表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/144

7-3 空の子の力

頭の中であーしてこーしてって考えた末にできました!


またまた寒くなり始め…おでんが恋しいです。



やべー…もう少し遅かったら落ちてたな。

危ないところだったぜ。




「よく頑張ったな!

もう大丈夫だ、握手しよう…ってできないか」


「うぅぅぅ、あの…あのぉ」


「しょんべんチビるのだけはやめてくれよ?」


「あの…ありがとうございます」


「なーに、問題ねぇよ

それより今から、三階に降りるからさ

悪いけど私にゆっくりで抱きついて来れるかい?」


「できます…できますぅ」



おっかなびっくりしながら救助者は抱きついてきた。

そういえば…この人どっかで見たことあるんだよな?

誰だっけかな?

華奢だから女の子かと思ったけど…男の子だったんだな。

中1とかそんな感じか…よく頑張ったもんだよ。





「抱きついてきてくれたね

今から5分だけ目を瞑ってくれない?」


「…こっ、怖いです、無理だよぉ!」


「見えてる方が楽なのかな?」


「う…うん」


「わかった…今から私は抱きしめている方の反対の手をロープから離す…

でも絶対に落ちない…じゃあ行くよ」



3…2…1




「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!

…あれ、落ちない?」


「でも両手は離している…面白いだろ?

これで怖くないかな?」


「怖くない…です」


「よろしい…じゃあ今から体を私の体に縛るから

しばらくそのままでいてくれるね?」


「うん…わかった」





よし今のうちだ。

足でロープを固定させてるとは言っても時間が経てばずるずると下に落ちていく。

腕の力に頼れない分、急いでやらないと。

予備のロープを外して体に…ズボンのベルト通しに連結させて…。

次に私の体から離れないように救助者の背中で交差させて私の体とも交差される。

最後に座席の端っこに…通せた。

あとは下の階の窓が開くのを…。





「瑠香開けたよ!

次はどうしたらいい?!」



「多目的室のテーブルとかあったらどかして!

今からそこに降下する!」


「テーブルはどかしてある、次は何がいい?!

つーか、先生が乗り込んでこようとしてるんだけど!」


「えみりちゃんと一緒に危なくないところに避けて!

先生に轢き殺されたくなかったらどけ!

って言っといて!」


「わかった、絶対その子助けてよ!

先生達なんとかしてくる!」


「ありがとう、頼んだ!

…さてと、降りますかね」




やっぱりブルブル震えてるな…。

そりゃ高いところに宙ぶらりんになって、誰かに助けてもらえると思ってもなかなか助けてくれない。

今ようやく助かると思ったはいいけど、まだ宙吊りだもんな。

下を見りゃ…もっと野次馬増えてるし…。

わたしも足が痺れてきた…。



「じゃあ今から降りるよ

今から両手で、ロープ掴むぞ…ほら掴んだ!」


「やっぱり僕怖いです…

下を見ると…震えが止まらないよ

ねぇ、怖くないの?」


「…怖くない…わけじゃないさ

でも慣れちゃったんだ、何回もこんな訓練してると

それに、一番怖い思いしてる君を早く解放させてあげたいんだ」


「お姉さん…強いね

僕もお姉さんみたいに強かったらな」


「…わたしも強いわけじゃない

でも、誰でも強くなれるよ

力を持つことだけが強さじゃない…

折れない心や曲げたくない信念がある

それが強さだって教えてもらった

だから頑張って強くなろうって思えた

そして…レンジャーになれた」



「お姉さんのこと見たことあると思った

僕、この前の練馬駐屯地のレンジャー帰還式の動画見たよ!

その時の女性のレンジャーってお姉さんだったんだ!」



「バレたら仕方がないな!

その時のレンジャーが私だよ!

そっか動画に上がってたのか…そいつはいいや!」



それにしても、どっかで見たことあるような?

気のせいかー?

うちの学校、有名人の子供とかそもそも有名人とか。

あとお金持ちのボンボンとかいるからな。

でもどっかで見たことあるようなー?

名札ついてたのか…えーっと渡辺…。




「それじゃあ降りるよ…怖いけど目を瞑らないでいく?」


「うん、頑張ってみる!」


「じゃあ何か歌って気分を紛らわせていてよ

そしたらあっという間に着くからさ!」


「……じゃあ、僕の好きな陸自の歌を歌う」


「いいねぇ〜、ちなみになんて歌が好きなの?」


「えーっと…」




空の神兵って歌!


  


「よーし!

じゃあその歌を私に聞こえるように歌っていてよ…

一気に降りていくからな!」



空の神兵…聞いたことあるような…?

小さい時に…聞いてたような。

…空の神兵…空の神兵…空の神様?

なーんちゃって!

…もしかして、そう言うことなの?

ひねりが…あるような、ないような?





「瑠香ちゃん、いつでも降りてきていいよー!」


「了解した!

