見てたからさ
その人の周りだけ…例え用がないくらい暑くて寒かった
この前、部室で見た時はそんなことなかったのに」
「…ま?」
「ま…っあ
牧野さんそういうのは苦手…ってめっちゃ震えてる!
地震が起きるくらい震えてる!!
教室が揺れるくらい体が揺れてる!」
( 午後1時 練馬駐屯地 師団司令部 喫煙所 )
「珍しい師団長がアイコ○を吸われている」
「たまにしか吸わないと聞いているが
今日だけで3回は見たぞ」
「何かあったとでも言うのか?
ストレスが溜まっているのかもしれない
陸曹士や若手幹部以上に溜まっているのでしょうな」
「聞こえているぞ…なんの様だ?」
「「「いえ何も…失礼しました!!!」」」
「少し言いすぎたか…悪い癖だ」
『ッケホ…もぅタバコの吸いすぎだよ!
いい加減今日はやめた方がいいよ…俺!』
確かに吸いすぎているのはわかっている。
だがどうしても心が落ち着かない…
コーヒーを昼前だけで5杯くらいは飲んだ。
駐屯地の外れにある丸太に向かって正拳突きをしたり、蹴りを入れたりなんなら爪研ぎだってした。
北海道の森の主、ヒグマが如く野生に戻ってみたがやはり俺の心は落ち着かない。
るっちゃんがみた悪夢を、俺も似たような夢を見てしまったからか…何か起きるとしか言いようがないのだ。
「嫌な夢を見た…」
『なして唐突に始めたの?』
「ものすごいやな夢だ」
『ねぇ、人の話聞いてる?』
凄まじいものだ…地獄を体現するとはまさにこの事かと言うべき場所に俺はいた。
あたりには業火と硝煙の匂いが立ち込めて、息をするのが苦しくてな。
夢だとわかっていても、長い支度はなかったんだ。
そんな景色を見ながら俺は走っていたんだ。
そこに行けば、瑠香がいるとなぜかわかってね。
どれくらい走ったかわからないが、遠くの方に人影を見つけたんだ。
近づくとそれは瑠香と空挺の神がいたんだ。
『そっちに行くな、帰れなくなるぞ!!』
死に物狂いで叫んだが聞こえなくてな。
さらに近づくと不意に瑠香に何かを渡す描写が見えたんだ。
最近の流行りの洋菓子と思うが、それを口に含んだ時瑠香は寝てしまって後ちょっとのところで手が届くと思ったが連れ去られてしまったんだ。
最後に奴はこう言ったのだ。
『この娘の命は俺が貰い受ける
貴様のようなものを父親と言うべきにはあらず
偽りの父などこの子のためにならぬ
消えるべきは貴様の方だ
覚えていろ…お前を殺すのは俺であります』
そこで目が覚めたんだ。
本当に瑠香がとられると思うとゾッとするよ。
『何が目的なんだろうね…空挺の神は?』
「わからない…だが、何か起きる前に俺の手で」
潰すだけだ!
異なる時間帯のさまざまな人の視点で書きました。
空挺の神…もといしのぶさん達は何がしたいのでしょうか?
何を瑠香に伝えたいのでしょうか?




