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16-3 虚しさの答え

ジメジメの梅雨がきました!

梅のシロップ付けを作りたいです




「久しぶりですねヴァカ瑠香

いきなり呼び出して悪いな」





居た堪れない気持ちで学校で授業を受けていた私。

授業が終わってさぁ今から、クリスピークリームドーナツ教の会報を始めようかとしていた時だった。

えみりちゃんや紗香氏…葵たんに萌きゅんと空き教室で駄弁っていたら副担の麦田先生が富にぃを連れてきてくれた。



「かっこいい人…だけどなんか不機嫌そう?

えみり、ちょっと怖いかも?」


「紗香達、どっか行って時間潰しておくよ?」



「白石富治さん…あっ、だいぶ前に学校で翼者だっけ?

あいつらをやっつけてくれた人?」


「萌ちゃんよく覚えてたね…葵はわからなかった!」





なんて言い合っていたんです。

でもそういう雰囲気ではないのは、私も察していました。

珍しく学校に顔を出すのは、富にぃにとって嫌な事が起きたからなんだと思います。

その不機嫌ななにかをぶつけてこないあたり立派だべ。



「いいえ、皆さんに聞いてもらいたい

貴方達のご家庭にも関わる事ですからね

ヴァカ瑠香を含め、貴方達みんな狂わされたのでしょう?

光の楽園…イカれた新興宗教に

僕もその1人ですから」




今なんだって?

みんな光の楽園に何かしらの関わりがあったの?

聞いてないよそんな事!

適当な事じゃないのはわかるけども、いきなり突拍子もない事を言うなよ!

いや待てよ。

光の楽園の母体はもともと桐谷総合病院だった。

でも、みんなに関係ない事だろ?







「まずみんな席に着いて…いいね

僕の調査結果で出した答えです

1人目の牧野えみりさん、貴方の父親は離縁されていましたよね

理由は貴方の母親が光の楽園の熱狂的に信仰し多額の布施もしていたから」





「なんで…そんなことが」





「2人目の相沢紗香さん

貴方はご自宅付近に熱狂的な信者がいて、その家の住人に毎度と嫌がらせを受けている

最初はご近所付き合いで話半分で聴きながらスルーしていたのでしょうが、ひどくなったのでしょう

嫌がらせの理由は、入信を断ったから」




「…そうです」





「3人目の桐生葵さん

貴方も、相沢さんと同じ…しかし相沢さんよりもタチが悪い

貴方のご実家である、神社の土地や利権といった全てを奪われそうになったから

自由業の地上げよりも酷い事をしていたのは聞いています」





「お父さんと、お母さんがずっと闘っていました

それを、どうして?」





「気が重くなりますねぇ

4人目の佐伯萌さんは、持病の喘息を抑えるために定期的に桐谷総合病院へ訪れていた

今は、喘息なんて出ていないはずです

それもそのはず、貴方は健康体なのですから

喘息のような副作用が現れる薬を処方されていたのですね」



「それはそうだけど…」





私たちに話し終えるとふぅと嫌な顔をすこぶる浮かべて富にぃは話始めた。

過去に富にぃが言っていた事がふと頭によぎり始める。

優秀な検察官というか、密偵達が光の楽園のせいでおかしくなってしまったと。



「すべての事象を調べて行った結果です

誰がどうやって狂わされたのかは…言いたくありません

率直に言いましょう

桐谷勝は昨日、治療先の医療刑務所で死にました

翼者に負わされた傷から感染症が広がって…幾分かは持ち堪えて退院というところでしたが

勝ち逃げみたいなものですよ、僕からしたらね」







どこか落胆したように富にぃは肩を落としていた。

また一つ真実がわからなくなってしまったんだと勝手に思う。

それにみんなの顔が浮かない顔をしている。

ようやく終わったんだって言い切れない。






「僕は色々な事件に検察官として関与してきました

皆さんの耳には入れたくないものも

この事件はどの例を取っても異質です

暴こうにも一つ潰してもまた闇が現れます

その核である桐谷が死んだ以上、僕には太刀打ちできません」





富にぃの顔がさらに曇っていく。

何を言いたいのか私ははっきりわかっている。

そして直感がこうも言っているとずっとザワザワする。

みんなにもそれが伝わっているから、もう私は何も言わなくなってしまった。

一番の不服だって言いたいよ。




「この事件は被疑者死亡で書類送検されます

そして、事件の真相は迷宮入りしました

どうやって翼者という化け物を作ったのか

その化け物を使ってさらに、大きな事を起こそうとしたのか…など

でも一つ言いたい事があります

もうみなさんは、恐怖に支配されないと言う事です」




ありがとうございましたと自然と言葉がポロリと漏れた。

私の口から発した何かだったけど、それしか今は言葉が出てこない。

復讐心はとっくに消えているし、話を聞いていたえみりちゃん達も終わったんだって言いたげな顔をしている。

これでよかったんだ。





「さて僕は帰ります

明後日に裁判が控えているのでね

この事件は、まだ終わりません

僕が全力で残りを潰すので、安心してください

よく耐え忍んだね瑠香

ではこれで」



そう言って彼は教室から出て行ってしまった。

何かの調査の間にきたんだろうな。

もう少しだけ話がしたかったけど無理そうなら仕方ないね。

それとこの事件は終わらない。

全てが明るみになるのにものすごく時間がかかる。

でも富にぃなら、いつか全てを明るみに出してくれる。

それまで待ってるから!

被害者は自分の周りにもいる。

それが遠いか近いかの話です。

瑠香の周りでは大勢の被害者がいました。

それが学友だったのです。

彼女らも瑠香の境遇を知ってどこか自分のように思っていたのだと思います。



友人達の被害の規模は大なり小なりあります

それは白石も同じ。


真相はどこまでわかるかわかりませんが彼の言うような勝ち逃げで決着です

次回もお願いします

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