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10-7 練馬に帰ります

熱々の夏が少しずつ去っていく感じがします。

って思っていたらまだまだ残暑がすごい




(午前7時半 練馬駐屯地 師団長執務室)






「帰ってくる…ルッチャンが帰ってグゥえ!

まんじ…固め…ぐるじぃぃぃぎぎぎ!」


「少し落ちけよ…親父…ふだぐぞ?」


「そんな怖い顔しないで修ちゃん!

お父ちゃん何かやったべか!?」


「さっきからゴッフゴッフ…うるせぇよ

ヒグマじゃねぇんだから暴れんなよ

瑠香の同級生がもうすぐ来るんだからな?」


「息子に怒られてる父親ってウケるぅ?!

もう一回親権剥奪してあげましょうか?」







「…まず儂はどこから突っ込めばいいべ?」





「「「「「「「突っ込まなくていいです!」」」」」」」






みなさんおはようございます、財前修と言います。

ここにいる馬鹿野郎と、白石富治検事と田中連隊長と愉快な仲間と共に今日という日を迎えました。





「もう…やめでぇぇぇ」


「…殺す」





本来であれば、5月くらいにやる行事が翼者襲撃があったため今月まで持ち越していました。

そう、毎年恒例の記念式典と呼ばれるものです。

毎回やってるため何が記念式典だべな?っていつも思うんです。

しかも今日は瑠香が空挺降下をやりますし、瑠香の同級生達がやってくるのです。

その前に、このクソ害悪蝦夷ヒグマこと財前誠を捕獲用の檻に入れないといけません。

制服じゃなくて戦闘服で卍固めしてあげてるのは俺の優しさです。





「猟友会呼ぶか、大人しく陸将としての務めを果たすかどっちか選ばせてやるよ…」


「大人しく仕事します…だから身包み剥がさないデェ!」


「…富治兄さんどうしたらいいですか?」


「猟友会呼んで身包み剥いで、僕が可憐に親権を剥奪して北海道の野山に捨てる

そして僕は源一郎様になでなでされるのです!」


「富治さんやめてよ!

結希に富治さんの悪いところが移っちゃう」


「ねぇ…おとうしゃん、起訴?」






富治さんの一人息子の結希君が結衣さんに抱かれながらつぶらな瞳で起訴?って聞いてきました。

かわいいです、ヒグマが作ったクソみたいな空気が一気に浄化されていきます。

もうすぐ4歳なのにどうやって結希くんはそんな言葉覚えたのかな?

でも可愛いからみんなの目が垂れてます。

可愛いは平和を作るんだね。






( 午前9時半  千葉県某所  上空 )





「財前…今日で俺たちとは最後だ 

しばらくは学校に行くんだろう?

FF課程も二ヶ月後のだから、それまではゆっくり羽を伸ばしてこい」


「でもわだじまだ…まだ空挺団いたいでず!

いまがらでもおぞぐないので、ならじのに!

いどゔざんぞゔゔゔゔゔゔゔ!!」


「泣かないで、また帰って来れるから

練馬でのんびりしてきなって、俺たち習志野にいるからって、奥田三曹何やってるの?!」


「失神させるか…一回習志野帰るか、そしたら落ち着くはずだが?

おそらく、財前の親父さんがいるから帰りたくないっていうことかもしれん」


「えぇ…そうなのか財前」


「ヒグマごろずぅぅぅぅ」


「正解だね…これは」





皆さんこんにちは三等陸曹、伊東拓人と言います

今日は練馬駐屯地の記念式典にて空挺降下を行います。

内容はというと、最初にHALO(ヘイロー)降下を行ってそこから俺たち3人が奇襲をかける。

地上部隊の人たちがやっつけにかかるっていうのをやります。

HALO(ヘイロー)降下っていうのは、富士山くらいの高さから飛び降りて新幹線の速さで地面に降りるん事を言います…大袈裟に言ったけど。





「東京都に入ったってさ

俺たちのためにUH-1に乗せてくれるとは空挺団も太っ腹だな」


「ヒグマ…ヒグマ…財前誠(ヒグマ)コロス」


「だめだ、奥田三曹

財前はそっちの方しか頭にないみたいだよ」


「伊東ちゃん、降下したら喧嘩させてあげよう」


「その方が良さそうだな」





時刻はそろそろ10時半、俺たちが降下する1時間前になった。

先方のFFの連中も降下40分前くらいか、その辺りなんだろうな。

今は、師団長の検閲とかやってんだろうか…。

それにしても財前の親父さんがまさか師団長だとは知らなかったよ。

練馬でも習志野でも同族殺しとか魔王って呼ばれて師団長は恐れられているし、そんな親父さんの名前に負けずに財前も頑張ってるから応援したいんだよな。







(午前11時 練馬駐屯地 グラウンド)







「最初に来た人たちすごかったねー!