さぁて、おっきい声で歌ってくれよぉ!

降りるゼェェ!!!!」



頑張って耐えてた分もうすぐ着くって思うと落ち着いてんだな。

いい声して歌ってんじゃんかよ。

だったら私も本気で降下してやんねぇとなぁ!

三回窓までもう少し…よし、窓際の壁まで来れた!

後は三階に突入すりゃいい!



「いいか、今から三階に突入するぞ!

頭も屈めて抱きついてこい!

じゃねぇと頭ぶつけるからな!

後は絶対暴れんじゃねぇぞ!

いいな、わかったな!」



首を縦に何度も振って答えてくれる。

えみりちゃん達も退避してくれている。

よっしゃァァァ!!!




『レンジャー神前、これより三階に突入する!

…レンジャァァァァァァァァァ!!!』



窓際の壁を蹴り飛ばした。

揺れのせいで大きく触れ動いてるけど気にしねぇ。

速力上がる方が突入する時も楽だ!

いっけぇぇぇぇぇぇ!!!!



「……瑠香…すごいついたよ

ついたよ、瑠香!」


「レンジャー神前突入完了!

よっしゃ、よく頑張った!

ロープ外すからちょっと待ってろよ」


「僕…助かったんだ…助かったぁ」




怖かったよな。

ものすごく怖くて、目を開けていたのもちゃんと救助されるのか不安だったのか。

人間って恐怖に襲われると子供でも凄い力が出ていた。

これも勉強だな。



渡辺智(ワタナベサトシ)君大丈ぉ…よかった無事だぁ…」


「麦田先生…渡辺君は無事です

もう大丈夫です!」


「ありがとうレンジャーさん、ううん…神前さん」


「レンジャァ!」



空の神様が言った通りだ。

どれほどきつい状況下にあっても、守りたいと思う人や助けたい命は目の前にある。

一番怖い思いをしていたのは目の前にいる救助者の方。

また、私の中の力が空に登って消えていく感覚。

いやじゃない…むしろ気持ちがいいや。



「神前さん、あなた何をやったの!!

渡辺君は無事…だった」




うわぁ出た、ヒステリックおばば綾瀬先生さんよぉ?

今更何しにきたんだよ?

突入しようとした時にロープ揺すろうとしたの覚えてるかんな!

ざけんじゃねぇぞ、殺す気か?!




「綾瀬先生…渡辺君は無事です

神前さんが助けてくれなかったら今頃…」


「麦田先生はいいですから!

渡辺君に何かあったらどうしてくれるの!

この子は天才ピアニストとして活躍してるのよ!

この子の体に何かあったらどうしてくれたの!

渡辺君の転落に、神前さんが関係してるらしいわね!

この悪魔、恥を知りなさい!」



「綾瀬先生…僕は…僕は!」


「恥を知れ…この悪魔…ね

こんなことで私はビビったりしませんよ?

それに私は渡辺が転落しそうになっているのを聞いて荒いですが救助をしただけです

何もしないことは見殺しにすることです」



「なんですって!

じゃあ言うけど、あなたが救助しなくてもレスキューマットがあれば助かったってこともあったわ!

それかあなたが犠牲になっていればもっとよかったわ!」


「綾瀬先生、そんな言い方はないです!」



「牧野さんは黙っていなさい!」



レスキューマットがあれば助かった?

間に合わなかったら死ぬだろう。

なに言ってんだこの人?

きちんと説明しなかった私も悪いけど、そんな言い方ないだろ。

いや、これも一つの意見なのか…仕方ないのかな?



「犠牲?

何を持って犠牲とするのだ?

己の命をかけて救おうとすること、身を挺し挑みしその心…

その全てを持つ者に犠牲という言葉はあわぬ!

これは至上の任務なり!

それ故に犠牲たる言葉など当てはまらぬ!」




あるぇ?

私なんでこんな言葉話してるんダァ?

私の口からなんでポロポロと溢れ出てるっていうか

なんだこれぇ?

……空の神様、なんでそんなに怒ってるんですか?

いつの間に私の左隣に!

ものすごい殺気を感じますがクォレは?




「事に臨みしとき、危険を顧みず身をもって任務完遂に努めただけぞ!

この男子を危険から救おうとした心を、この行為を恥というならば、恥を知るぬは貴方である!

…言っても無駄か…さらばなり!」




ヤベェ…神様に腕引っ張られて体を持ってかれてる。

神様…なんでそんなに怒ってるんですか?

別に私は先生の言うことに、怒ってないんですよ?

なんで…泣いてるんですか?

えりみちゃん…紗香…ついてきてくれてるけど…。

なんかごめん。

空の神様、おこです。

助けたのにも関わらず、大切な瑠香のことを罵られたために瑠香の体を使って反論してしまいました。


なぜこんなことを言ったのかは、空の神様しかわかりません。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