10-6 空挺徽章の授与だったのに…
おっ久しぶりです!
色々と立て込んでいて更新が遅くなりましたが復活!
神様…いや忍さんを蹴飛ばして雷を食わせ、1日経ったけど何だか心が晴れなかった。
尊敬というか、私のことをいつも見守ってくれる存在。
しかも亡くなったお母さんのことを知っているというから、何かすごく自分と縁のある人だと思っていたんだ。
だから尚更蹴っ飛ばして、雷撃くらわせた自分のことがどこか許せない。
「お前は何も、気にすることなんてないんだからな」
って助教や騒ぎを聞きつけた男性陣から言われたけど、なんだかなぁきちんと謝りたいんだよ。
もうすぐ空挺徽章の授与式が行われる。
紺色のブレザーにスカートにこれでもかってくらいアイロンしたし、黒いパンプスにはこれでもかってくらい磨いたんだけどなぁ。
いつもみたいにビシッとした感じというか、こういい緊張感を持てていないっていうか。
「そんなにナーバスになることはないんじゃないか?
俺だったら、気にしないでって言うけどね」
「伊東三曹…おはようございます」
「おはよう…やっぱり引きずっちゃうか」
「レンジャァ…」
「そう…かぁ」
それ以前からずっと頭の中でノイズが流れている。
どこかで聞いたことのある声と、もう一個は機械音声みたいな翼者の声。
…この声まさか、いやそんなはずはないけどなぁ。
どこか枯れた声だけど、優しくて歳を追うことによって精錬された感じに何よりちっちゃい頃に何度もその声を聞いてあやされた感じ。
「財前…どうしたんだ?
さっきから顔が引き攣ってきているぞ?」
「どしたば…財前?
伊東三曹、財前ばどうされたんですか?」
「さっきからずっと…顔を引き攣りながら突っ立っているんだよ
どうしたって言ってもなにも反応しないんだ」
「来る」
何がくるかわからない、でも何かとてつもないものが来るのはわかっていた。
いつの間にかその声がする方へと私の足は加速していく。
普段履き慣れないパンプスが足の甲に食い込んで痛いとかそんなことゆう暇なんて私にはない!
間違いなくこの声の主はここに来る。
誰でもいいからと助けを求めているんだ!
待機場所の庁舎から私はグラウンドに走っていった。
誰もいないだだっ広いグラウンドを目指して走る!
靴擦れの痛みや、スカートの裏地がまとわりついてくる感覚、何より制服の稼働範囲の低さなんて今は関係ない。
ふたつの声のする方に行かなきゃ!
「うっ…そ…だろ?」
一体どうなっているんだ。
痩せた高齢男性らしき人がグラウンドで倒れてる?
しかも翼者が群がって…これじゃあ弱った獲物を突いて食べようとするカラスの群れじゃねぇかよ。
助けなきゃ…助けなきゃ…助けなきゃァァァァァァァァァァァァァ!!!
「己がァァァ!!!
その人からどけじゃァァァ!!!」
もっと前へ…もっと前へ…制服なんて関係ない。
この人が助けられるならもうどうだっていい。
視界が蒼いけどそんなこともうどうだっていい。
あぁ…体を丸めて頭を屈めてるから、守らなきゃ…守らなきゃ。
この人の体に覆い被さったのはいいけど何がある?
肉の壁になるのも仲間も待つまでには意味がない。
どうすれば、いいんだべ?
どうすればいい!
くっそ、背中に激痛が走り出した!
斬られてる感じがする!
どうすれば…!
『神前…お前の道を迷わずに進めよ」
何でこんな時に練馬の沖田専任助教が出てくるんだよ!
走馬灯か何かなのか…それとも!?
何でもいい沖田二曹、私はどうすればいいかわからないです。
沖田二曹助けてください…沖田専任助教は施設科だった。
施設科といえば陣地構築や地雷埋設と撤去…。
「沖田…二曹…見ていてください!
施設科ぁ…大掩体と地雷爆破ァァ!?」
一瞬視界が真っ暗位になって気がつけば轟音と一緒にあたりに岩と私の放った雷が空間を支配していた。
周りにたかっていた4、5匹の翼者たちは地面に突っ伏している。
私の体には石や砂がまばらについていると行くとは…つまりどういうことだ?
耳鳴りがすごい…爆破の時に耳栓の代わりになるようなものをつけてなかったから鼓膜が傷ついたかな?
そんなことよりこの人の安否を!
「大丈夫ですか…ここは陸自の習志野駐屯地です
私の声が聞こえます…か…?」
「あぁぁ…助かった、ありがと…
瑠香…ちゃん…なのか
どうして…何台その格好は?
ここは桐谷病院じゃないのか!?」
「おじいちゃん…どうして…」
「松造さん、どうしてここに!」
「空挺団長…この人…私の!」
「知っているとも…今日の授与式は中止だ!
ここにいる皆に伝えろ、翼者が襲撃してきた
衛生員をよんでこい!
