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6-2 月命日(前編)

今回は前後編わけまーす!

にしても暑いってばよー!

「えー!

お父さんが会いたいって連絡があったの!?」


「黙れ小娘、お前にお前の父の孤独が癒せるのか!?」



話が全く噛み合わないですね白石富治さん。

話が噛み合わない富にぃが駐屯地から出て行く前に話していたのです。

お父さんが会いたいって連絡があったなんて趣旨なんですがね。

でも富にぃの顔がものすごく不機嫌そうなんですが。

まさか…会わせたくないとか?




「月命日は明日よね?

明日の朝十時に門の前に迎えに行くって言ってたよ」


「結衣さん達も来るのですか?」


「私たちは仕事があるから同行できないけど…

でも大丈夫よ、心配しないで」


「むー…むー…」


「富にぃ…何言ってるのさ?」


「瑠香ちゃん、富治さんはね…おねむなのよきっと」


「結衣…帰ろう…僕眠いよ」


「ほらね?」


「まじかよ…富にぃ」


「貴様は本当に昔から変わっとらんなぁ…

可愛い儂の孫を頼んだぞ…白石よ」


「…任せてください、白石の憲兵魂にかけてこの子を守ります」



そうやって富にぃ達は元の職場に帰っていった。

帰る前に私の命を狙う集団についても色々と教えてくれたけど、富にぃの部下の人たちがやられていただなんて。

だから余計に機嫌が悪かったと思えば合点がつくんだよなぁ。

いろいろ忙しくて時計を見たら、時間は課業終わりのラッパが鳴る10分前だ。

風の中に混じって食堂からの、美味しい夕飯の匂いが食欲を誘う。



世間(シャバ)は平和なのにな…

いや…平和ボケって言うのかな」


「神前…儂はなぁ平和ボケが一番だと思っているのだよ

日本だけではなく…世界中が争いのない平和ボケな世界が一番いいと思うのだ」


「平和ボケ…か

田中3佐…話変えますけど、結衣さんからいろいろ聞きました

私の命を狙っている組織の事も、何もかも」


「瑠香…そうか聞いたか

何としてでも儂がお前を守るよ

お前の父親に会わせて幸せになってほしいからな」


「田中3佐…いつもすみません」


「頭を下げないでくれ…

中隊(かぞく)を守らないで中隊長(ちちおや)は務まらないよ

そろそろ国旗降下だ…正体しなさい」



いつもと変わらない日常がラッパの合図で終わる。

いつもと変わらない景色が綺麗な夕焼けの色とともに夜を迎える。

決して変わって欲しくない世界がゆっくりと夜を迎えて眠る。

こんな世界がずっと続けばいいのに。

国旗が降下したし、後はゆっくり休めばいい。





『マリア…イタ

マリア…カワイソウ…ツカマエラレタ…トラワレタ』


「ん…頭が…痛い!

何だ急に…頭の中に…ノイズが!?」


「大丈夫か、神前なした!?」


『タスケル…タスケル…ミンナデタスケル』


「何だよ急に…この感じ…レンジャー課程の時と同じ!」


『バケモノ…ニホンヘイイタ…ウデカエセ…ウデカエセ』



「…神前悪いが今から庁舎に戻るぞ…

儂もものすごく嫌な予感がする」




庁舎に向けて全力疾走していた時にはっと空を見上げて、夕焼けが沈む方向…まじかよ!

茜色に染まりかけている空の向こうに黒い点のようなものがポツンポツンと浮かんでる?

浮かんでいるなんて、悠長なこと言えねぇ…。

空飛んで来てんじゃねぇかよ!

くそったれが!



「翼者…この前の訓練以来じゃないっすか!」


「民間人がいる前で発砲しろと言いたいようだな!

