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9-4 初めての落下傘の前

いつのまにかゴールデンウィーク迎えてました。



(午前九時半 習志野駐屯地)




「ふっふふんふんふんふんふーん…

さてさて、今日はニャンコに甘い物を届けるとしよう

巷で噂のカヌレとやらだ、喜んでくれるかにゃぁ?」




午前中に着地法の試験が終わり、ご飯を食べた後の昼休み。

布団がひっぺ剥がされておらず今のところ何処とも荒らされていない事に、心底安心した日のこと。

駐屯地の中を歩いていたら、なぜかルンルン気分な空の神様がいました。

しかもなんかお菓子作ってます。

どことなくいい匂いがするのは知っていました。

駐屯地から香る甘いバニラの香りの正体はここからきています。

本来基地の中でお菓子作りというのはいけないのですが、神様は自由人なのでお菓子作っても問題ないんだと思います。






「ねぇ財前、空挺の神様ってあんなに自由人なの?」


「私も初めて知りました、秋葉三曹」


「2…4…9つも作ってどこに配る気かな?」


「本人に聞がないとわからないです畑口三曹」




ずっとニャンコニャンコと連呼してますが、無視しましょう。

ろくなことにならないからね。

自分で作ったのかわからないですけど、空挺徽章のプリントされた白いエプロンを身につけてご機嫌です。

やっぱり自分で作ったのかな?

それにしてもおかしくない?

なんでものに触れるの?

本人も"俺死んでるから"宣言をしていたのですが、物体に触れたりなんかしたりするんで生きてるのかな。



「みぃよ落下傘〜そっらにふぅ……にゃ…」


「「「……ぁ」」」


「にゃんこに見つかっちゃったね

wacのみんなに美味しいお裾分けだよ

訓練の後に食べてほしいにゃぁ」


「「「にゃん」」」



焼きたてのカヌレの甘い匂いが駐屯地の中に広がっています。

なお爆心地は教育大隊の給湯室になります。

呆然と眺めていると不意に大林3佐の気配がして振り返ればいました。



「…あんた、本当に空挺の神なのか?

それにしては、財前を甘やかしすぎじゃないか?」


「畑口さんも秋葉さんも瑠香も…女の子は甘やかして育てるくらいが丁度いいの!」



神様のとんでも発言を聞いたところで時刻は12時30分になりました。

次の訓練が始まるので神様のことを無視して準備を始めるために女性用に設けられた更衣室に戻りましょう。

秋葉三曹や畑口三曹と一緒に歩いているのですが、神様もついてこようとしているので大林3佐が止めました。

いくら神様といっても男は厳禁です。

この駐屯地のどこかにいる憲兵隊呼びますよ!

どら猫みたいに威嚇してますけどダメなものはダメ!





「何だろうね…娘に甘いお父さんみたいだね」


「本当に自由すぎるなぁ

私が見た時あんな感じではなかったんだけど」


(畑口三曹も秋葉三曹も、まとを得たツッコミ最高です)




なんて思いつつ必要な道具を持って、鉄帽も被って外に出ました。

この時期の日差しは少しずつ痛くなってきた気がしますが、練馬のみんなは今日も草刈りやってるのかな。

この前、室戸三曹からLIN○で





『田中3佐 草刈り 楽しい! これからも好き』





とかわけわかんない内容で送って来たし、ちゃっかり写真撮ってたし幹部が草刈りに持って草刈りするし。

二枚めに送られて来た写真には、小野士長の顔面ドアップ画像送られてくるしなにこれ?!

ちゃんと仕事しろコルァ!

隊舎の横に着くや否やそこに置かれていたのは、夢の中で見た全身ハーネスにリュックサックよりも大きな鞄らしきもの、それに小ぶりな胸につける鞄の様なものに大嫌いな背嚢。

銃把が折り曲げれる89式小銃と使い込まれた布製のケース。

…ってことはこれって?




