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7-6 ピヨ助のこと

今回は動物の話です

自衛隊と動物は結構切り離せないものなのです。

警備犬とかそう言うね

ニワトリは…。

「コッコッコッコ」


「そうかー、さっきまで門番をしてたのか…

よく頑張ったね、特に不審者とかはいなかったか?」


「コッコッコッコ」


「いないな…お疲れ様、ゆっくり休んでいなさい」


「コッコッコッコ!」


「本当にいい子ですね、ピヨ助君」


「なかなか、この仕事も板についてきたみたいだな

千春よ、こいつは鶏と思えんだろう?

おっと…なるほどジジの膝の上がいいべ?」


「もふもふして暖かそう…

そういえば、なんでこの駐屯地にピヨ助が来たんですか?」





ある昼下がり執務室で、みんなとテレビを見ながら休憩している時。

ふと私、村上千春はピヨ助君のことが不思議に思いました。

駐屯地に生き物を持ち込むことは厳禁です。

ゴミ箱を荒らす、駐屯地中の至る所を糞だらけにしかねない。

その糞が異臭を放ち、近隣住民から批判が来るなど。

野良猫なら仕方がないとは言い切れないですが、ペットの持ち込みは厳禁と言うのが基本です。

でもうちにはピヨ助がいて、しかも第一師団も公認してるのです。






「ピヨ助って幸運の鶏って言われてんだ

俺も、こいつと最初に出会った場にいたからな」


「健太、お疲れ様ー

衛生隊から戻ってきたのね」


「書類とか終わって今帰ってきた

ピヨ助は相変わらず、3佐の膝の上が好きだな

あの頃に比べて、立派な鶏…いや営内班長になりましたね」


「もうすぐ一年は経つのか

瑠香は学校に行っていないが…皆に話そう

こいつが営内班長になった理由を」



それは、だいたい一年前。

翼者が強襲してくる1ヶ月も前の事だ。

駐屯地の正門前付近で事故があってな。

ピヨの他多くのヒヨコを積んだ軽トラックと、乗用車の正面衝突事故があった。

駐屯地の目の前ということもあって、儂らは出動したんだよ。

乗用車の運転手は無事、軽トラックの方は軽いかすり傷程度だった。

軽トラックは横転していてね…その衝撃でヒヨコたちは…。




「あの光景ですか

ほんまに、思い出しただけでも吐き気がしますね」


「そう言えば、あの場に宏人もいたか

凄惨だったな…儂も思い出しただけでなぁ」


「そんなに吐き気が催すほどだったんですか?」


「せやで室戸ぉ、あんなんもう見たないわ

前に豚インフル流行った時、災派でなぁ

そん時も耐えられへんかったけど、あれはベクトルがちゃう」


「俺も行きましたよ、1(いっちゅう)にいた時に起きた事故だったと思います」


「サトーのわたるも、あの事故現場にいったの?」


「あの時はホースで路面の汚れを流してたんですけど

羽とか…あとはいろいろ流れてきて…」


「室戸3曹、俺も3中で手伝いに行ってたっすよ

俺も片付けとかしたっすけど、流れてきた水が」


「小野のわったも?」


「はい、あの日は凄まじかったっすよ

汚水が真っ赤を通り越えて、ドス黒かったっす

気持ち悪くなって、しばらく飯食えなかったっす」


「嘘つけ、俺とあの後すし屋行ったろ!」


「わたる、やめるだに!

そこまでいう必要はねぇずら!」


「なんだよ、飯食ってんじゃねぇか!

