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6-5 再会

この小説初めて長く経ちました

新しい場面が始まる前に閑話を入れたいと思います



あの事件の全部が片付いて四日たった。

地面はえぐれるわ、ガラス窓は割れるわ。

おまけに87AWのキャタピラやらLAVのタイヤの跡を消すので時間はかかったし。



「けっこうやられましたね」


「お前が大立ち回りしたおかげで助かった人もおるんやで

まぁあたしとかさ!」



割れたガラス窓は新しい窓ガラスと交換されているけど、修理が追いつかない所はベニヤ板が貼られて応急処置が施されていた。

見るも無残と言うほどではないから少し安心。



「そういえば沖田2曹の怪我って?」


「それはね…防弾ベストが翼者の爪を弾いたの

でも少し首の後ろをかすってね…

引っ掻く時の威力も強くて失神したのよ」


「本当にまずい状態だと思って…私」


「でもあの時、瑠香が走らなかったらどうなってたかしらねぇ

えらいおおきに!」


「沖田2曹…無事でよかったです!」




そう。

私が大暴れしている時に沖田2曹の意識は回復していたらしい。




       (四日前 戦闘中)



『瑠香…瑠香、あの子はどこに!?』


『沖田2曹!

目が覚めたのですね、怪我は…かすり傷程度で』


『飯島、あたしの事はどうでもいいのよ!

瑠香はどこに……いやぁぁぁ!!!』


『るっちゃぁぁぁ!!

鎮静剤打つわよぉぉぉぉ!!』






「ってな具合にあたくし沖田宏人は叫んでましたのよ!」


「本当にすいませんでした」



この大立ち回りのせいで他の中隊の人達から神前瑠香はとんでもないあだ名を貰いました。

それがこちらになりますのですね。



『破壊神 るっちゃん』



とりあえず関係各所の皆様。

練馬駐屯地付近にお住まいの市民の皆様。

第一師団の皆様に即応強襲部隊の皆様。

大変…大変…大変申し訳ありませんでした!



「うむ、破壊神よ!」


「お疲れ様です、田中3佐!」


「お疲れ…なげかわしいぃ

神前や…儂は実になげかわしい!」



    ((あっおじいちゃん、今白目むいた))



なにに対してなげかわしいと言ってるか分からないけど、なにか嘆かわしいことがあったんだと感じました。

現在、白目を向いて元に戻るまで18秒掛かりました。

なんとなく言いたいことはわかるんだけどね。

話し方というか…話そうとしていることとか。



「師団長が呼んでいるんですか?」


「嘆かわしい」


「執務室で待ってるんですね」


「なげかわしい」


「やだぁ!

なげかわしいって言うだけで会話通じるとか嫌だわ!

なんで瑠香も話通じるのよ!?」


「なーした?」


「急にもとに戻らないでよぉぉ!!」


「瑠香…早く行きなさい

沖田は俺が引き受けた!」



「了!  (沖田2曹…なんか扱いひどくない?)」




物欲しそうに私を見る沖田2曹と分かれて、本庁舎の中にある師団長執務室に向けて歩き始める。

先頭でボロボロになったと言っても、人的被害がなかっただけよかった。

死人が出れば悲しいとかそんなんじゃ治らない。

憎しみが憎しみを孕んでもっと大きなことになりかねない。

まさしく戦争待ったなしだった。



「二等陸士 神前瑠香入ります!」


「そんな挨拶はしないでよ…今はさ」



執務室の部屋の前で財前陸将はニコニコと微笑んで待っていた。

見たいと思っていた優しい表情に、透き通った琥珀色の目。

やっぱり私の勘や記憶は当たっていたんだ…。



「お入り…ずっと会いたかった」


「失礼します…いや、ただいま」



執務室の中は空間を落ち着かせるように、優しくコーヒーの匂いがふわりと漂っていた。

執務室の中にある座り心地の良いソファに座るよう促され、少し待っていると…ヌコ様の可愛いラテアートが出されたのです。

その隣に、そっと彼は座ったのです。


「昔から…瑠香は猫が好きだったね

公園に行っては猫を撫でていたからな」


「それって…船橋の家でだよね?」


「そうだ…習志野駐屯地がよく見えるアパート

そこで暮らしいていた…四人でな

さてそろそろくるかな…こそこそしないで入ってこい!」




ばれたかー




少し低めの声がドアの向こうから聞こえた。

背は175センチくらいかな?

