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10-5 明かされたこと

もう気がつけば八月

オリンピックの夏になりました!




「すっごい広いなぁ、初めてきたぞ空挺館」


「感心してる場合じゃねぇ学生長!

こいつら統率しろ、じゃねぇと遠足みたいになるだろうが!

仕事だからなお前ら!」



山籠りを終えて私たちは晴れて空挺隊員へと進化した。

空挺徽章の授与式…つまり正式に空挺隊員になるべくその証を受け取る儀式があるんだけど、その前に歴史を知ろうということで史料館である空挺館に来ている。

学生長が言うのも無理もない。

明治時代くらいに建てられた建物をそのまま空挺館に改造してるのだから。

何が展示されてるのかというと…。




「この服…この前奥田三曹の前に出た神様と一緒だな」


「ひっ!

…なんだよ、脅かさないでください副学長!」



操縦法訓練の時に、私に突っかかってした奥田三曹がびびるのもわからないわけじゃない。

ここに置いてあるのは空の神様こと忍さんが現役バリバリの時から今に至るまでの資料を置いてあるのだ。

ショーケースに置いてある、当時の空挺降下で身につけていた服や落下傘もここには所狭しと並んでいるのです。

マネキンに着せてるんだけどね。




「はぇ〜、たまげたなぁ!」


「だから財前、○夢を出す…空挺の神様?!」


「ふぁっ!

くぅぅぅぅぅぅぅぅん」


『やぁ有川悟くん、訓練お疲れ様

ところでニャンコは何を…大丈夫?

顔面蒼白じゃないか、衛生呼んだほうがいい?』


「すいません、月まで魂を飛ばしてました」


「『 んな、無茶苦茶だなぁ 』」





私が有川士長に○夢厨であることが前々からバレていたのでもう止めません。

なんせ彼も同じ世界を生きていますから。

というかこの降下課程の4分の3は○夢知ってるので、みんなと何故か仲良くなれました。

そんな事より、私の心臓が止まりそうになったのはいきなりガラスケースの横から貴方が出てくるのが悪いのですよ。

じゃけん悔い改めましょうね〜。




「…そこにいたんだな、みんな

財前・有川・加藤…あとは村田三曹はこの場に残っておけってさ

助教達から重大発表があるんだとよ

村田三曹…もいた」


「神様の後ろに隠れてました、村田三曹です

探しにしてくれてありがとうな轟」


「見つかって良かったです」





加藤士長を追いかけて、苦笑いを浮かべてどこからか轟士長もやってきた。

そして神様が妨げになって村田三曹が主張しようともできなかったらしい。

じゃけん悔い改めましょうねぇ〜。




「お前達ここにいた…またあんたか空挺の神様

財前にひっついて行こうとするな

財前もセク○ラで訴えていいぞ」



バツの悪そうな顔をしながらやってきたのは大林教官とその子分の小島助教とその他多くの助教達。

私たち以外は先に隊舎の方に戻ったんだろう。

外の賑やかな雰囲気が全く感じられない。

持って100メートル先くらいにいるのはなんとなくわかるけどね。

シーンと静まり返った空挺館だけがここにあるって言うように感じてやまない。






『……シャァー!!』


「威嚇しないでください空挺の神様

さてお前達に残ってもらったのには理由がある

村田…なんだと思う?」




村田三曹の頭の上にはハテナマークがたくさん浮かんでいるし、他のみんなも私もそうだけど理由がわからない。

この5人で何かバカをやってしまったと言うふうには思えないし、かと言って目立ったことをやったと言うようには思わないんだけどな。

だけど村田三曹は、何かに気がついたのかな?

あって言う声を出して、そのまま固まってしまったのだ。

その声を聞いた途端に小島助教はやれやれと言いたげに不敵に笑っている。







「村田は気がついたようだな

お前達…この空挺団における空挺降下の課程

基礎降下がベースとなっているのは知っているだろう?

