10-2 ダイブ!
お久しぶりです
なんとかやっていけてます
またぼちぼち投稿していきます
「…なんだか空間が、狭い様な気がする
まぁチヌークだから仕方がないか…なまらむさい」
「んだな、こんなにせめぇとは思わなんだが
こったに窮屈だと感じなかったじゃぁ」
「背負う主傘が圧迫感を生んでるんだろうなぁ
そういえば財前と加藤は、東北の生まれなのか?」
「「んなことないべ、轟士長…ん?」」
今日の降下訓練は回転翼機つまり、ヘリコプターからの空挺降下になる。
今乗っているのはC Hー47。
陸自やその他の軍隊ではチヌーク、マニアの人にはカエルとか言われてる。
機体の後ろから見たエンジンとお尻の開閉ドア部分がカエルの顔に見えるからカエルって言われてるらしい。
カエルゲコゲコ。
「お前らよかったな、今から池に着水してもらうからな
暑かったよな?
暑いときは涼むのが一番最高だろ?」
桂助教が不敵に笑っているのを覚えている。
今日の着地地点は地面じゃなくて、演習場から少し離れているとてつもなくおっきい池で名前は忘れた。
降下する地点によって装備品は少し変わる。
今回は着水すると同時に浮き輪が膨らんで落下傘を引きずりながら泳いで陸地まで行くと言ういじめ。
楽しいね…いや、楽しくないね!
気温が暑くなってきたから、強制的かつ物理的に涼しんでもらおうと今回の空挺降下を選んだのだ。
「池が近くなってきた…雨降ってる」
この時みんなが察してしまった。
決して暑くなく、むしろ寒さが体を襲ってくるのだと。
いくら暑い夏が近くなってきているとはいえ、雨が降れば気温も下がる。
気温が下がれば水温も冷たい方に下降する。
強いて言うなら風邪ひいちゃう。
クソ最悪なパターンですがクォレハ?
『降下6分前ー!』
(あっ最悪だ、あのこのまま飛行機に…だめだよね!)
『降下準備、カラビナ掛け、装具点検!』
「カラビナよし、開傘帯よし!」
(やばいやばいやばい、寒い寒い!)
『降下1分前、ドア開け、スタンバイ!』
(これは、終わったわ)
降下地点の目標物、パイロット視認。
風は本機の正面から微風程度。
コスモ1番機ぃ、コースヨシ・コースヨシ。
よぉーい、よぉーい、よぉーい。
降下・降下・降下!!!
「降下ァ!」
くそ過保護陸将、風邪ひいてしまえー!
「…あいつとんでもない暴言吐いてったな
逆恨みがすごいと思わないか、有川?」
「飛んでいいですか、俺も?」
「行ってこい有川、降下ァ!」
肉を潰すハーネスの感触、骨を軋ませる風圧。
体重が足りず少しずつ空の上へと引っ張られる感覚。
そして今1番痛いのがしとしと雨のくせに高速で落下するから顔面に雨水がぶつかってい!?!?!?!
苦しい、どうなってるんだ!?
目の前にあるのは水ってことはここは池か!
池にだいぶしたのか…目の前がなんだか暗く…。
頭の上に落下傘がぁぁぁぁ。
『沈んでんじゃねぇぞボケが
とっとと上がってきやがれこの財前!
親父さんに言いつけるぞぉ!』
「レンジャァァァァァァ!」
(同時刻 第一空挺団長事務室)
「久しぶりだな、坂口
俺のめんこい娘が世話になってる」
「いえいえ、彼女も立派な挺進兵になりつつありますよ
全て彼女の努力の賜物です
ところで先輩、本当はこんなことをしに来たわけじゃないんでは?」
「バレていたか…俺が言いたいのは
空の子の伝説のことだ」
「やはり気になっていたのですか?
あの子が伝説の空の子である事を
自分の娘が、空の子であって欲しくないと
思っているのですね」
財前誠前空挺団長
「…あぁ」
このところずっと悪夢ばかり見ている。
気にしないように運動してみたり、コーヒーの摂取を1日10杯から6杯に押さえたりした。
最終手段として、陸別に帰ってせがれの修と山にこもったりした。
だが奴は俺の前に現れて、悪夢ばかり見せてくる。
第一師団が壊滅し、翼者やあの野郎が…司祭が練馬を制する夢。
いや違う、あれは…司祭ではない翼者が練馬を食い潰す夢。
その時には、その先頭を突っ走って斬り込んでいくのは間違いなく瑠香だ。
だがその武勇を無になるくらいに荒れ果てていた。
まるで伝説が起こり得る状況とばかり言いたい夢だ。
その時にあの男は必ず最後に現れ、最後にいずれ起こることだと言って消える。
なんだと言うのだ?
