8-3 二人の馴れ初め
久々に投稿します!
「ねぇお父さん…お母さんにどうやって告白したの?」
ブフォォォォォォ‼︎‼︎
ある冬晴れの日に私は聞いてやりました。
事の発端は私を執務室に呼び出したことから始まり…
『るっちゃん、一緒にコーヒー飲むべ?』
『師団長ダメです、今は課業中です
私的な接触は控えたいのですいません』
『…そうかダメか
…ところでるっちゃん、コーヒー飲むべ?』
『今の話聞いてたかー?
私的な接触やめようって言ったばっかだよな!?
あんた師団長だよな、自衛隊何年やってんだ!
ここで父親出さなくていいからね!
耳にくそがたまりすぎて人の話聞こえないか?!』
『……?
ツンデレのるっちゃんもめんこいべ
本当に猫みたいな可愛さ…こっちにおいでるっちゃん』
『ざけんなこの……あぁもう!
せばコーヒー飲むから早く執務室さ行ぐべ!』
『もぅ、本当にめんこい!』
と鼻の下を伸ばし切ったいつもの冷徹なあの人は何処にという言葉が似合う我が父、財前誠という北海道陸別町生まれの人間の皮を被った蝦夷羆に
こっちにおいでおいでと言われたのだ。
ここで断ると全てめんどくさいことになると確信し、誘われるがままやつの巣穴の中に潜り込んだのです。
これが悪かった。
この前の吹雪は春を迎えて福寿草でも咲いていると思っていたが、眼下に広がるのは春を知らない試される大地こと大北海道の大雪原が広がっていたのです。
田中3佐にこの事を報告しようものなら、羆vs日本兵の構図が成り立ち死闘になりかねたいと思いました。
『うまいべ? うまいだべ? うまいんだべなー』
執務室…いや巣穴に入って多分コーヒーらしいものを飲む我に向かって、馬鹿のひとつ覚えにうまいの3段活用をして私をいじめてくる父。
ようやく憲兵から親権について協議が終わって苗字も役所に届けて変更手続きまで取れたからか、いつも以上に父親面してきてます。
練馬駐屯地で自衛官でいる以上は変わらず母方の苗字のままですが。
そんな父親に聞いてやりました、2人の馴れ初めとやらを。
そしたら吹き出しました、汚いですね。
「こっ告白って、ド直球すぎるだろ!?」
「るっちゃん気になるなぁ?
パパとぉー、ママのぉー告白的なぁ?」
「それ、修君もぉー気になる的なぁ?」
「いつから修もいたんだべな!?
…2人に話すか、俺たちの馴れ初めを」
((えっ、急に始まったし))
(24年前 千葉県船橋市)
「なして、また病院なんぞに」
当時、訓練中に太ももに太い木の枝がぶっ刺さったまま歩いていたら炎症を起こしてその治療の経過観察にたまたま外部の病院に通っていた。
当時の俺は二等陸尉…若手幹部の走りがけ、まして空挺団に配置になってようやく落ち着いた頃だ。
怪我も治ったし別に経過観察なんてしてくてもいいのではと思っていたんだがな。
その日はすぐに駐屯地に戻らないといけず、ちょうど迷彩服を着て待合で待っていたんだ。
待合の先に長い廊下があって、医者に変に言い寄られている看護師が歩いてきてね。
他の看護師に助けを求めようとしても皆知らんぷりしていたから俺が止めに入ったんだ。
「何やってるんですか、彼女嫌がってるじゃないですか!」
止めにやってきた俺をみて、医者は明らかに嫌がったんだよ。
それにこいつは本当に医者かって思うくらい不潔な感じのやつでな、ずーっと汗をかいて息巻いていたんだよ。
冬場なのに何でそんなに汗かいてるんだって。
マジで気持ち悪かった。
「なんだね君、患者のくせに偉そうな態度だなぁ?
ここは私の病院だ、私が一番なんだぞ
部外者に口出しされたくないね!