お前達はその先へ行くことを許されたんだ

誇りに思えばいい。

選ばれし一握りの英雄への道、凍てつく空のさらにその凶暴なまでの理不尽

おめでとうFree fall savior’s諸君よ!」



空挺隊員のうちの一握りの存在。

精鋭の中の精鋭と言われる自由降下を許されたもの。

大林教官のつけている空挺徽章のパラシュートの上にFFと書かれたマークがある。

お父さんや実はお兄ちゃんも同じワッペンを迷彩服につけていたと言うことは、この課程をクリアしたと言う事なんだな。

自由降下を許されたもの…だからフリーフォールセイバーなのか。

セイバーってそう言う意味だったかな?





「発表は以上だ…帰っていいが、財前は残れ!

お前には別件で用事があるからな」


「了!」



みんなの可哀想な子オーラを浴びています、財前瑠香16歳…もうすぐ17歳。

ご愁傷様と顔にデカデカと書いてあるので、私はとっても悲しい気持ちです。

…そういえばなんでこんなに助教達が残っているんだろ?

発表するくらいなら一人とか二人とかで十分なはずなのに、なんでこんな大団円なんだろう?




「ふぅ…みんな行ったようだな

空挺団長…気配を消さなくても大丈夫です」


「ありがとう桂助教…さて財前瑠香一等陸士

どうして君だけがここに残されたのか、そして助教達が残っているかわかるかな?」


「いえ…わからないです」



どこに隠れていたのか定かではないけど、私の4メートル手前に坂口空挺団長がいらっしゃった。

こうやってじっくりと空挺団長の事を見るのは、初めてだし近づけば殺されるようなそんは感覚すらある。

もうすでに空挺団長の射程圏内には入っているんだ。

一瞬構えそうになったけど、おこられるな。




「怖がらなくて大丈夫だよ

本題に入ろうか…空の子よ」


「なんでその事を!」


「やっぱり、空の子の事を知っているんだね

ここに住まうと言う神にいろいろと教えてもらったんだろう

着いてきなさい、見せたいものがある」




柔かに微笑む空挺団長の背を負うように私達は、この建物の展示品置き場らしい部屋に案内される。

更にその先の普段は誰も立ち入らない部屋の前に通され、小島助教はその部屋の鍵を外し電気のスイッチを入れた。

ギィと開いた扉の先には空挺館内にある展示品とは違い、生きているとでもいいたそうに書物や軍服に軍用品が並んでいた。

私の目の前にある壁には、国旗とそれをぐるりと囲むように文字のようなものが書かれている。

所々に黒いシミがあるのは…え?



「ここにあるのはね、義烈空挺隊のあるチームの決起で使われた品々

このチームのある人物がと言うよりも、チーム全員で我々の初代団長に当たる衣笠殿にこの伝説と品を置いて戦ったのだよ

…どうやらお出ましのようだね」


「忍…さん…」



白地にくすんだ緑色でマダラ模様の迷彩服に茶色い革靴を履いて部屋の真ん中で怒っている神様…忍さんの顔。

普段の落ち着いた様子なんて全く見えない。

でも彼の目は…怒っているなんて度を超えている。

明らかに憎悪に似た感情を坂口空挺団長や教官たちに向けているとしか言いようがない。

憎悪と殺気が混じった空気を当てられて、私はいつの間にか構えていた。

次の一歩を彼が踏み出せば、やられると感じたのだ。

…あれ、忍さんの胸の中に私の体が収まってる?

いつの間に部屋の真ん中にいたんだ?




『今はこの部屋の事を教えずともよかったろうに…

こんな対応を修はなんと言うかな?

可哀想な空の子ぞ、大人のいらぬ事のせいでまぁ不憫な

坂口殿…どうやら俺は貴殿をみくびっていたようでありまするな

大事な空の子に何をしようとしたのか…教えてくださいますよね?』



「空の神…いや空挺の神

我々第一空挺団の祖と言われる、挺進隊(あなたたちの事は尊敬に値します

しかし…もう二十年以上も前から貴方のみならず、神と言われし人たちはそこにいる空の子の母親に過剰に接触していたようですね

何が目的ですか、答えてもらいますよ!」


『ほぉう、俺の質問に対して質問で返すか…

血の気の多い少将だとこだ…だが教えるわけには行きませぬ

まずはこちらの質問に答えてからにしてくださいな』



「桂助教…秋葉助教…いえ皆さん

その殺気を一度、消してください

神の逆鱗に私たちは今触れたのです

過剰な血の気は良くないです」




ふぅとため息をつく団長の吐息が聞こえる。

でも教官たちは、ポケットとかに入れている小型のナイフとかをいつでも出せるようにしている感じだ。

忍さんも私を抱きしめる力が、強くなっているような気がするしってこれもうわっかんねぇなぁ!



