16-1 来訪者?
今年は色々と規制が緩和されて、各駐屯地の記念式典がいい感じに行われていたのです。
行きたかった…。
確か…みんなで見るご飯を食べていた時だと思います。
練馬駐屯地の本日のメニューは焼肉定食。
ご飯に味噌汁、メインの焼肉に付き合わせのレタス。
小鉢にはマカロニサラダが入っていました。
即応のみんなでうめぇうめぇ言いながら食べていた記憶があります。
食堂の数カ所に大型テレビがついていて、昼のバラエティで猫特集が流れていました。
猫もいいけど、ウチのピヨ助二曹ことチャボの方の方が可愛いと思いつつある陸士長の財前瑠香です。
「猫特集が終わったんじゃが?
あれは瑠香の同級生じゃなかったか?」
テレビに映し出されていたのは今をときめくアイドル6人組。
みんな身長175センチ越えでお顔立ちが整い、少し明るい茶髪や白色に近い金髪の男の子たちがいる。
その集団の真ん中で黒髪に短く切られた髪にスーツを身につけた見知った顔がいる。
間違いない、この人は速水涼太君。
私のクラスメイトで、よく女の子たちから王子って言われる同級生。
確かに顔が可愛らしいからそうなるわな。
『本日を持ちまして、速水涼太は一度芸能活動を終え高校卒業と同時に新しい道に進もうと思います
また芸能界に戻ってくることがありましたら応援してください』
なんて言っている。
なんの事やって沖田二曹がごつごつのあはーん。
じゃなくて熱々ご飯を口に運んでいたら、リポーターのお姉さんが高校卒業後について聞いていました。
そしたらこう言いました。
「僕の中のヒーローのような人が、同じ学校の中にいます
ずっとみんなのことを助けてくれる存在です
その人は普段は高校生として生活していますが、それ以外は別の場所で頑張っています
僕はその人と同じようになりたいんです」
「と言うと?」
「僕も陸上自衛隊…第一空挺団を目指して、たとえ空挺団に行けなくてもレンジャーを目指してテレビの収録以外やライブ終了後もトレーニングしていました」
まじかよ…聞いてないぞ?!
我聞いてないぞ、我は何も知らぬぞよ?
速水くん学校では何もそんなそぶりは全くなかったのに。
いや、ライブや仕事以外で時間のある時に特訓してたのか…。
あれ、そう言えば速水君に対してお父さんが変にビットを立てていたような?
「この前に出した『君に晴れ!』はファンの皆さんに送る応援ソングであったのと同時に、その人に送る応援ソングでもありました」
そんな事を聞いていた瞬間でした。
窓の外が暖かい春の陽気を浮かばせていたはずなのに、目の前に見えるのは春なぞ知らんと季節を戻しブリザードが吹き荒れる冬。
遠くから熊のような獣の鳴き声と、殺意に満ちた我らが大将…師団長が食堂に入ってきています。
「瑠香…そこにいたんだべ?
速水涼太君が執務室にいるから、遊びにおいでよ
意味わかるよね?」
他の中隊の人も即応の人もなんなら食堂にいる委託業者の方も私をみています。
師団長の命令は絶対です。
逆らえばそもそもこの世界にいたのかどうかすらわからなくなるまでに消し飛ばされます。
そもそも速水君が練馬駐屯地に勝ち込んでくるだなんて想像もつきません。
「助けて誰か…助けて!」
瑠香に何やら近づく影。
学友の速水涼太が練馬駐屯地に来訪します。
次回はなぜ来てくれたのか、なんの目的なのか語られます。
又次回もお願いします