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9-0 空挺隊員へ

春になり始めました。

桜が咲いてきて、別れた出会いの季節になりましたね。

桜餅食べようぜ

「ねぇ起きて…瑠香」


ここはどこだ?



「ねぇ起きてよ、俺の可愛いニャンコ、」


誰の声だ…暖かい気がする。

とても優しい声だと思うんだけど思い出せないな。

…ここは、そうか私は山の中を歩いているんだ。

身体中にべったりと闇がまとわりついているし。

関節は軋み始めて、追い討ちをかけるように銃とか背嚢に入れた爆破薬が肩を抉っている。

私は山の中をずっとひとりで歩いていたんだ。

今まで訳のわからない夢の中にいたのか。



「そんなことないよ…ねぇ目を開けてごらん

ニャンコ、習志野印のちゅー○だよ、ちゅー○

こらこら、みんな食べたでしょ?

これはニャンコの分だよ」



「えっ…ここはどこだ?」




体を起こそうとしたけど、頭の鈍痛が響いて起こせない。

見える範囲で目線を動かせば草原の中にいて木の下で誰かの膝枕に寝ていた。

ふわりと風の中に香る淡い桜の花の匂い。

桜もあの世に咲いているもんなんだと思うといいな。

そしてちゅー○の匂いもするにゃぁ。




「にゃーん」


「にゃあ」


「猫様…お猫様の声が!」


「にゃーん」


「ゴロゴロゴロゴロ」


「あっがわいい!」


「くふふ、可愛いニャンコのかけら達がいっぱいだね

八割れに、黒に白、茶トラに灰色のトラ、サビにミケ

後は早々…とびきり可愛いのがいたよ

そうだろう瑠香」


「にゃぁーん

空の神様…に膝枕してもらってるのなんだか幸せだべ

…ねぇ神様、私は死んだの?

頭殴られて記憶がないんだ」


「…死なないよ、いや俺が死なせない

昔に真奈美と…君のお母さんと習志野で約束したんだ

俺が修と瑠香も何がなんでも守る

だから殺させない…」





何それって言おうとしたけど彼の目に映るのは、お母さんと約束したその時の決意の現れ。

神様の目も私と同じ少し緑色が映っているし、修お兄ちゃんみたいにグレーも見える。

とても綺麗な虹彩の色、見ていて落ち着くにゃぁ。

真面目な顔から優しい笑顔に戻ってる。

ん?




「ちょっとたんま!

佐伯さんや、リョウマって人はどうなったんだよ!

私…頭をふったかれて…その後どうなったんだよ!」


「そういうと思った、だから教えてあげるよニャンコ

あの後の全てを、君がまた空の子に近づいた事も」



「えっ…うわぉあ!」





気がつけば私は神様と一緒に闇が広がる空の何いた。

星は瞬き雲ひとつない暗く美しい東京の空をゆっくりと神様にお姫様抱っこをされたまま降りてゆく。

怖くて首元に両手をかけて耳を神様の胸元に近づける。

ドクンドクンと力強く鼓動を打つ音が聞こえて心地よい。



「さぁ着いたよ、これが事件の後の話」



「お父さん、お父ぅ…!」



『るかぁぁぁぁぁぁ!!

今助けてやる…死なせるものか…!!!

もう真奈美と同じような目に合わせてたまるかァァァ!』





半狂乱になりながらお父さんは私の頭から流れる血を必死に止血しようとしていた。

女の刑事さんが田嶋さんを拘束しているけど、狂ったように笑っているだけだ。

飯島三曹も駆けつけて、必死に私の救命を図っている。

ストレッチャーに乗せられた佐伯さんが泣き喚いて、過呼吸起こしてるけど私は微動だにしない。





『…あーぁ、マリア様死んじゃうね

かわいそうだね、カワイソウダネ』


『貴様は…翼者か!