パラグライダーから降りてきたって感じ?

って事はそろそろ瑠香ちゃんくるかな?

大槻くん…その望遠カメラ」


「牧野さん、いい質問ですね!

これは僕が普段から使っている相棒ですよ

これでいろんなものを撮るのが趣味なんです」


「ガチ勢ってやつだね…

ねぇえみり、なんであいついるの?」


「紗香氏どうした…あっ」




今日は私たちは練馬駐屯地の記念式典に招待された。

メンバーは私、牧野えみりと相沢紗香ちゃん。

途中で合流した瑠香ちゃんが助けた渡辺智くんと学校新聞部の大槻守くんと桐生葵さん。

そして私たちの担任の綾瀬先生と副担任の麦田先生が来てるんだよね。

綾瀬先生はずっと不機嫌な感じなんだけど…麦田先生が機嫌取りしてるし可哀想だよ。

案内してくれているのは…あっ瑠香ちゃんのお兄さんだ。






「そろそろ神前1士が飛んできます。

…瑠香っていう方がよかったかな?

おっきたきた…UH-1(チャリ)できたってか?

コスモ一番機ィ、コースヨシ…コースヨシ

ヨーイ、ヨーイ、ヨーイ

降下ぁ…降下ぁ…降下ぁ」





家から持ってきた双眼鏡を除くとヘリコプターがこっちにやってくるのが見えた。

大槻くんは今か今かってカメラを構えてる。

私たちのいるのは特別に通してもらった庁舎の屋上。

1番見えやすい場所だからって通してもらえたんだ。

ヘリコプターが近づいてきたと同時にアナウンスの人の声が興奮してきている。




『ただいま降下しました

最初に降下しましたのは、神前瑠香一等陸士』




確かに私の耳にアナウンスが聞こえて、空を見上げるとふわふわと三つの落下傘がグラウンドに向けて降りてきた。

1番最初に降りてきた瑠香ちゃんは後ろの2人よりなんだろう…とっても綺麗だと思った。

みんな口々に綺麗だって言ってたんだ。

なんでだかわからないけど、一本の線のようになってるっていうか。

本当に空高く舞った花がゆっくりと風を含んで地面に降りてくる感じ。





「…あれ、もう降下おわったの?

麦田先生、神前さんのこと見入ってた

すごく綺麗だったからなんだか」




大槻くんが撮った写真は綺麗に飛ぶ神前さんの写真がたくさん映っている。

ヘリコプターから飛び出す瞬間から落下傘が開いてここに降りていく瞬間も。

可憐な花が空に舞って、綺麗に降りてきた感じを瑠香ちゃんは体現したんd





ドカァァァァァァァァァアン!!!!




私たちは思い出した、ここが練馬駐屯地である事を。

瑠香ちゃんの空挺降下を見惚れて、この駐屯地の趣旨を忘れていた。

空挺降下は序章で、戦車や装甲車や大砲?がバンバン撃っているのを、私たちは忘れていたのです。

衝撃で軽く土煙が舞い上がり、火薬の匂いが漂い始めたのです。

あまりの迫力にみんな口ポカーンってなっていて、不機嫌だった綾瀬先生も、目玉どこー!ってなってます。




「なまらうるさいよね、心臓に悪いっしょや?」



「「「「瑠香ちゃん!」」」


「帰ってきたよみんなぁ!!」



「かっか…神前…さん、あの…こしぁ」


「お久しぶりです、綾瀬先生

腰抜かしたんですか、衛生呼びますか?」


「神前さん…久しぶりね、麦田先生見てたよ」


「麦田先生お久しぶりです

ちゃんと降下できました、見てくださってありがとうございます」



「瑠香…久しぶりだね、かっこよくなってまぁ」


「お兄ちゃん…かっこよくないよ私は

ねぇところでヒグマどこさいる?

まだビジター席でいるの?」





また一つかっこよくなった瑠香ちゃん。

私たちの遠い存在になったとばっかり思っていたけど、本当はものすごく身近な場所で私たちを守ってくれているヒーローなんだよね。

ずっと尊敬しているって言いたいけど、きっとそんなこと言ったらびっくりしちゃうかな。






「おかえりマイヒーロー」


「何か言った、えみりちゃん」


「なんでもないよ!」


「ねぇみんな…お腹すいてない?

なんだか…盛り上がってみたくない?」






お腹すいてない…空いてるに決まっているわ。

ずっとここの敷地中、ソースの匂いやかあ揚げの揚げる音に砂糖を溶かした様な幸せな感覚。

おまけにキンキンに冷えたジュースが売ってあるじゃない!

