3-2 状況開始
おひさおひさ
もう直ぐ正月だよ!
速スギィ
山というより少し整備されたハイキングコースのような場所を重装備で歩く事数分。
私のところの隊列順
先頭、田中3佐と無線気持ちの沖田専任助教
2番目、お母様こと向井一尉
3番目、バズーカ持って喜ぶ小野陸士長
4番目、何故か私
5番目、みんな大好き村上3曹
6番目、衛生科の王子様飯島3曹
7番目、実は銃火器のスペシャリスト佐藤陸士長
見事なサンドイッチ隊列な私のところ
歩くスピードは男に追いつかないよう少しゆっくり目だとか…
真冬のハイキングはなんか味気ないなー
「汗かいてきた」
その汗が災いしたっぽい
山の中に入って数分たっただけで私の体は冷え…
ってめちゃくちゃ寒!
おっかしいなー
防寒対策したよ?
歩いたら汗かくのはわかってる
けど寒すぎて、震え止まらなすぎワロタ
どっかで準備間違えた?
訓練が始まる前日にも点検とかで合格もらったのになぜ?
「今すごく寒いって思ってんだろ?」
「レン…ジャァ……… ! 」
「おれももももももも」
…あの…小野陸士長?
ガクブルの度合いが我と違う!
地震起きてる!
小野陸士長の体が高速で揺れて、影分身してるみたいに残像が見え…
ってみんな震えてる!
高速振動しすぎだってばよ
沖田専任助教が背負ってる無線機のアンテナの振れ幅すごすぎワロタ
そういや男連中どこ行った?
「ちなみに男性隊員たちはあそこにいるよ」
先頭を歩く沖田専任助教のさらに向こう。
無線機のアンテナ越しからそうだろうなーっていうのがいた。
長い隊列を組んで歩く迷彩の塊がモゾモゾと動いて見えるのはいいけど、これ集団恐怖症の人にはきついんじゃね?
一時間というタイムラグがあるのに意外と近くにいた。
これってつまり…
「3佐、歩くスピードが速すぎです
大竹中隊長が、男どもが遅くてすいませんと伝令きました」
「……レンジャ(こっちこそごめんなさい)……」
レンジャってなんかしょぼんしながら言った
いま田中3佐、ごめんなさいって言ったんだよね?
そういう認識でいいよね?
いいよね!?
男連中の方から罵詈雑言が聞こえてきてく…
お前ら遅いんじゃボケが!
後ろが追いついてんぞ、お前らの足らそんな程度しか開かないのか!
山に入ってちょっとしか経ってないのにダウンしてんじゃねぇぞ!
後ろのwacの方がお前らより断然レンジャーに向いてんぞ!
悔しくねぇのか!?
男も、私のところの負けず劣らずボロクソ言われてるな。
あのこっち向けて殺気を立てるのやめてもらえます?
喀血するよ?
我喀血するよ?
男軍団の皆さん我喀血…
我死刑?
ねぇ死刑執行?
「放っておけよ。お前はお前なりに訓練してんだろ?
だったらあいつらのペースに巻き込まれずに集中しろ」
「レンジャ」
前を歩く小野陸士長の声で我に帰れた。
前のことばかり気にして殺気に負けそうになった時に現実に帰ってこれた。
あぶねー
ガザガサガサ!
-
「ん? なんの音?」
山道近くの藪から生き物が通る音が聞こえ…
いや、こんなに大きな音が鳴るものなのか?
動物が歩くにしては少し早いような…
まさか…山狩りの対象!?
「微かに殺気を感じるな…
男連中ではないとすると、気をつけにゃあいかん」
3佐なんでそんなのを感じられるの?
微かに殺気を感じるって
山に入ってそんなに経ってないのに状況発生するものなのか!?
「神前…ワシの経験上の話だ
こういった山道の端にある草木の生える所、錯雑地というのだが
ゲリコマ共はここから襲ってくる
そうやってワシの仲間は敵に殺されたのだよ…」
「え!
仲間が死んだってどういうことですか!」
「田中3佐この話は神前には早いです!
流石に控えた方がいいかと…」
「沖田は優しいな
だがいずれは知ってもらわねばいかぬ
神前、この訓練が終わったら儂の過去を教えてあげようか」
死んだって何?
確かに自衛隊は訓練中に死亡する可能性があるのは知っている。
だけど本格的な戦闘はやったことないはずじゃ?
そういえば田中3佐ってなんでこんなに古風な言い方をするんだ?
まさかさっき話したことと何か関係…ないよね?
一体田中3佐は何を観てきたんだ?
「神前2士、前は藪の中に入っていったよ
気を引き締めないと死ぬよ?」
「上等ですよ村上3曹…
敵にはかち合いたくないですけど」
男たちが歩いた藪の中に先頭が突入した。
一歩ハイキングコースから外れると直ぐに感覚が分からなくなるくらいに草木に覆われていた。
本当にここは東京の一部なの?
そう言いたくなるくらいに辺りを見渡せば気と茂み
藪なんて可愛いものだ
コースから感じていた殺気なんかを隠している
つもりだろうけど私からは感じ取ってるからな
「瑠香…その目
あなたは一体何者なの?」
「村上3曹何か言いました?」
「なんでもないよ…
ほら小野陸士長から離れているよ!
ボーッとしない!」
あの子の目ほんの一瞬だけ見えた
虹彩が綺麗な蒼色に何かの模様があったような
この子は…いったい何者なの?
まさかこれのせいで化物に追われてるの?
愚問ねこんなことを考えるなんて…
いまは訓練に集中しないといけないのに。
田中3佐はこのことに気がついてるのかしら
ガサガサガサ
山から変な視線を感じる
この訓練に関係ないはずなのに、変に神経を使わないといけないくらい嫌な感じがする
3佐の腰ものの中に私たちと違うもっとおっかないものも関係が?
まさか…ね
今回は短めです
瑠香にとってまだまだ前哨戦
生優しい状況です
次回は山が牙を剥きます