「お前らひよこ共にやる義理はないが、あまり時間もないからな

今から装備品の名称や主な装備品の整理方法

そしてこれらの装具を身につけた上で、蹴り出しを行ってもらうぞ

より空挺隊員らしくなるってことだ」




小島一曹の足元に置かれている装具達。

これが全部空挺降下に必要な落下傘の備品。

全部の装具を身につければ百キロはいくって聞いたけど現実味を帯びて来たな。

お父さん達はこれを…すげぇ!





「ぞんざいに扱ってくれるなよ?

主傘や予備傘に使われている紐はデリケートだ

すぐに絡まったりでもしたら整備が大変なんだよ

切れたら…どうなるかわかっているな?」





つまり、主傘が開くときにパラシュートの紐が千切れればコントロールを失って地面と…。

点検する舞台もあるって言っていたけど、毎日丁寧に整備をしていても不足の事態がある。

扱ったことのない私たちが下手に触ると…と言うことか。

ちゃんと覚えていかないとな!




「…小島一曹…今いいですか?」


「ん…なんだ、桂助教?」


「今、財前の知り合いが来てるとのことなんですが…

場所が大会議室の方らしく」


「わかった

財前…今から俺と来い、お前にお客だとよ

桂と長船それに秋葉と畑口も悪いが続けてくれ」



小島一曹の不機嫌そうな声といつも以上に眉間の皺が怖いですとても。

陸士長の先輩で私のバディの有川さんが大丈夫か?なんて声をかけてくれますが呼ばれる怖さよりも小島一曹の気迫の方が怖いです!

何か私やったっけかなぁ…思い出せんな。




      (午後2時過ぎ 大会議室)



「…ごめんね神前さん」


「いがべ…問題ないよ桐生さん」


「いや本当にごめんね神前さん」


「…いいんです、あの…はい

とりあえず学校の命令なら甘んじて受け入れますので

大槻くんも心配しないでください」



「…本当に元気そうでよかった」


「まぁ相変わらずやってるべ

聞きたいんだけど、これって学校の新聞部のやつだよね?

顧問は…綾瀬先生か…」




まじかよ、何で目の前に桐生さんの大槻くんがいるんだ?

2人はうちの同級生で…確か新聞部の部員だった様な。

まじで聞いてないよ、めちゃくちゃ気まずいじゃん。

なんだよこれぇ?



「えっとね神前さん、これは学校の新聞部の活動でいろんな事にチャレンジしている人を追いかける企画でさ

今回は…そうなんだよね」


「大槻くん……おかのした」


「理解してくれてありがとう

じゃあ一通り聞いていくけどいいかな?」


「おけまる水産」




質問の内容はありきたりだ。

今どんな訓練をやっているのか?

そもそも空挺団とはなんなのか?

女性がなれるものなのか…などなど。

私が答えられる範囲で答えているつもりだけど、2人の頭には・・・!って言うのがたくさん飛んでいる。

みんなの知らない世界を私は体験しているんだと思えば納得はいく。



「どうして神前さんは空挺団を目指そうと思ったの?

なんと言うか…なかなかない選択だからさ」


「桐生さん…なんだろうな

いつからかなんで覚えてないんだ空挺団を目指す事

でもいつかお父さんと、お兄ちゃんと一緒に空飛びたいって思ってた

それに今は2人の背中を超えたいって

そったらいつの間にかここにいたんだべなぁ」


「今の目標はお父さんとお兄さんを超える事?」


「いや、私をここまで育ててくれた人達に感謝しつつその人たちの背中を追い越す事…かな」


「牧野さんが言ってる練馬駐屯地の人たち?」


「That’s Right!」


「素敵すぎ!」




なんで3人で笑いながらこの日の取材は終わりとのことだった。

もし学校内で評判があれば追いかけて取材に来るらしい。

まぁ教えられないところもあるけどね。

なによりも、えみりちゃんに紗香。

私は元気で空を飛べる様に訓練してるからね。

絶対に超えてやるから待っていろよ。

お父さん…お兄ちゃんいや、即応のみんな!

今回は落下傘の主要装具を勉強する前に友達が来てくれたっていう話です

まだまだ訓練は続きます

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