被害者は神前松造さん…瑠香ちゃんのお爺さまに当たる方だ
抵抗していようだな、暴れ回わるうちに翼者に連れてこられたか…
翼者達が砂塵になって消えていく…
倒したというふうに見ていいな」
衛生員の担架に運ばれておじいちゃんは、そのまま衛生隊庁舎に運び込まれていった。
私の制服は翼者の長い鉤爪に裂かれてビリビリになってしまったし、気が付かないうちにひっかかれていたみたいだ。
未だに細かい雷が空間を漂っているのはまずいな。
グラウンドの端になにか大勢いるような……東田三曹に村田三曹…みんないたのか。
私がこんな力を持ってるってバレた。
もしかしたら、忌み嫌われるんじゃ?
「見てください学長…財前が出した雷みたいなの集めるでしょ?」
「おう…」
「腰に当てると…電気マッサージィィ
じょ…じょ…じょーじぃ」
「俺もやってみよう、肩こり酷いんだよなぁ
集めたやつを肩に乗せると…じょじょ…じょうじぃ
みんなやれ、飛ぶぞ!」
ええええええええええええええええええええ!!!!
みんな何やってんだよ!
本当に集め始めて…ってなんでじょうじぃって言ってるんだよ!
Gか、みんな私の雷浴びたらGになるのかよ!
おいおいおい怒られるぞ、色んなところから怒られるぞ。
教官達も何や…もう嫌だ、こんな第一空挺団は嫌だよ。
何でみんな…もう帰りたい、練馬に返してください!
『とんでもないことになったねぇ
せっかくの空挺徽章の授与式だったと言うのに
俺としたことが、みんなのために紅白饅頭作ってきたのになぁ
あっニャンコには苺大福、チョコ餡仕立て作ってきたよ!』
「ガミザマァァァ
わたじぃ…わだじぃぃぃ」
『いい奴らじゃないか…ニャンコのことをきちんと理解していると思うよ
俺とは違う…ニャンコは忌み嫌われてなんかいない
練馬の時と一緒、みんなに愛されているんだ
誇りに思いなさい』
「でも…でもぉ!」
『泣くのはおよし…いや、泣いていいよ
おかしいなぁ、俺の目であの辺に範○刃○とか愚○独○とか裂○○とか…いちゃいけない存在がゴロゴロいるな
あれだ…板○○○先生は空挺隊員だったからほら
その影響が少なからず、雷に打たれた事で繁栄したんだよ
畑口さんとか秋葉さんとか固まってるじゃん』
「あの…サードインパクト起こしてくる」
『アナザー起こしてどうぞ
その前に…あいつ止めてからの方がいいな』
わかっている、一度の攻撃でやられるわけがない。
翼者達が砂塵になったのは、一つに合体して強化して襲おうとするってことなんだろ?
おじいちゃんがボロボロになるまで抵抗したんだ。
この敵…孫が手厚くお礼しないでどうする?
バサバサとはためく音がうるさいな。
逃げる気なら、私の雷で!
「ごめん財前、俺たちで追い落としたぞ
みんなで刃○モードになってチートできるんじゃって思ったら出来ちゃった」
奥田三曹の声で、私の中の怒りはすんっと消えていった。
消えたと言うより、なんかうん。
それとさ、みんな何で烈○○みたいに構えてるの?
空間に向かってパンチでもしてそれで追い落とした?
どちらかと言うとこれ…身勝手の○○かな?
えっ何、私は一向に構わんとか言った?
空挺団長の方を見ても顔によくやったとしか書いてないし、これ私の雷でみんなチートスキル解放したの?
隣で呆然と忍さんが突っ立ってるし、空挺団って基礎降下課程を終業したらみんな範○刃○みたいになれるの?
なんかさっきまで翼者のことを倒さなきゃって思ってたけど、今度は翼者が可哀想になってきたんだが…。
「皆よくやった…今から30分後に空挺徽章の授与式を行う!
瑠香ちゃんは…制服を着替えてこようか」
「…了」
結局やるのかよ?!
って思いながら倒れた翼者の方に目線を向ける。
砂塵のように消えていく翼者らしきもの。
ふわふわと空間に溶けていき、最後は何事もない青い空が広がっているだけだ。
背中の激痛がもう消えてもうどうでもよくなってきたよ。
その後の式典のことは覚えていない。
予備の制服に着替えて体育館に行ったのは覚えてるけどバッチを制服の胸ポケットにつけておいた銀色の留め具につけてもらったのは覚えてる。
その後何したか覚えていないんだ。
誰かお願いだから助けてください。
『まだ終わってなどいない
…あいつらはまた必ずここにくる
今回の撃退は偶然の産物にしか過ぎないんだ
瑠香、本当の敵はお前の身内にいるんだよ
遠ざけるべきはそいつなんだ
田中少佐も白石少尉も、練馬や習志野にいるある程度の人間は気が付いているはずだ
その前に俺の手であいつを殺しておくべきか…』
空挺徽章の授与式の際に襲撃というか、連れ去られた瑠香のおじいちゃんを救出?しました。
みんなが雷浴びてとんでもモードに突入したので呆然としたと思います。
さて最後に空挺の神様こと忍さんが言った意味とはなんだったのでしょう?