やはりその男子の中に隠れていたか!』






別の救急車に乗せられた、リョウマはやっぱり翼者で間違いなかった。

救急車からドス黒い煙が立ち込め、救急隊の人が逃げようとして混乱している。

田中3佐達が交戦しようとしてるけど武器がなくてどうにもできないんだ。

私がもっとしっかりしていればこうなら無かったのに。

どうすればよかったんだよ。




『可哀想なマリア様のためにオイノリシナイトネ』


『逃げるなよ、色々と俺は…俺の可愛い部下の恨みを晴らさないと気がすまねぇんだよ!

こっちこい…殺してやる!』


『何もできない、白石検事サン

何もデキナイ陸自のみなさん

ジャアネ、じゃあね』



煙はやがて形を帯びて昔に見た、両方に黒い羽を持った首無しの化け物の翼者になった。

大きく翼をはためかせ、空に逃げようと動かし、嘲笑うかのように大きく空に舞い上がり旋回を始めた。

雄叫びを上げながら、佐藤士長と小野士長がその辺にある石ころを投げるけどかすりもしない。



『銃を…銃を撃てば間に合います』


『バカ言わないのよ…村上3曹!

ここには民間人がいるのよ、もう手を打てないわ』


『しかし向井一尉…クソォォオ!!』



『ジャアネみんな、バイバイ』




悔しさと怒りがこの場所に蠢いている。

室戸3曹が悔しそうに地面を何度も殴るけど、翼者はぐるぐると旋回速度を上げて、今にも遠くに向かおうとしている。

みんなの怒号が…見ていられない。

こんな事があってたまるか、私がしっかりしていればこんな結末にならなかったのに!



 

『待てよ…翼者この…

私は…玉ぁ張って生きてんだ、逃げんなクソが』





えっ今なんて…誰の声?

私…止血されて動けないはずの私が、気を失っていたはずなのにどうして!?

なんでゆっくり立ち上がってるの?

一体何がどうなって、起き上がったんだ。

目が…蒼く輝いて、青い雷を帯びている?

殴られて気絶していたはずなのに、私…なんかすげぇぇぇえ!!



「マリア…マリア、イキテル…生きてルゥぐぐ!!」


「命を…捨ててこそ。浮かぶ瀬もあらぁ…撃つ手し止まむってんだよ!」





発動…普通科ぁ軽機関銃ぁ!!





指鉄砲を空にいる翼者に向けた瞬間、身体中にまとっていた青い雷の質が変わった?

ものすごい体を何に対してかわからないけど、指鉄砲の体制で構えたまま固まっているけど…。

違う、固まってるんじゃなくてこれは帯電してるんだ!

軽機関銃ってことは弾数を稼ぐために、ものすごい時間帯電する必要があるんじゃ?

指先に雷が球体となって集まり始めている。




「食いやがれやぁぁぁ!!」



空気の弾く音、到底雷の力とは思えないほどの圧力。

その全てが指先に集まっていた雷の球体が、弾丸のように鋭く尖った弾丸状になって空に放たれる。

訓練の一環で打ったMINIMIのような重たい反動とは違う。

連発で撃ったMINIMIの肩にくる重さ以上の痛みが、今になってじんわりと右肩を痛めつけてくる。

軽機関銃よりも弾速よりも上、正確性はクソだけど羽を掠めている様はまるで



「どちらかと言うと、これは87AW

自走対空機関砲ってやつに似てるよね?」


「私…いつからこんなことを」


「知らず知らずのうちに覚えていたんだよ

今の兵器の動きやらを、知らずうちに覚えて土壇場で使った

すごいね…やっぱり瑠香は空の子だ」




ぎぃぃぃぃあぁぁぁぁぁ!!!





思い込んでいるうち翼者は雷撃によって地面に叩き落とされた。

警官隊が私の教室がある校舎の裏側…中庭のある方に走っている。

おいおいこれはとある何とかって奴じゃないよな?

えぐい能力(チカラ)持って生まれた記憶ないよ?!

…いや生まれ持ってしまったんだべな。

これが…これが空の子の力っていう奴なのか?

