2-9 静かな早朝、出発の予鈴
もう十二月ですよ!
一年経つのはあっという間です
掃除とかなんやらしないとなー
あの事件の後、ずっと私は寝ていた。
いや、気を失っていたという方が正解かもね。
目を覚ましたら医務室で寝ていた。
隣に沖田専任助教が椅子に座りながら寝ているのを見た。
目の周りが真っ赤に腫れるくらい泣いていた
落ち着いた時に衛生の飯島3曹に容態を聞かれて何もないと答えた。
そんな飯島3曹いわく
『強烈すぎるストレスに耐えられなくなったんだろうね」
意識が朦朧としている時によく答えたな
なんて今になって思う。
確かに私は見たくない光景を見た
一特科の隊員が一人の隊員に戦ったけどダメだった。
それだけにあの犯人は…
そう…大島一等陸曹は強かった。
「…殺されるんじゃね」
早朝の薄暗い医務室の天井を見上げて溢れそうな何かをグッと堪えた。
もう泣くのはやめた。
泣けば逃げられると思っていた。
弱い自分に勝つって目標を立てていたのに泣いたら弱い自分に負ける。
だからもう泣かない!
「なんだか気分が冴えないなー」
布団を這い出て毛布を沖田専任助教の方にそっとかけた。
迷惑をかけてしまったし、なんて謝ればいいかなー。
これって致し方ないことなのか?
「目が覚めたか?」
「沖田専任助教、あの…すいませんでした」
「あれは俺も計算外だった。神前が悪いんじゃない」
「……」
「大丈夫、だけどまぁ。あいつに魅入られた」
「はい…」
「よし、今後のことも兼ねて特訓するか」
「レンジャ」
「今はまだ休んでいいから。俺は隣のベッドで寝るわ。
毛布ありがとう」
(後で衛生さんに怒られないかな?)
スヤァ
いや、ほんとに隣の空きベッドで寝た!
すごいよ、物の数秒で寝たよ!
レンジャー隊員は寝るのも惜しむとは説明はされたけど…
違うこれあれだ。
これが真のレンジャーなんだ!(違います)
なんて思いながら私は意識を手放した。
二度寝は最高。
と思ったのが大間違い…
6時のけたたましい起床ラッパの音で有無を言わさぬスピードで衛生科の建物の外に出た。
建物の前には我らが向井一尉が外でステンバーイ。
なんかゆわれるパターンかな。
「おはようございます 向井一尉」
「おはよう
それだけダッシュできるなら大丈夫そうね
よかったと言えないけど…」
「と言うと?」
「まぁ、その話はおじいちゃ…訂正
田中3佐にでも聞いて頂戴」
「レンジャ」
「でも一安心ね 無事でよかったわ」
あーいい匂いがする。
フレグランス系と言ったらいいかわからないけど柔軟剤の匂いで心がぴょんぴょんするんじゃぁ。
ぎゅっと抱きしめられ頭をぽんぽんと撫でられた。
お母さんに抱きしめられるとこんな感じなのかな。
もっと抱きしめてー!
向井一尉が、スコスコスコティッシュフォールド。
「あらまぁ、沖田君がこっちを見て羨ま死刑の目をしてる。
お母さ…訂正。 私は行くわね」
「あぅりがとうございますだ!
デュフデュフ」
私の気持ち悪い発言を無視して向井一尉は庁舎の中に姿を消した。
後ろで沖田専任助教が殺すぞとかめっちゃ言ってる。
後で死刑ですね!
あのーどこからムチを持ってきて…
グハァ!
午前8時 訓練始め
練馬駐屯地、グラウンド内
「神前2士。今までこの訓練によく耐えた。
耐えたが、まだお前はレンジャーの真髄に到達していない」
「レンジャ」
この日の3佐によるありがたいお言葉はいつものありがたいお言葉ではなくてとても重たい言葉だ
だけどその手に持ってる紙は何ですか?
「よく聞け我が部隊の陸曹士よ!
こいつは食堂で調理の方にコーヒー牛乳のパックを5本もらって一気飲みをし!
夕飯に出された味噌ラーメンを二郎風にしてもらった!
挙句夜中にロープワークを隠れて自主トレするわ
筋トレするわ
おまけに向井一尉の胸元に飛び込んでセクハラ発言をするわうらやまけしからん!
俺はこいつのやっていることが好きだが気に食わぬ!」
ちっさい声でクスクス笑っている小野・佐藤陸士長コンビ。
ばれたねーって小声で話す村上3曹
二郎風と聞いた途端にメンチ切ってきた飯島3曹
飯島3曹は衛生科隊員としての目線だろうね
沖田専任助教はいじめるネタが増えたよと言いたいくらいに悪い笑顔だし。
向井一尉…こっちに向いてコーヒー牛乳飲んでる写真をチラチラ見せてくるって
この人たちやだー!
この中隊ってこんなにヤヴァイ人の集まりなんて聞いてないですよ!
「ここで吊し上げにしたが、神前2士に罰を与える」
応用行動訓練実施
本日より山地内を主とした訓練の実施
並びに格闘訓練を拡充する
「次の工程にステップアップだ…喜べ!」
次の工程
ようやくきたぞ
今まで頑張ってきた分、もっと頑張るんだ
やってやる!
私はレンジャーになるんだ
そして空を飛ぶんだ!
あのーすいませんが、眩しいくらいの3佐の弾けるような笑顔。
沖田専任助教達のどす黒い笑み
神前瑠香にとっては怖いですね
もうすぐ真冬だからですかね
だからこんな笑顔なんだね?
違うか?
十数時間前 駐屯地内庁舎
「みな…今回の事件の事は知っていよう。」
「私がついていながらすいません」
「いや今回は沖田のせいではない、俺のせいでもある
今回の相手は強すぎた」
「1特科や普通科3中隊がボコボコにやられるとは思いませんでした。」
「小野の古巣だったか…3中隊は?」
「そうです…。格闘では1、2を争う強者揃いですが」
「しかしそれに打ち勝つほど、あれは強いのだ。
そしてあの子にも関係があってな…
皆の口が硬いと信頼してこいつを見せる。」
「田中3佐、これは流出したら危険です!
紙に赤く一致って書かれて確信しました
ずっとどこか似ていると思っていましたけど!」
なのにあんなにひどい事を!」
「千春、落ち着けって!」
「だけど健太、バレたらみんなから疎まれるかもしれないんだよ!」
「だからこそ…隠すのだ。時が来るまでは…
真実を伝える日が来るまでは。
それまで、あいつに気を付けろ
大島一等陸曹に
いや第一師団長陸将」
財前誠に
今回は次の話に進む前の前座です
瑠香は泣かない子になったと言いますが有言実行できるか見ていてください
次の訓練からはこれがレンジャーなのかというような内容を書いていきます
動画などを参考にするので間違いとかありますがよろしくお願いします