角刈りから少し伸びた髪に、アーモンドアイを少しゆるくした感じ。

迷彩服にはレンジャーバッチと丸いパラシュートに羽がついた…空挺き章だっけ…。

階級は3等陸曹か…。




「久しぶり…なかなか会えなくてごめんよ

俺が誰かわかるよな?」


「しゅう…修お兄ちゃん…だべさ」


「んだんだ、修お兄ちゃんだべな!

お前の道弁も相変わらずだな」


「兄弟二人揃ったところだ…少しやろうと思っていたんだよ」



エモい木のテーブルにゴトンっと何か重たいものが置かれて…。

これって9ミリ拳銃に89式の銃剣!?

どうしてこんなものがここに!

あれ、さっきまで私の隣にいたよね?

師団長専用デスクの方にいるの?

あーなんかうん、わかりましたね!

名推理ですよクォレは!




「瑠香、修…俺は最低な人間だ

真愛美の葬儀が終わって、お前達を船橋のばぁちゃんの家に預け俺は二人のそばから消えた

最低な事をやったんだ…

だから復讐する機会を作ったんだ

そこにある銃剣が拳銃で俺を…やれ」


「俺は復讐なんてする気がないよ

なんで復讐する必要あんだよ

そんな辛気臭ぇこと俺はやらねぇし」


「私もないよ…

だって私のお父さんはさ…

あの日…おばあちゃんの家に私たちが預けられたのは

危ない仕事してたし、安全だと思ったんでしょ」




お父さん



「ふっ…

こんなバカ芝居は、不毛だったな

迎えにいくのが遅くなって悪かった

こんな最低なオヤジだけど…許してくれるか?」



なんて言う陸将の前に、私は修お兄ちゃんと目を合わせてにっこり笑い合った。

なんとなく言いたいことはわかっている。

ようやく、本当に私が求めていた何かが見つかりそうだし、心に開いた穴が埋まりそうな気がする。



    「「…ただいまお父さん!」」



「お帰り…修…瑠香!

さぁお父さんに抱きついてこい!」


「「それは嫌だ…だってもう子供じゃないし」」


「………お…おいで、ね?

お父さんの所においで…ほら?」


「ねぇお兄ちゃん…次の休み一緒に遊びに行かない?」


「どこ行きたいか考えてな、連れていくし」



「おっ、お父さんもいいよね?」



「それにしてもお兄ちゃんって空挺行ってたんだ」



「まぁな

向こう行ったらさ、親父さんに似てるって言われたよ

でも親父の背は超えれなかったけど」


「私も…空挺団いけるかな…女だけど」


「wacでも空挺隊員になった人はいる

大丈夫、訓練を続けてやればいける」



「わっ、わからないことはお父さんに聞いてごらん!

お父さんは空挺レンジャーで格闘とかほら!

冬期レンジャーにも言ったスペシャリストだし!

スキーき章もつけてるよ!」




お兄ちゃんとこうやって話ができるってとても嬉しいなぁー!

優しくて、ふわふわしていて久しぶりにお兄ちゃんに会えたから幸せだよ。

あー、おいちゃんはぁはぁしちゃうわい!

今日は一緒にハーゲン○ッツのチョコ食べに売店行きたいな。

そういえば、何か忘れているような?

気のせいだな!



「そうだ

俺さ、今度から練馬で勤務するからよろしくな

後、飯島健太っているだろ?

あいつ、俺の同期なんだ」


「本当に?

嬉しいなぁ、嬉しいなぁ

飯島3曹と同期だったんだ!

きっと喜ぶと思うよ!」



『しゅう…るか…お父さんの事を忘れていないかい?

お父さんの事、忘れてないよね?』



なんだろう、執務室いっぱいに黒い粒子が浮いているような?

財前陸将の肩とか背中とか腰に羽が?

そう言えば、財前陸将って翼者だったの忘れてた。

昔、寒くて寝れない時にお父さんが翼者になってモフモフさせて貰ってたって夢の中で観たような?