あれ?…元の綺麗な桜の木の下に戻ってきて、膝枕って高反発な膝枕だなぁおい。




「あの後はまた気絶したからここでおしまいだよ

ねぇ瑠香、この力が怖いって思ったかな?

確かに怖いと思ったかもしれない、でもこの力を平和のために使って欲しいんだ

瑠香の愛する人たちのために」


「えっ、どういうことですか?」


「そのままの意味だよ

俺はこの力を人を殺すために使い、過ちを犯し亡者に成り果てた

だから平和のためにいっぱい練習してこの力を使って欲しい

封印を解こう…さぁ可愛いニャンコのかけら達、帰る時間だよ…」




そう言うとお猫様達は、私と言う下僕の方に歩いて来て私の後頭部に入ってきた。

同時に体が重たくなってきたけど目が冴えて、手に力を加えたらぎゅう握る感覚もある。



「瑠香もみんなの元にお帰り、今度は習志野駐屯地で会おう

帰る前に擬似体験させてあげるよ」



「えっ…ここは、飛行機の中!?

私迷彩服着てるし…後ろの鞄みたいなのと前のポーチっぽいものってまさかこれ!」


「おめでとう我が愛おしき空の神兵の子よ

空を飛ぶ力を得て、凍てつく血の大地を踏み、理不尽な空を制してみろ未来の神兵よ

さぁ…飛んでみせろ!」



子供の頃から見ていた夢は、空挺団の事だったのか。

私が空挺団になる夢をずっと暗示していたんだな。

飛行機の轟音が鳴り響く中で、降下良しを示す青ランプが光りベルが鳴り響く。

勢いよく飛び出した私は、そのまま綺麗な朝日を背に目を覚まし始めた東京の街に降りていく。



「はっ! 

ここは市民病院で間違いなす?」



目を覚ました時には、病室に雑魚寝で寝るうちの中隊のみんなとお父さんがいる。

二つ並んだ椅子にはえみりちゃんと紗香がベットにもたれかかるように寝ているし、麦田先生もソファに座って寝ている。

よし…こうなったら起床ラッパ鳴らすべ!

なんて思っていたらみんな起きて飛びついてきたって重たいわ!!

あの後の話としては、佐伯さんはなんとか落ち着いているらしいけどリョウマって人は助からなかった。

原因を警察の人と富にぃが調べているそう。

私はと言うと、病院に担ぎ込まれて手術をしたけど血が足りずお兄ちゃんとお父さん、おばあちゃんの血が輸血されたそうだ。

それを聞いてか、練馬中の隊員が輸血用の血を差し出そうと病院に殺到したそう。




『うっつぁしぃ!

こごは病院だがら、静がにしらんしょ!

おめだぢ、早ぐ帰れ!』




っと3佐が病院の入り口前でみんなを怒ったけど止まる気配がなかったとかだけどさありがたい話だね。





 

 

(3日後   練馬駐屯地)







「うぅぅ、瑠香…瑠香ぁ行ぐな、行がねぇで」


「はい、行ってきます3佐」


「ほんまに空挺団を訴えたるわ、行かんといてやー!」


「訴えないで下さい、また帰ってきますから」


「どうしても…行くのか、ワレ?」


「わっワレ!? 飯島三曹、呉の方言があの

健太にぃ…注射器チラつかせるのやめて!」



「お願いもう少しいて欲しいわ

お母さんとして、一先輩としてまだ何も教えていないの」


「そんな事ないです、向井一尉」


「こうなったら、空挺団に乗り込むぞ

室戸は今から空挺団に乗り込むぞ!

手伝えよ、オノサト!」


「本当に行くだか?

小野にぃちゃんを置いて行くだか?」


「サトにぃちゃんを置いて行くだか?

いじめられたら空挺乗り込むぞ?」


「室戸3曹、小野士長、佐藤士長…みんな血の気凄スギィ!」


「みんな待ってください!

今生の別じゃないんですから…ねぇ行かないで?」


「千春ねぇまでそんなこと言う!