神前…悪いがこれは訓練じゃぁねぇんだ

この意味わかってくれるべな!」


「もちろんですよ!!」



     [同時刻 即応強襲部隊執務室]



「どうしたんだ、ピヨ助3曹」


「コッコッコッコ(訳 どうしよう、やばいの来る!)」


「室戸3曹…何やってるんですか?」


「なぁ千春

何でピヨ助が部屋の隅で固まってるかわかる?」



こんばんは、室戸亮(ムロトリョウ)です

我が部隊のアイドルちゃぼ事、練馬ピヨ助3曹がさっきから部屋の隅でガタガタ震えながらずっと鳴いているんだが。

俺が即応(ここ)に来てまだ数ヶ月しか経ってないけど、こんな風にガタガタ震えて怯えているピヨ助を見るのは初めてだ。



「千春…何で固まってんだよ?」


「それ…鶏の警戒音です

鶏が外敵に遭遇しそうになったりすると鳴くんです」


「へぇ詳しいな

田中3佐から聞いたのか…でも何に警戒すんだよ?」


「一度こんな風に鳴いたことがあるんです

この前…空飛ぶバケモノ…翼者って言うのが襲ってきた時に…」


「まさか…それだとまずい!」






[同時刻 第一師団長執務室]




『ねぇ…どうしようあいつら来たよ

タイミングが良すぎる…だって明日は真奈美の!』




わかっている。

こいつが…俺の心が何と言いたいのかわかっている。

バツが悪い、タイミングを見計らって来た。

よりにもよって…言いたい事をいちいちあげてもキリがない。

翼者…光の楽園…カルト教団。

全部混ぜ合わせれば、面倒ごとのオンパレードだ。



「ちょうど良い…敵をある程度殲滅できればあいつらもびびって手は出さなくなるさ

見せつけてやれば良いべさ」


『そんな事…死人が出たら終わりなんだよ!

関係ない人間まで巻き込んで…これじゃあまるで』




わかっている、俺だって本当は戦いたくなどない。

だがあいつらは…俺の大切な人を殺した。

大切な家族をバラバラに割いた。

何度この手で壊滅させてやろうかと思ったことか。

これは真奈美への弔いを込めた戦争となる。



「そうだ…これは戦争だ

示せばいい…俺が怒り狂っていることを

だが…民間人を逃す時間が全くない!

俺たちに武器を握らせるのを躊躇(ちゅうちょ)させて時間稼ぎか!」


『こんなことになるなんて…あいつらは馬鹿だ』


「来るぞ…戦闘用意と行こうか…」





    [練馬駐屯地 第一グラウンド]



「一体なんだって言うねんな…これは」


「沖田…驚いても意味なんてないわ

これがあいつらの本気だったってことよ」


「弾薬庫及び武器庫からありったけの火薬(ブツ)をとってきました!」


「瑠香…でも火薬なんて使えないのよ」



空を覆いつくす翼者。

肩から上はないのに、ぎゃあぎゃあ泣き喚き感高い笑い声も混じって気持ち悪い!

こいつら、撃ち落としてやりてぇが民間人が避難できていないんだ。

高射砲どころか、そもそも89なんて撃てたもんじゃ無い。

計算し尽くしているのかよ!




「異教徒の皆様ー!

こんばんは…まぁ皆様はとても幸薄そうですね

神の御加護がないのが…その証拠ですわ」



なんだよ…つーかどっから入ってきたんだ!?

正門だって今締め切ったし、北にある裏門だってしめたんだぞ!

よじ登って入ろう門なら、有刺鉄線で指とか手とか服とかビリビリになってるぜ?

それになんだよあの服装、真っ白い法衣っていうの?

なんかほらよくローマのなんか偉いキリスト教の人が来てる感じのあれ!



「ここに…マリアかサタンがいると思うのですが…

まぁサタンなら死んでいてもいいんですがねぇ?」



翼者を率いてきてるあたり、あいつがボスなんだろうな…。

なんだ、どっかでみたことある顔のような…。

こっちに歩いてくんな!



『聞いているか、我が精鋭たちよ…』



無線機越しから聞こえてくる…財前陸将の声。

麗しいバリトンボイスに殺意が混じって聞こえてくるのですがこれは…よろしい!

