6-4 月命日(後編)
ここまでくるの長かったのです
戦闘編はこれでおしまい
ここで出てくる兵器の87式自走高射機関砲(87AW)の実物は見たことありませんが軽装甲車(LAV)はチラチラと見たことあります。
今回戦っている宗教のもとになったあれはいます。
陸、自とマジの戦争になりそうになったと言うアレですが。
やっておいで瑠香
「殺してやる…翼者、ユリアお前ら全員まとめてぶっ殺してやるァァァ!!!」
もう…こいつら殺さないとわたしの気が済まない。
大好きな沖田2曹を…沖田専任助教をよくもよくも!
今叫んだことも周りの轟音でかき消されて聞こえていない…。
何も聞こえない…何も感じないけど身体中の血が沸くように熱い…。
これが、空の神様の言う力なのか…。
そんなことどうだって言い…沖田2曹を助けられるなら。
目の前にいる敵を倒せるなら…私は。
「神前何をやっている!
聞こえてんのかよ神ざ……き?
村上…俺の目はどうなっている」
「室戸3曹何をやってるんですか!?
撃ち続けないとあいつら寄って…
嘘よ、なんで瑠香の体から雷を帯びてるのよ」
「お前まさか空挺団に伝わる言伝えの子
神に近い力を持つ選ばれし…空の子なのか…神前」
「何言ってるんですか!?
瑠香はそんな化け物じゃないです
だってあの子は…あの子は!」
「だからレンジャーの訓練でもけろっとしてたのか
気がついてやれなくて済まなかった…
思う存分暴れておいで」
瑠香
「すごいわ…これが、これがマリア様
あなたの中に眠る力だったのですね!
素晴らしい…さぁその力を私たちに注いでください!」
何言ってんだよこいつ…。
素晴らしい力だとか抜かすんじゃねぇよ?
この畜生ども…そんなに見たけりゃ見せてる。
89の残弾数は替えの弾倉といまつっこんでるので100発。
敵総数と比べてもたりっこない。
銃剣でめった挿なんて、センスがない。
身体中から出てる雷みたいなのを使っても凌げるのか?
凌がないと弾が勿体無い。
肉弾戦覚悟だわ、上等だこのくそったれ。
「沖田専任助教…勝手な行動を許してください」
「ぅ…か…ん…ざ…き」
ここから一度…離れなきゃ。
せめて手当てを…ここから200メートル先に飯島3曹がいる。
あそこまで走れば…すいません揺れます沖田2曹。
少しの間だけ我慢してください。
今、助けます!
(体がすごく軽い…沖田2曹も軽く感じる)
成人男性一人を担いで走っているはずなのに、とても体が軽い。
沖田2曹の体重に防弾ベストを着ているからプラス五キロくらいあるはず。
でも全く辛くない…息も上がらなければあまり力も使っていない。
これなら…沖田2曹を、沖田専任助教を助けられる!
時間があまりない、すぐに戦闘に戻らないと!
「神前、お前いつの間にこっちにきたんだよ!
それになんだよその雷みたいなやつ!?
…沖田2曹…そんな!
…神前、お前どこに行くんだよ…やめろよ?
お前何考えてんだよ!」
「………沖田…専任助教をよろしくお願いします
私は…やらなきゃいけないことがあるので
化け物退治は…化け物がやった方が早いっす!」
「ふざけんなよ、何笑ってやがんだ神前!
……行くな…行っちゃダメだ!
…行ったら…ダメなんだ…神前」
ごめんなさい、飯島3曹。
私にはこれくらいしかわからなかったんです。
飯島3曹しか沖田専任助教を救命できない。
みんなごめんなさい。
周囲の怒号の中に悲鳴も聞こえる。
早くこいつらを片付けないと!
誰か助けてくれる!!
こっ殺される!!
どこだ、どこにいる?
声の主はいったいどこだ!?
爆音とか破裂音のせいでなにがなんだかわからない!
……いや、上から二つくる!
羽の関節を引っ掛けるようにして…
「……ぅて!!」
耳元で聞こえる鼓膜を破りそうな破裂音。
肩を押し付ける様な銃の反動!
重厚から黄色い閃光が空目掛けて飛んでいく光景
だけど走りながら打つせいか狙いがうまく定まらない!
もう少しエイム力があれば…届いたはずなのに!
『アタラナイ…アタラナイ!』
『オモシロイネ…オモシロイネ!』
でもそんなお前らにとびきり痛いの食らわせてやるよ。
こんな大物が近くにいるのに気が付かないってとんでもなく私もお前らもバカだよな。
この場所をなんだと思っていたんだ?
お母さん…お願いします!
『誘導ありがとう瑠香…
でもお母さんは少し悲しいわ
…痛いのブッ食らわせてやるよゴミどもが!』
ブォォォォォォン!!
無線のから聞こえたお母…じゃなくて向井一尉の言葉がぷつりと途絶えたあと空を飛んでいたあいつらは地面にバタバタと倒れた。
代わりに唸り声を轟かせる87AWの獣の様な機関砲の音が空気を響かせた。
機関砲の先は空をなぞる様に横一文字に翼者達を撃ち落としていく!
『お願いだから怪我だけはしないで…
沖田の仇討ちなんてしないで欲しいけど、貴方が選んだ事なら止めれないわ』
ごめんねお母さん、私やっぱり助けたいんだもの。
みんなの事を…。
「くそー!!