っていうか修お兄ちゃんもみんな…あの泣スギィ!!

わぁが悪者になってるよ!」




「「「「「「「「そうだよ」」」」」」」」」



「なんでぇぇぇえ!!!」



病院から釈放されたと同時に私に移動の事例が出てしまった。

空挺団に入団することが決まり、今日みんなとお別れになる。

お父さんはそのショックから執務室から出てこれず未だに泣きまくってると、天野駐屯地司令から聞いた。

そしてそんなお父さんからの一言は、



『とっても大好きなるっちゃんへ

いじめられたら連絡しなさい

すぐに突撃して団長を殺して、練馬に連れて帰るからね

いつでもお父さんは、るっちゃんの味方です

あそこにいる教官たちは俺がしばいた連中だから、いじめられそうになったらお父さんの名前を出してね

理不尽だらけで辛い時は、いつでも連絡するんだよ

頑張って空の神兵になってきてね

降下塔の下でお父さんは待っています』



正直ここまで過保護だと思わなかったぜぇ。

そんな所が嫌なんだぜぇ。

それをみんなの前で代読した田中3佐の引き攣った顔がなんとも言えない顔をしていたのは口が裂けても言えない。

それくらい愛しているんだよって言っていたけど気持ち悪いよね。

なんて思っていたらみんなから花束もらったり色紙をもらったり、揉みくちゃされたし。

正直行きたいけど…行きたくないけど行って成長した姿を見せたいな。

いや、成長した姿を見せるんだよ。




「二等陸士 神前瑠香

令和3年3月末、第一空挺団…第325期基本降下課程に行って参ります!

一年間お世話になりました!」


敬礼をして手を下すと同時に、みんなからの拍手と同時に嗚咽する声が止まらない。

色々とあったけどここにいれてよかった。

みんなが大好きだ…なんて言ってるけどこの後普通にご飯みんなで食べに行くんだよねぇ…草ぁ!















(ようやくだ…何十年と待ち望んだ夢が叶う)


(我らの宿願…愛おしや…あぁ我が子や)


(空の子の小さき片割れがこの地に来るか…)


(お前もよくあの衣笠少佐を出し抜いたものだな)


(衣笠少佐に架空の伝説を信じ込ませ、我らの宿願を後の未来に必ず宿すと作り込んだのだ)


(懸念すべきは田中源一郎少尉か…今ではあいつは少佐よ!)


(人斬り源一郎め…好々爺の仮面の裏は血と屍の製造機

あの男は強いぞ、川越よ

なんせ陸軍の中で群を抜いて剣に格闘に秀でている

だがここまでくれば、大義であるな!)



(だがあの若造は、我らの宿願を潰しかねない

陸軍が産んだ抜刀斎め…色々と勘づいているのだろうがよくぞやってくれた、川越忍

お前は良くぞ大義を果たしてくれた)


(まだ懸念すべき男がいるだろう

あの子の父親もそうだ…空の神兵の恥晒しだ

物の怪なんぞに下りおって)



(だがあの男も伝説を知っているのだ…

これは好都合ではないのか?

何も恐るることはない、これからが正念場であります!)


(あとは我らの元に着て川越軍曹の血を引く我らの子に力を与え本来の空の力を解き放ち、我らの宿願を叶えるのだ!)


(願わくば、恒久平和の礎となる子となってくれれば

この力をあの子に全て注ぐのだ

空の力を平和のために使ってもらうためにも)


(さぁ、迎え入れようぞ

小さき空の神兵の子を、我らの夢の子を)


「そうだ、これは我ら神兵の大義だ

嗚呼…ようやく俺たちの胸の中に入ってくれる

お帰り真白き薔薇の小さき神兵」



財前…瑠香、愛おしい俺の空の子。


駆け足すすめで書いてしまいました。

やり切ったぜ。

今までいた練馬の子ではなく習志野中になります。

学校どうするかとかはまた後日。

愛より青い青空にたちまち開く百千の真白さ薔薇の子になります。


次回もお願いします

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