「彼女の父上に頼まれたのですよ

これ以上貴方たちに、近づけさせないためにも

瑠香ちゃんは何も知らないから、あえて話すよ

瑠香ちゃんのお母さんが亡くなられたあの日、翼者とその上位組織である光の楽園の活発化を知った瑠香のお父さんは、修君と瑠香ちゃんを危険性の少ないお婆様の家に預けた。

それはもう一つ、今後君たち2人をこの習志野駐屯地に近づけさせないためでもあった

その理由こそが」



『この子が空の子であるとあの馬鹿野郎はわかっていたのか

それで近づけまいとした?

馬鹿馬鹿しいな…首席で防大も候補生学校も幹部も…とまぁいろいろ出たと聞いたが馬鹿野郎な奴だ』



「お父さんが…そんな風に…考えていたの?」





「そうだよ瑠香ちゃん

空の子の伝説…何処からか闇が現れ、この地を無に返す

兵を上げ戦うがその兵たちはやられるが、蒼き眼を持ち蒼き雷を振るう空の子が現れ、闇を払い平穏をもたらす

その青い目と雷…修君は習志野に来てその青い目のみを開眼していた

そして瑠香ちゃんは、練馬で両方を体得していた

だからこそ、レンジャー課程の時に瑠香ちゃんに辞めさせるようと圧をかけていたんだ

でも君がその圧も何もかもを跳ね除けレンジャーになった」



「お父さん…ごめん…私はその思いを」


『汲み取らなくていいさ

どちみちこの子が空の子である事は、間違い用のない事実だ

どれほど妨げられようとも…この子の未来は覆らぬことぞ

お前達には邪魔させないさ…この子の力を俺は完全に

ぐぅあ!』



咄嗟に私は神様のお腹を金的蹴り上げた後に正面蹴りしてた。

訳がわかっていないけどそんな事よりも今は動きを封じなきゃ!

何かないか…何か…これや!

考えていても仕方がない、レンジャーに必要なのはダブルタスクと…ぶっつけ本番でのやる気!




「一か八か…通信科…回路遮断!」



私の手中にいつの間にか装填されていた青い雷は音を立てながら小さな針になって神様の体に降り注いだ。

思ったところに投げたつもりだったけど、ぶっつけ本番はあんまりダメだったな。

もう少し練度上げないときついか!?



『ニャンコ…何をやってるんだ

俺を蹴り飛ばすだなんて、そんな風に教えた事はないのになぁ

せっかくの迷彩が…体が…動かないだと?』


「うまくいった…よかったぁ」



忍さんの関節や首には青い雷の針が刺さっていて、神経の動きを阻害させる。

神経は電気信号と同じ、通信科の機器のケーブルも電気信号を介して作用する。

それをもじってこの前から作っていた技。

名前はダサいけど、通信科・回路遮断。

うまくい…ってないか。



『ニャンコ…技の方向性はいいがまだ足りないな

要演練ということになるね

そして坂口団長

俺達を怒らせたんだ、そのツケは何かしらのことで払ってもらう

覚えていろ』




そう言って彼は…いや何か大勢の気配はすぅっと消えていった。

お父さんが私を翼者とかわけわかんないやつにも、忍さん達から避けようとしていたのは知らなかった。

俺たちって言葉の意味…考えるだけでゾッとする。

…あっ私、雷使ってしまった。

助教達は…どうも思ってないみたいですね。






「財前…帰ろうか

まさか神様は1人だけじゃなかったんだね

秋葉助教はさ、なんだか嫌な予感がする

何かあったらみんなに言うんだよ」


「しかし驚いたね

畑口が候補生の頃は穏やかな感じだったのに

気をつけなよ財前」


「はい…」

Free Fall savior’s

つまり自由降下法を許された人間達のことなんです

瑠香は選ばれたことになります。


瑠香が、空の子の理由

いずれ判明しますのでお願いします

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