……なんだ自衛隊か、人殺し集団のくせに病院に来るだなんて…」
話噛み合わないし、人殺しとか言ってくるしおまけに看護師さん泣きそうになってるのに腰から手を離そうとしないし流石にブチギレそうになったよ。
いや本気で俺キレたな。
目の前にいる看護師さんが可哀想でたまらなくなって
睨みはしなかったけどね、思いっきりぶち殺すぞって殺気を立てたわけよ。
俺の身長は185センチくらいだったからかな、余計に怖かっただろうな。
その医者の背は低いから余計に凄みがまして段々と顔から血の気が引いていったんだ。
「私のことを何と言ってもいいですが…看護師さんに不貞行為を行い他の患者さんがいる前で不快な対応を取るのはどういう了見ですか?」
「それは…だね…えっと」
「とりあえず、この人から離れてもらってもいいですかね?」
「……神前くん、は…話はまた今度にしよう……
それじゃあ……」
そう言って医者は逃げていってね。
看護師の人は膝が震えていて可哀想だったんだよ。
周りの看護師も事務員も誰一人として助けようとしないし、見て見ぬふりどころか陰で笑ってる人もいたからな。
本当に医療を行う場所なのかって思ってしまったんだ。
「あの…すいません、ありがとうございます」
「こちらこそすいません…自分も出しゃばりすぎました」
「では失礼し…ごめんなさい
…あの…私、ザイゼンさんを呼びにきたんです
診察室まで案内します」
「ありがとう…ございます」
ずっと下を向いていたから分からなかったけど、彼女の顔を見てドキーってなった。
色白で可憐で目は二重で大きく、唇はすっと綺麗で鼻小さいし…小顔…俺の理想の女性だった!!
それに少し目元がうるうるしているのがもう!
その人こそが、神前真奈美…二人の後の母となる女性になるのです!
『行った先の病院で理想の女性見つけるなんてやるな』
『それがお母さんと最初の出会いだったんだ』
『そういうことだ』
その病院には月に一度経過観察で行くことがその後もあってな。待合で待つ度にその看護師さんと話すようになって、仲良くなった頃にお互いの連絡先まで交換したんだよ。
それでお互いが休みの時は一緒に遊びに行ったりして、それはもう幸せで幸せで。
経過観察が終わって病院に行くことはなくなったけど、それでもその熱は冷めぬ事なくお付き合いしてね。
時々喧嘩もしたり、一回別れてより戻したり。
お互い気が強かったってのも悪かったんだ。
気が強くなけりゃ看護師や自衛官なんて務まらんだろ?
それでも俺の心は、真奈美以外見れなかった。
それは真奈美もそうだったんだ。
後訓練中に山に入った時は、電波が通じればうんこの報告もしたもんだ。
看護師目線だからかな、向こうから聞いてきたからな。
(うんこの報告かよ、でもお母さんならやりかね
……親父の仰角が上がり出した…キメェ)
(最初の出会い方は最悪だけど、段々とお互いの恋が育まれて…お兄ちゃんどこさ見…うわぁ…)
でも付き合って一年経つ頃に急に連絡が来なくなって心配したんだよ。
今まで連絡は繋がっていたし、手術が終われば連絡はくれたんだ。
嫌な予感がして、仕事が終わった後に探しに回った
んだ。
真奈美の実家や周辺とか、勤務先にいるんじゃないかと思って探しに行ったけど見つからなかった。
だめかと思った時だ、白い法衣の様なものを着た集団が病院の廊下を歩いているのを見た時まさかと思った。
病院の裏口からこっそり入って法衣の集団を追いかけていくと、そこにいたのは経過観察で見かけた医師や看護師。
寝台みたいな場所には患者が横たわっていたんだよ。
気がつきたくなかった、その法衣を着た看護師の中に真奈美が泣きながら突っ立っていた。
そしてもっと驚いたのは、真奈美を執拗に追いかけていた医者は院長で、しかも司祭様とか言われてたからな。
「ウソだろ…真奈美、何がどうなってるんだ
ここは普通の病院じゃなかったのか?」
そうやって独り言を言った瞬間、俺の視界は真っ暗になって次に目を覚ましたのは、鉄格子の牢屋の中だった。
その牢屋の中には真奈美も一緒にいたんだ。
今回から3話ほど過去に飛びます
このパートを書くのむずかったぞい