…3佐、話の骨を折ってすいません

それでどうしてピヨは…」


「ふふ、いいべ…いいべ

そうだな、話を少し戻そうか…」






荷台の確認をしようと天幕覆いを外して、人がいないかと見に行ったんだ。

ガソリンが漏れていない事を確認して、突入したが足場を見た瞬間なぁ。

何か濡れた感触と、グヂャっという柔らかいものを踏んだ感覚、時折りパキパキっと割れる音というのが響いてな。

死体の上を歩いている嫌な感覚を、事故の衝撃で肉塊になったヒヨコ達を見て思い出したよ。

荷台の奥に進むにつれて血の匂いが濃くなって、ここから先はもう言えぬ。

もうだめかとばかり思った時に、奥からピヨピヨ泣く奴がいたんだよ。



「たった一匹…その声が聞こえて死体をどかしたんだ

そしたらなブルブル震えたこいつが出てきたんだよ

死体が緩衝材になって生き残ったんだ」


「たった一匹、生き残った幸運の鶏

だからみんなからご利益があるとかなんとか言われるんですか」


「まぁそうなるな」


「あのドライバーも最低でしたね

自分は助かってよかったものの…」


「そうだなぁ」



荷台からこいつを連れ出した時だ。

運転手がこいつは傷物だから品評会に出せない捨ててくれて構いませんよ…って言ってなぁ。

腹が立ってその場で財布から五万出して、こいつを一生涯幸せにするから買うって啖呵切ったんだよ。

馬鹿な事を言ったと思ったが、運転手は喜んで金を受け取ったさ。

その後の話を知り合いの捜査一課の刑事に聞いたんだよ。

交通課の刑事が取調べの時に、ドライバーの脇見運転によって事故になったと言ったそうだ。

それにこいつは真っ黒で、動物虐待に亡くなった鶏の死体を近くに遺棄したりとまぁ別なところから余罪があったのだ。




「なんですかそれ!

命を軽視して、おまけに傷物扱いって!」


「そうだな、儂も許せなかった

この事故の時、前の師団長もその場にきて憤りを覚えたそうだ」


「ドライバーはその後どうなったのですか?」


「そいつは、危険運転で捕まり別件扱いで動物虐待及び不法投棄で逮捕になったそうだ

それに、農園というかなそこも違法創業でそのことも聴取されたそうだ」


「よっしゃ、ざまあみろ!」


「健太さん、動物好きですもんねー」


「わった、俺は動物全般好きだけど猫が一番好き

3佐、話を折ってすいません」


「いいよいいよ

その後、前の師団長と儂とで育てるという話になった

周りの反対者に頭下げて回って、今じゃみんなの営内班長ピヨ助よ

おまけにこいつはアレルギー持ちの隊員には近寄らないって言う賢さもある」


「……そう言えば、向井一尉は?

さっきまでいたはず…うわぁ!」




しまった、向井一尉はこの手の話にとっても弱いの忘れてた!

動物番組の再放送とか見ていてよく目元をうるうるさせてるの忘れてたわ!

いけないやっちゃった!




「ピヨ助ぇ。頑張ったわねぇ!!

お母さん、昔飼ってたインコのこと思い出しちゃったわ

ぴーちゃぁん!」


「向井…泣く事なかろう?

だが、こうやって皆に愛されてるのだよ

うちの可愛いピヨ助はな」



「ピヨ助、何か言ってませんか?

寝言かしら?」



よーく耳を澄ますとジュウジュウジュウと寝息のようなものを立てるピヨ助が、田中3佐の膝の中で眠っています。

こんな日がずっと続けばいいのになと思う村上です。

もうすぐ昼の業務の時間。

そしていつの間にか、瑠香(いもうと)が帰ってくる時間になるなー。




(夕方 即応強襲部隊執務室)




「そんなことがあったんですね

ずっと田中3佐がどこからか、連れてきたのかと思ってました」


「瑠香…ピヨ助はね、いろんな物を見てきているのよ

こんな馴れ初めがあったのはお母さんも初めて聞いたけど」


「村上3曹はどうなんですか?」


「私もこの話を聞いたの初めて

いろんなことがあって、色んな出会いがあるよね

3佐が助けなかったら、今こうやって私たちの前に現れてくれなかった」


「不思議なものですが、これだけははっきり言えます」




うちのピヨ助は世界1ぃぃぃぃ!


ピヨ助くんが練馬駐屯地に配備された日のことです。

ピヨ助の過去は暗いですが、幸せならいいのです!

営内班長な練馬ピヨ助のことをお願いします!

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