「先輩、我々の一部のみが知る伝説は本当なのでしょうか?
まるで誰かがこうなる事を知って警告としての伝説なのか」
「いや、いずれ起こる未来を予言したんだろう」
神は…最悪が起きる事を分かっていたんだよ。
「神様が…力尽きて真っ白になってる
はっきりわかんだね」
「財前、有川士長と約束してくれ
淫○をここで出すな」
「…以後気をつけます
有川士長、あの…ここにあるのはカチカチのパン
そして私の目の前の机にある美味しそうなチーズバーガーってもしかしてこれは」
「間違いなく、空挺の神が作り上げた叡智の結晶
そして全てを変えるために作られた、希望の槍と副産物である賢者の石
神は己を犠牲にして未来を作り変えようとした」
「そうか…神様は禁忌を犯して天に召されたのか」
あの空挺の神は紛い物の神であると財前誠はそう思うのだ。
あれは確かに神だ、我々にとってもな。
だがこれはあくまで推測だがあの男は、人ならざる者の力を生まれつきに持っていたのではないか?
未来を見る力を持つのか、それはわからないが。
戦争中に偶然身に付いてしまった能力なのか。
だが思うのだ、これ以上あの神とやらに娘たちを近づけるわけにはいかない。
空の子の伝説を聞けば誰だって、瑠香がその子だと口々に言うだろう。
あの青い目…俺の部下の田中1連隊長が本人から聞けば天輪の目というらしいな?
それに特有の青い雷もそうだ。
何よりの証拠がその二つだ。
「…あ、習志野にお父さんが来てる」
『それは良くないね、ニャンコ
頑張ってみんなで追い出すか、害悪熊』
「「復活した!」」
それに練馬にいた頃から空挺の神との接触があったのだ。
それに呼応してから、翼者とその上位組織の活動も活発化したのだ。
空挺館に神の残した予言と思わしき書物に物品があるのだ。
それを紐解かねば伝説の中身を知ることができないのだ。
我々の口伝えの伝説だけではダメなのだ。
この部屋に飾られている、かつて海軍と共闘したと言われるパレンバン空挺作戦時のこの油絵。
昔はあまり深く考えていなかったが、今ではこの絵が疎ましい。
あの神とやらがこの中に描かれているとすればなおさらか。
「我々の知る伝説の中身
何処からか闇が現れ、この地を無に返す
兵を上げ戦うがその兵たちはやられるが、蒼き眼を持ち蒼き雷を振るう空の子が現れ、闇を払い平穏をもたらすと」
「瑠香ちゃんの蒼い目
大林や小島からも聞いています
時より蒼い目を発現していると言う報告は」
「頼みがあるんだ坂口
もしこの課程が全て終わったら、空挺館にあるアレを瑠香に見せてあげて欲しい
これ以上空挺の神とやらの策略に娘を巻き込むわけにはいかない
だからこそ、わざと知らせて欲しいんだ」
「先輩の頼みとあらば…
ですが神とやらが黙っちゃいませんよ?」
「神など…所詮は人間が作り出した幻想に過ぎん
いくらでも叩き潰してくれる」
「おっかない先輩だなぁ
ところで見てますよ、ドアの向こうに2人と1柱」
わかっている、1人は空挺隊員の卵。
よほど優秀なのだろうな、その自信とやらが見受けられる。
1柱は言わずもがな、と言うやつか。
もう1人は…間違くるっちゃんだべ。
めんこいなぁもう!
「さてお暇するよ
他の空挺隊員たちの邪魔をするわけにはいかないからな
では後のことは頼んだ、坂口空挺団長」
「了解しました、財前第1師団長」
何も気にせず俺はドアを開け放った。
それが間違いだったのだ。
まさか聞き耳を立てているとは思っていなかった。
と言わせてほしい。
「ぐぅえぁ!」
「えっえっ」
ドアを開け放った瞬間に、るっちゃんの頭にぶつけてしまったのだ。
彼女の頭にぶつかった瞬間に、飛び上がって宙を舞い背中から着地したのだ。
それに付随にしてるっちゃんと同じ降下課程に来ていた士長にもぶつかってしまった。
まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい!
救護せねば、救護を!!
って空挺の神いたのか!?
それよりも!
「るっちゃぁぁぁぁぁん!!!!!!」
『…お前よくも、天誅!』
「やってしまったあ!」
空挺隊員になるべく行われている降下訓練にて池や海での着水も訓練の一環です。
ヒグマも娘が気になって見にきたようですね。
空の子の伝説とは一体?
用語説明
パレンバン空挺降下作戦
戦時中の旧陸・海軍の共同で行われた空挺降下作戦。
そこで活躍した挺進兵…今で言うところの空挺隊員たちをイラスト化したものが団長の執務室にあるとかないとか




