3-1 応用訓練開始
ずっと頭の中で同じ音楽が流れる病
今回から新しい訓練のスタートです
どなどなどなーどーなー
やろうをのーせーてー
どなどなどなー…なんだっけ?
こんなこと考えてるけど本当はそんなことを考える余裕なんてない。
トラックに乗ってかれこれ一時間は同じことを考えているんじゃないかな。
今日から私は応用行動として山に行く。
これなら始まる訓練は今まで受けてきた訓練とは違う。
応用訓練が始まったっていう実感が湧かないんだよなー
多少は沸いてるけどなんかこうね。
「神前、今回の状況は分かっているだろうな?」
私の隣に座る小野陸士長が不機嫌そうに聞いてきた。
不機嫌というより苛ついているという方が合ってるかな。
「レンジャ」
「本当か?」
「レンジャ」
今回の訓練の状況はこうだ。
私と同じようにレンジャー教育を受けている男性隊員達が先遣隊として応用行動訓練を行う。
先遣隊からあがる索敵や攻撃などの情報を基に、残った敵部隊の殲滅及び建設物の破壊を私たちが行う。
いわゆる残党狩りみたいなものだ
私が訓練している裏で男性隊員達も訓練してたなんで知らなかった。
『男とwacは別々で訓練するからそれに準拠してるんじゃないかなー?』
と村上3曹が言うには、男に絡まれたら大変だっていうことなんだろうけど
今回と総合訓練は別々にとは言えない。
大人の事情というやつダァ…
「そろそろ着くぞ…辞めるなら今のうちだぜ」
小野陸士長が言うように天幕の隙間から演習場が見えてきた。
逃げたいなんて言う概念は消えてない。
ギィィと車体を揺らしてトラックが止まる。
荷物や武器を持って降りると野原の向こうに山が広がっていた。
聞くところによると奥多摩の方らしい。
察しはついたここは演習場じゃない
「演習場なんて嘘っぱちか…。あんなところに教会がある…」
私のいる方の反対側
大きな川を挟んだ対岸に小さな教会が見える。
小さくてレトロチックなように見えた。
「神前こっちに来い! ミーティングをするぞ」
「レンジャー!」
そう言われて沖田専任助教のいるトラックに乗り込んだ。
私が乗っていたトラックとは違って少し大きい。
呼ばれた用件を聞こうと近づくと荷台に乗っている沖田専任や田中3佐が手招きをしていた。
「神前、今回の訓練は今までの訓練とは違ってさらなる危険が待ち構えている。」
「レンジャ」
「だが今まで受けてきた訓練の成果を出す時でもあるのだ」
「レンジャ」
「そこで儂から一つお前に課題を出そう
お前は前にこの世界は小さいと大島1曹に話したそうだな」
ギクッ!
ばばばばばばばばれれれれれてタァァァァァァァ
大島1曹に言われた事がばれたばいー!
「図星か神前? わかりやすい奴やわ」
「沖田、そう言うな
訳を聞かせてはくれんか?」
いつのまにかポツンと話していた自分がいる。
消して世界が小さいと言うわけではなくて…
ただ自分がちっぽけで虚しいというか、存在意義を見いだせない。
自分の欠点をわかっているのに、ぶち当たった瞬間イライラしてしまう。
そんな自分自身が嫌いで仕方がなかった…
ただそれだけ。
「そうか…なら神前。儂から一つ課題を出そう」
「課題ですか、3佐? そんな余裕こいつには有りませんよ?」
「かまわん、訓練を達成した時に答えが出れば良い
出なくてもそれはそれで良いのだ…
この訓練で弱い神前と向き合うこと…
そして見つめるのだ…良いな?」
「優しいですね、3佐は…。
俺からは、一緒に任務達成するぞ…いいな?」
二人の笑みがどこか暖かくてたまらない。
いつもきついことを言われているからか
それは子供の私にはわからないけど…
やるからにはとことんやりたい
3佐の言う弱い自分に会いに行かないとな
『はいもしも…なんだ白石?
お前裁判中じゃないのか
あー? 朝だからいいって問題ではないのだぞ?
用向けはなんだ?