来るな、来るなぁぁぁ!!」
『コワイ、コワイ?
カワイソウダネ、カワイソウダネ?
オマエクッテモイイ?』
誰か助け…?
あれ今俺の真上を誰か飛ばなかったか?
化物が倒れて…誰が馬乗りになって…。
この子…確か田中さんところの若レンジャーか?
羽のところ銃剣で突き刺しやがったよ。
うんともすんとも言わなくなった…。
こっち見るな…寄るな!
「やめろー!!
……あれ、俺…助かった……ヒィ!」
「無事で何よりです、では失礼します」
「なんだよ…あの子…目の色が蒼かったような?」
「太田、無事か!?」
「おのサトコンビ!?
無事と言えば無事だけど、足を怪我してしまってよ
それよりあの子はなんだってんだよ!」
「俺や…佐藤にもどうにもできないくらいに怒り狂ってる俺らの可愛い可愛い妹だよ」
「すまない…瑠香
重荷を背負わせて…無事に戻ってこい」
あの人…大丈夫かな?
こんな事早く終わらせないと!
目の前にユリアって人が見えてきた…。
追い詰めたぞ!
もう訳の分からない御託なんて言わせねぇよ。
2度と練馬に近づけねぇようにしてやらぁ!
おきたにそうのうらみ、みんなをきずつけたうらみ。
タチナオレナイヨウニシテコロシテヤル!!
「うがぁぁぁぁぁ!!!!
ああああああああ!!!!」
「落ち着かんか、馬鹿者!
お前が死ぬれば皆が悲しむのだぞ!」
ダレ?
ワタシヲダキシメテイルヒトハ?
コワクナイノ?
ワタシハバケモノダヨ?
メノマエニワルイヤツイルカラコロス。
「がぁあぁぁぁぁぁ!!」
「お前がこの者を憎む気持ちはわかる
沖田を傷付けられたことが憎くてたまらぬことも」
オキタ?
オキタッテダレダッケ?
ダイスキナヒト?
だいすきなひと?
みんなどこ?
「うがぁぁぁぁ!!!」
「…お前の中にいる夜叉に飲み込まれるな
儂の愛おしい我が子よ」
「ゔゔゔゔゔゔぁぁぁぁ」
「心を鬼に喰われてはならぬ
お前は優しい心の子だ、夜叉になるのは儂だけでいい」
おきたにそう…。
たなかさんさ…。
みんな、みんなどこ?
私は、鬼になったのか?
この匂い田中3佐の他に誰かいる?
「田中3佐…っあ!
沖田2曹は…沖田2時は無事ですか!?」
「アホお前どこ見てんのや!
生きとるで…沖田専任助教は!
気ぃ失ってただけや…」
生きてた…沖田2曹…!
なにこの匂い…血の匂い?
それに何か腐ったような匂い。
火薬と血と生き物の腐った匂いと甘ったるい匂い。
「私…なんの返り血浴びたんだ?
なにも覚えていない…」
「正気に戻ったようだべな?
この馬鹿者」
一気に脱力感というか倦怠感に襲われそう。
もし田中3佐が止めてなかったら。
もし沖田2曹を見てなかったら。
本気で私、目の前のあの女を殺してた。
人殺しになりかけてたんだ。
いや、翼者にやられて実際に殺されてたのか。
「マリアさまぁ
なんと言う力…天の使い達を雷で制するなんて
でもいいのですか?
私を殺せば、あなたの父親には会えませんよ?
まぁどうやらここまできてくれたようですけども?」
私の後ろからとてつもない殺気の塊がこっちに向かって歩いてきてる。
振り向いたらだめだ。
目を合わせれば…。
鳥肌立ち始めた!
「畜生の集まりだと思っていたが?
やはり畜生は、畜生ということだな?」
「やはり来ましたか…サタンと言われた翼者
あなただけが唯一、首のある翼者と言われたのですから」
「その口…縫い合わせてから殺してやる」
「おぉ怖い、怖い
本当にこの国を守る人の言うことかしら?
あらまぁ時間です…今回の所は私達も引きましょう
それまで…ご機嫌よう、マリア様」
生き残った翼者達がくるくると空を旋回し散り散りになって飛んでいく。
目線を戻した先には、ユリアという女はいなくなっていた。
その代償に練馬の地は傷ついた。
私の後ろに立っている自衛官が、私のお父さんなの?
なんとなく声で察しはついている。
ううん、もっと前からわかっていた。
この人が私のお父さんだって、遅いよって言いたいよ。
「ごめんね瑠香、お父さんが悪かった」
「お…と…う…さ…ん」
そう言って私の意識はプツンと音を立てて消えていた。
最後に見た父親の目の色は透き通った琥珀色で。
視界は暗いのに、音は聞こえる。
子供の頃に聞いたお父さんの心音。
ようやく会えた…お父さん。
思い出したよ…私の苗字は神前じゃない
私の本当の名字はこの人と同じだった。
戦闘おしまいです。
次からは主人公が学校に行きます。
まぁ学校でも一悶着ありそうですが…。
首のある翼者…なんかサタンとか言われた奴が最後登場しました。
自衛官+翼者+お父さんです。
琥珀色の目が特徴…あいつしかいないです
次回もお願いします!