新聞部のみんなも麦田先生も紗香氏だってみんな戦闘態勢だよ?

わかって言ってるよね、瑠香氏?

お兄さんも、ニヤリと笑っているからきっと私たちの意図を汲み取ってくれているんだ…。

しかも検閲や模擬戦闘が終わった2時半くらいから練りライブやるって看板に書いてるのみたよ?

瑠香ちゃんがドラム叩くの知ってるんだから。

行こうよ、みんなぁ!






「みんなの意思は汲み取りました

Take your marks set……go!!!』





私たちの足は、庁舎を駆け下り少し離れたところにある露店に向かっていた幾多もの敵を薙ぎ払い試練を乗り越え、自衛官顔負けの走力を持って食い倒れを敢行したのだ。

焼きそば、鳥の串焼き、綿飴、冷え冷えのコーラ、熱々のうどん。

定価全て三百円から五百円で収まる。

みんなの赴くままその足は、欲望の露店に吸い込まれた。

お腹いっぱいにソースの旨味やあふれる肉汁、とろける砂糖を食らった。

全てはここに捧げるために…!




『練りライブにようこそ…

今年、野外フェスに外れた同志達よ…盛り上がっていきますぞぉぉいくぜぇぇぇぇえ!

あと自衛隊に入ってぇ!』




ボーカルは田中3佐さん、ギターは村上さん、ベースは飯島さん、ドラムは我らが瑠香ちゃん。

田中3佐さんの最後の切実な叫びを聞いたけど、この日のライブは野外フェスに行けなかった同志達が盛り上がり、感化された自衛官達が盛り上がり、練りライブを楽しみにしていた同志達が盛り上がったために警備の人が来ました。

おまけに飛び入り参加で瑠香ちゃんのお父さんが来て歌っていました。




「レンジャーさん…レンジャーさんだ」


「麦田先生どうかしたの?」


「牧野さん…昔助けてもらったことがある人にそっくりでね」


「その事なら私、財前三曹に任せてください」




歌い終わって逃げる瑠香ちゃんのお父さんを、呼んできてくれて麦田先生と話をしていた。

本当にレンジャーさんだったらしくて、すごく先生喜んでいたし瑠香ちゃんのお父さんも涙浮かべて笑っていた。

どんな話をしたのかは、また今度聞いてみよう。

水刺すわけにはいかないもの、それに今は練りライブに全力出さなきゃ!








( 同時刻 練馬駐屯地の外れ 喫煙所 )




『ったく、お嬢はとんでもねぇ人間になっちまったもんだ

父親も兄貴も挺進兵、自分も挺進兵ってかぁ!

困っちまうよ、田中正明工兵大尉は!

建御雷神の名を借りた兵隊の本尊やって80余年

こんなこたぁねぇ…おん?』





なんだ…とんでもねぇ気配が来やがる、人とか幽霊とかそんな類じゃねぇ。

とんでもねぇ恨み憎しみ、それと何かを奪ってやるという執念というか。

こいつは間違いねぇ、あの野郎だ。

何食わぬ顔してやがらぁ、前まで可愛げが有ったってのにこれじゃまるで…もののけだなぁ。

うまそうにタバコなんぞ吸いやがって、その前に本性を出したらどうだ?








『…っふぅぅぅ、なんだ先客がいたのか』


『これはこれは挺進兵さん

なんだ練馬(ここ)まで来て見物かい?

んなぁにお嬢を見張るなよ、びびっちまうだろうが

てめぇ、前にあった時よりも化け物になったな』


『バケモノはお互い様であります

変わったタバコの匂いだなぁ、嫌いじゃない

そうだ…田中少佐に伝えてください大尉殿

あの子の命は…我ら義烈が貰い受けると』


『義烈ねぇ…そいつは義烈に失礼だろう?

てめぇが消える前に俺と喧嘩しろって言っても聞かねぇな

部が悪いってなぁこの事、お前の後ろに隠れている味方達をここで呼んでみろ

返り討ちに合わせ…なるほどそういう事』


『これは、我らからの宣戦布告

その時まで楽しみにしていろ…くふふふ』


『っふん、俺の弟達をみくびるなよ

クソガキって消えやがった、餞別にタバコ置いて行きやがった

おいおい朝日を置いていくって…どうせならメビウスにしろよ

どうやら次の喧嘩相手は、身内ったぁねぇ

ゲン…こいつは戦争になるぞ、どうする?』

今年は色々とあってフェスであったり、自衛隊の記念式典や祭なんかも軒並み中止になっています。

せめてこの世界では、式典とかやって欲しいなぁと思い書きました。


やっぱり不穏なままです

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