貴様、デレデレとやらをするな
気持ち悪い…』
話の骨を折ったのは久しぶりの登場、白石富治検事。
好きな人にデレデレしながら女子高生並みに興奮している声のトーン的にだろうなーと電話から漏れる声で直感的に思う。
富にぃの可愛い奥さん兼検察官兼後見人補佐の結衣さんがかわいそうだ…
と思っていたら電話口の声が可愛らしい女性の声に変わった。
『お久しぶりですね、結衣殿。
…それは本当の事でありまするか?』
今まで明るい声色の3佐がうな垂れ始めた。
よくない事が起きたな。
3佐が頭を抱え始めあっという間に死にかけの3佐が出来上がった。
「ありがとう結衣殿。わざわざすまないね…。
では失礼するよ…。
最悪だ、野郎軍団の方に行ってくる。」
そう言って田中3佐は男軍団のトップの人のところに行った。
時より聞こえてくる3佐の声と向こうの教官の声。
話の内容は聞き取れなかったがお互いの顔が引きつっているのだけはわかった。
だけど気になっていたのは、なんとも言えない視線の数々。
好奇心や興味、軽蔑に…いろいろ混ざって気持ち悪い。
それに山の方向からも、何かに見られている感覚がある。
狙われているが手を出せないと言うべきかな…
「訓練生集合!これより状況の説明を行う!」
男性隊員んんに紛れ込んで並んで説明を聞く
あーもう、男性隊員たちなんて言いにくい!
男で統一しよう!
男のところの教官が言うには事前に聞いた通り。
でも田中3佐や男のところの教官は顔が引きつっている?
「先ほど田中3佐からある情報が入った
説明していただいてもよろしいですか?」
「もちろんです…
先ほど俺の情報網から連絡があった
いかんせん急すぎてな…
つい一時間ほど前にこの周辺をハイキングに来ていた御老人夫婦が『片腕のない化け物を見た』と警察に通報した…
その化け物こそ、先に現れたあの翼の生えた化け物と同一で右腕と首がないと言う次第だ」
しんと静まり返った男どもとピリッとした空気を持ったうちの教官たち。
まずい空気が流れ始め、私も嫌な記憶が脳裏をよぎり身体中から脂汗が噴き出ている。
こんな事は…と男どもの専任助教や班長と言われる怖いお兄さんたちが狼狽えた。
「本訓練は一部内容を変更して行う
応用行動に続き最終行動を行いつつ先にあった化け物を征伐する
貴様ら、死にたくなければ歯を食いしばれ!
逃げようと考えるな!
貴様ら逃げれば家族の平和が消えると思え!
これは…戦闘行為だ」
レンジャ!!!!!
田中3佐の声に私たちはただレンジャと言うしか方法はなかった。
山道と思わしき山の入り口が大きな生き物のようにぽっかりと口を開けて今にも飲み込もうとして見える。
ゾクっという表現で表していいのかよくわからない。
そう言わして欲しい。
男連中が散り荷物を持って入山準備を始めた。
すかさず私も荷物を持って…
沖田専任助教!
睨まないでー!
「神前、来い 渡したいものがある」
「レンジャ? 」
「なーに怖いもんじゃないよ。怖いけど」
「これって…実銃に実弾だが?」
「今まで持っていたのは?」
「あれは、モデルガンだよ。
いきなりホンモノ持たせて壊されたらたまったもんじゃないやろ?」
「確かにそうですが」
「こいつを渡すという事は…お前は認められたという事」
「沖田専任助教?」
「お前はもう俺たちと同じ自衛官だからな!」
「沖田専任助教!!」
「この訓練を得てお前がどんな人間になるか見せてもらうからな!
覚悟していろよ!」
「レンジャ!」
これから長く山入りする。
弱い私と向き合う先に何があるんだろう
その答えを探そう
荷物をまとめたリュックを背負い実銃を持って山に入った。
死が隣り合わせの地に足を踏み入れた
訓練開始数分前、とあるトラックの中
「しかし田中3佐本当に面倒なことに…」
「確かに…どうも虫が良すぎる」
「今回の事案…山狩りの件ですが
どうしてここで訓練を行うのがばれたのでしょう?」
「内通者が動いているのか
なんであれ、仲間を疑いたくはないがそれ相応の対処が要るな」
「田中3佐…まさかあれを持ってきてるのですか?」
「今回ばかりは、こいつを持ってきた
使う事はないが…ある程度の長さが欲しくてね」
「昔の名残ですか…あまり無理はしないでください
武甕雷兵さん」
「いやいや…そう言われていいのは昔までです
どのような結果であれ、この訓練…共に行きますよ」
普通科連隊第3中隊 大竹中隊長
ここからは今まで駐屯地の中での訓練でしたが本格的に山に入ります
ここからは広報動画とかそんなところを参考にして書きますので純度100%妄想で執筆始めます
こんなこんなですが事件発生ですよ
山狩りします