身体中が黒い羽で覆われてますね?

目が琥珀色から赤くなったよね?

前髪も右目隠れてるくらい伸びてるような?

るかちゃんわかっちゃったゾォォ。




「修…瑠香…お前たち…わかっているだろうなぁ?!」




「ねぇお兄ちゃん、私とんでもないこと考えた」


「俺も考えた、その先にあてはあるの?」


「レンジャ!」


「了…1、2の3で行くけどいいか?」


「レンジャ! せーの」




     『にぃぃぃげろぉぉぉ!!』



マーーーーーーーテーーーーー!!!







私、3等陸佐田中源一郎は今日。

師団長執務室の中をのぞいてしまいました。

見てはいけないものを見てしまったと記憶しています。

逃げ出したと油断したほんの数秒で、あの二人は執務室に戻されて説教を受けている様は見るに耐えれない。

すごいですね、いかに自分が2人を思っているのかと延々と話していますが。

会話の中から聞こえてくる




       《お父さん離して》



と言う言葉。

ベタベタくっついてるんですね。

完璧、2人が悪いのですが…見ていて面白い。



「あいつら…何やってんだ?

ところで何やってんだ、挺進兵?」


『扉が開かないように空気椅子で封鎖してるんですよ

ほら、聞こえませんか?

あの2人の阿鼻叫喚を…』


「え、阿鼻叫喚?」


ドアノブ回ってるのになんで?!?!

ごめんなさい!

ごめんなさい!

もうこんなことしないから許して!

…親父、バリカンやめて!

ちょっと髪の毛伸ばしてるくらい許せよ!

待ってくださいお願いします!

早まるな!

待ってちょっ!

誰か助けて!!



扉開かない!

なんで、誰か助けて!

お父さん待って!

瑠香…いい子にするから許してよ!

ごめんって怒んないでよ!

お父さんの事を大好きだって!

お願いします、許してください

なんでもしますから!

うわぁぁぁぁぁぁ!!!!



「……今の若者言葉で言えばうけるぅ!」


『可愛い子供たちの泣き叫ぶ声…

基礎降下訓練を受けてる新隊員の悲鳴よりも

たまらないですね』


「お主も悪よのぉ?」


『少佐殿には勝てませぬよ?』


「…なぁ、挺進兵よ

お前の目的はなんだ、あの子達を守ろうとするその想いとはなんだ?」


『俺は…約束したんです

あの子達の母親…真奈美と契約したのです

もし何かあったときは守ってあげて欲しいと』


「だが、お前が守ろうとした瑠香は夜叉になろうとしたぞ?」


『俺ほどの夜叉ではないでしょう?

光の届かない闇をこれ以上見せるわけには行きませぬ

まだ…止めないでください

俺の事も…あの子の力の事も』


「断ると言えば貴様はなんとする?」


『少佐殿の寝首を掻いてやると言いましょう』



こいつの目に灯る復讐の炎に似た何か。

瑠香が放った雷の力…こいつの中にはまだそれ以上の何かが眠っているようだな。

荒ぶる力を持つ雷神か…。

目的がわかるようでわからんが…好き勝手させるわけには行かぬ。

その瑠香以上に青い眼と勇ましい能力。

おぞましい物。



「そうなる前に俺の手でお前を消してやるよ

だか貴様の根性…気に入ったぞ」


武甕槌神(タケミカヅチノカミ)と同じ名を持つ兵士

俺も少佐殿の事が気になります

その月白(げっぱく)の色の眼に、目の淵沿いに沿った小さな菱形模様

げに恐ろしき化け物かな?』


「貴様も同じような物だろ?

貴様の思い通りにはさせん

覚えておけ」



消えたか…これで兄弟2人はいつでも逃げれるな。

挺進兵…何を考えているかわからんが。

どうにも力が強すぎる。

あの2人が飲まれないか心配で仕方がない。

財前陸将、気づいているんですか?

あの子達の力は…いやダメか。

稽古をつけてやらんと…。

だが今は幸せな時間を謳歌させてやらねばな。

お父さんに会えてそしてお兄ちゃんにも会えました。

主人公、神前瑠香。

いつかこの名字が変わる日が来るのでしょうか

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