相当やる気…殺る気成分が含まれておりますねぇ!



『今回は近隣住民の避難ができていないということを、考慮し…戦闘は徒手格闘のみとなる

だが安心しろ…避難が終わり次第、発砲を許可する

しばらくたえてくれ』


「そうなるよね……田中3佐?

向井一尉、みんな…みんなどうした?!」



今までじっと固まって空を見上げていたはずのうちの人たち。

いや、いろんな部隊の人たちが一斉に車両に乗り込んでるし…。

なんか…すごい世紀末アクション映画で見たことあるような。

世紀末じゃないよね、ここ文明発展日本国だよね?

なんでマッドまっ……みんなーヒャッハーしないで?

自衛官だよね?



「瑠香よ、普通科たる自衛官…いや歩兵たる強者も言うのは、いつの世も踊り踊らねばなるまい…

行こうぞ、戦の始まりじゃぁぁぁ!!!!」


「おかしいですって!

だって佐藤陸士長…LAV(軽装甲気動車)のフロントに括られてるー!」



「るっちゃぁぁぁ、ほらオメェも乗れ!

ひゃばばばばばばばは」



「こんな普通科嫌だ…でも私も普通科だったの忘れてた」




無線越しに突撃と聞こえているが私の耳に入らなかった。

だけどなにを勘違いしたのか…練馬(ここ)に集結している全部隊が車両をぶいぶいと吹かせながら敵のもとに突っ込んでいく。

これが…これが普通科なの?



「瑠香…大丈夫か?」


「田中大尉……あなたもですか…」


「俺も参戦するぜ…丸太は持ったか!

我が工兵の子孫たち…施設科のものたちよ!」




私の後ろから声が聞こえて振り返ると防弾ベストに迷彩の鉄ヘルをかぶった施設科の人たちが、地響きを起こしながら雄叫びを上げています。

しまいにはニュージーランドの伝統の舞、ハカを踊り出す始末。

やっぱりこんな自衛隊は嫌だ!

ってみんな動いていない?



「瑠香…お前さん目は良い方かい?

もし見えるなら…あの空に浮いている黒い点はなにか?」


「あれは、羽なのか…まずいまずい!」




みんなどこかに体を隠せー!

空からの攻撃が来るぞ…避けろー!!

羽が降り注ぐぞ、敵の攻撃が来るぞー!




必死に私は叫んでいた。

とっさに車両の下に潜ったのは覚えている。

潜りながら聞こえているかわからないけど、名一杯叫んでいたはずだ。

建物…車の下…足跡で作った屋根付きの塹壕の中。

ありとあらゆる場所にみんな隠れていたのだけは覚えている。



ガン、ガン!

なんて音じゃない。

石が落ちてきている?

違うな、岩が落ちてるんだ…そうだこれは岩だ。

そうだよそれは岩だよ

そうだこれはそうに違いないよね?



「おのれ光の教団共めぇぇ!!

砲を打ったとでも言うのか!

許さぬぅ、許さぬぞぉぉぉ!!」



田中3佐の憎悪を含んだ雄叫びが聞こえて私は外を覗き込んだ。

地面にはおびただしい数の羽のようなものが落ちている。

違う…これは羽の先が地面に突き刺さってる。

って事はもしかして…。

いやだ…嫌だよ。



『2中隊人員、武器等異常なし!』


『3中隊人員、武器等異常なし!』


『1車両人員、武器等異常なし!』



無線越しに聞こえて来る声が私の耳には入ってこない。

こんな事があって良いのかよ…。

私は何のためにここにいるんだ。

これは、一体なんだって言うのさ。

これはまるで戦争じゃないか…。

どうしたらいいの…誰か教えてよ。

ちょっとでも絶望感じて欲しかったので

主人公に絶望感じてもらいました。


結構甘いけどゆるしてくだせぇ

後編はもっと絶望感じます

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